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『揚羽蝶』
四/一

部屋から出ると、その場に座り込んで顔を押さえた。

顔が熱い。

心臓が激しく波打っているが、どうやら発作は起きなそうだ。


自分が夢中でスケッチをしているところを見られてしまった。

無断で彼女を描いていた事が、後ろめたくて恥ずかしかった。


…よく、あんなにスラスラと言えたものだな。

意外に平静に話せた自分に驚いた。


「…っ」

そのまま暫く蹲っていると、中から嗚咽が聞こえてきた。


…泣いてる?


とにかく、ここに居てはいけない気がして、その場を離れた。


そろそろ昼だ。
家政婦が昼食を運んでくる時間。


母屋へと向かおうと、離れを出ると、丁度家政婦が昼食を運んでくるところだった。

「!…珍しいですね。」

「…まぁ。」

適当に返事をして食事を受け取ると背を向けた。

「今度から、持って来なくていいよ。
自分で取りに行くから。」


いつもなら、母屋には近付こうとしない僕の言葉に驚いていたが、

「かしこまりました。」

と言うと、家政婦は戻って行った。

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