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あやかし草紙 桜咲く時
5


「もうし、もうし・・・。」

何処からともなく声が聞こえた。鈴を転がすような玲瓏な声。

こんな夜更けに妙齢の女の声とは、ただ事では無い。大変な困り事だろうと男は引き戸を開ける。
月の光が明るい外は影が地面に落ちる程明るいのに女の姿は何処にも見えない。

それにしてもなんと妙なる声だろう。きっと天女のような美しい女に違いない。男はそう思い女を探す。

「どうなされた?誰かおるのか?」

声を掛け辺りを見渡す。

「ここにおりまする。」

間近で声がし、男は飛びのいた。
見ると天女の様に美しい女人が立っていた。

「お前さん・・・何時の間に居たんだい?」

驚きながらも男は天女の如く美しいその姿に見とれていた。女はにこりと笑い男の手を取る。

「お前様を助けに参りました。」

「・・・助けとは何んじゃ?」

ほうけた様に女を見た。

「助ける為に参りました。」

フワリと笑う。
桜の花が綻ぶ様な美しさだった。

「何じゃ、やはり天女様か?これは夢じゃろか?」

「夢ではござりませぬ。お前様の助けとなりとうございます。その為に私は此処に、お前様の所に参りました。」

花のように微笑む女。美しい夢じゃと男は思った。

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あきゅろす。
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