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短篇集
『俺達の距離』



「やめろ!…やめてくれ!」


俺は必死に耳を塞ぎ目を瞑ったが、どうやら夢じゃないらしい。


夢であっても悲しすぎるこの状況に、これから発せられるであろうソレが、せめて少しでも自分の耳に届かない事を祈った。


「お前が…お前が全部わるいんだ!」


そう言ったお前は、既に泣き出しそうで…。

あの時、自分が守れなかった約束が今のこの状況を引き起こしているのだと、嫌でも思い知らされる。


「ごめん…。本当に悪かったと思ってるよ。」


だけど、そんな俺の声はもう決断してしまったお前の気持ちを変える事はない。



「今日、俺達の友情は終わる」


光を失った目で力なく笑うと、そのまま俺に背を向けて目の前にある壁に爪を立てた…


ギ、ギィイイー…!


「うわぁあ!」


深緑色のそれ…黒板に爪を立てて、笑いながら不快な音をたて続ける友に悲痛の声を向けて、新品のチョークを折ってしまった事を呪った。


「ごめっ…悪気はなかったんだ…っ」

「俺が!俺が使うつもりだったのに!」


…駄目だ!聞こえてない!


何か、何かこの状況を打破するものはないのか?


そして俺は気付いた。


たった一つだけ、奴の機嫌をなおす方法がある事を!


急いで制服のボタンを外して上着を脱ぐと、すかさず腕まくりをして叫んだ。


「これを見ろ!」

「!!」


自信満々に掲げられたそれは、大きなかさぶたに覆われた肘で…

「かさぶた!剥いていいからぁ!」


その一言に

「しょ、しょうがないなぁ…」
まんざらでもない顔で駆け寄ってくるコイツとは、友達の縁を切ろうと心から思った…。


end。

2008/12/22 *緒神

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