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【クロス・オーバー・ポイント】
『メディカルセンター』11 R-18G 鬼畜A×Z流血・スプラッタ表現注意(汗)

「うう…うぁ………」

むせかえる様な血の臭いと、湿った吐息、血を啜られ、肉を剥ぎ取られる痛み
メンタルの弱い人間なら、そのままショック死してもおかしくは無い酷い有様だ
剥き出しになった臓器を、引き出され、弄ばれながら一方的に犯されていた
ぬちゃぬちゃと音を立てているのが、強引に開かれ貫かれている下肢なのか
切り裂かれ、中を掻き回されている腹部から聞こえているのか?すらもう解らない

このまま…狂った男の気が済むまで、地獄の様な苦痛に耐えるしかないのか、楽になれるまで
迫り上がる吐血と胃液が息苦しくてたまらず、口元を拭いたいだけなのに
少しでも腕に力を込めようとすれば、掌を刺し貫く剣が、まるで意識でもあるかのように、傷口を広げてジリジリと焼く
一切の抵抗すら許されない絶望的な状況にただ、涙を流し嗚咽する

ひと思いに殺せばいいのに…どうあっても僕を嬲りたいのか、屈服したいのか?暴力的で屈辱的な扱いはエスカレートする

最初にしゃぶれと促され、嫌だと拒めば、直ぐにコアにガリガリと爪が食い込んだ
激痛に緩んだ口に、強引に突っ込まれたソレは、喉を完全に塞いでしまう程にいきり勃起っていて
窒息しそうになりながら、えずき苦しむ僕を見て、喜んでいるのだろう、最悪最低だ

「ほら…ちゃんと舌を使えよ、でないと………」

何度目かの痛みに観念した僕が、ようやく自発的にチロチロとソレを舐め始めると
磔られたままで、ロクに動けない僕の代わりに、ソレをこねくり回してくる
溢れ出す唾液が卑猥な音をたて、涙がボタボタとしたたる

「んんっっ…ぐっ…んっ」

ほとんど首の上に跨られた形で、髪ごと後頭部を掴まれている為、角度も悪いのだろうけど、顎が外れそうな質量に呆れる
女好きで浮き名を流す彼が、間違っても抱く対象とは見ないであろう僕だからね、
傷つき足掻くこのザマを見るだけで、これだけ解りやすく興奮しているのも、どうなんだ…
君の加虐性癖も相当なものだと思うよ、血に酔ってるとしてもね

その上仰向けのまま、そのまま口の中に、盛大に出されてしまっても、吐き出す事すら許してもらえない
気道にまで入ってしまいそうなソレに、咳き込む僕の口の中で、ナニはすでに復活しかけている

「二回目は程々でいいぜ、下にも挿入れて欲しいだろ?」

口だけで済むなんて当然思ってないけど、何の下準備も無く、こんな凶悪な物を挿入れられたら堪らない
ボロボロにされていたカリティと同レベルの扱いを…いや多分もっと手酷い目に合わされると思えばこそ、本能的な震えが止まらなくなる

「何だ…震えてるのか?怖いのか?気の毒になぁ…だがお前も鬼だろ?
コレくらいの事なら、ついこの間までお前もしていたんだよなぁ?お前が作った薬は出来る前は?」

アンタの血も悪く無い、そう言って彼は笑っているが、こちらはそれどころではない

再び大きくなったソレを口から引き抜かれると、直ぐさまズボンに手が掛かる
下着ごと一気に下ろされ、露わになった僕のソレは恐怖で縮こまったままだが
ソコをヒタリと撫で上げながらも、興味はその奥の最弱の部分にしかないのだろう
無骨な指がいきなりソレを探り、前置きもないままに内側を嬲りはじめる

「……嫌だっ…やめ……」

乾ききったソレを、潤滑剤も無に突っ込まれれば当然だ、女性ではないのだから
相手もさすがにそのまま挿入するのは、不可能と考えたのだろうか
唐突にその大きな手が、喉元を圧迫すると、熱の手が僕の口にねじ込まれる
自分の吐き散らした物と、僕の唾液を強引にすくい取ってゆく

乱暴な行為に嘔吐く僕の都合など、どうでもいいのだろう、そのままソレを下に塗り込められ、ぬちゃぬちゃと押し広げてくるのだが
ほんの少し湿り気を追加されたぐらいで、問題が解決するとは思えない

嫌だ…そんな物を突っ込まれたら、傷付くくらいでは済まない

この期に及んで無駄な抵抗と解っていても、そのまま強引に身体を開かれるのは御免だ
ある程度痛みに慣れてきた分、コアを傷つけられても耐える事は出来た
身体をよじり脚を開こうとしない、僕に業を煮やしたのだろう

舌打ち一つで、再び頭を押さえつけられると、眼帯が弾き飛ばされて、中を乱暴に探られる…
掻き回される痛みよりも、髪ごと引き捕まれている角の断面が擦れて、焼け付く様に痛い、
堪らずに上がる呻き声も、ただ彼を喜ばせていただけだろう
眼孔の内側が爪で傷付き、流れる血は涙と混ざり合い、目尻から溢れ出してゆく

その末に摘まみ出されてしまったのは、血に塗れた球体、少女を封入した結界…
その中でガタガタと震えている彼女を、緑色の目がジッと見下ろす
ニヤリと笑った彼が、そのまま、ピンとその小さな球体を空中に放り投げると
赤髪の炎のフィラメントの中から、その一部が分離して何か飛び上がる
不定形のソレが取った形は、烏程の大きさの猛禽類だろうか?
金属質な羽音を響かせる鳥は、銀色の身体と翼を持ち、放り投げられた封印を、クチバシでパクリと空中でキャッチする
直ぐそばの瓦礫の山の上に降り立つ、封印をその鋭い蹴爪で掴みなおすと、甲高い声で啼き、コチラを見ている

「偵察用の使い魔だが、俺の良く言う事を聴く…
いい加減諦めろよ、どう足掻いてもヤられる事には変わりないだろう?
お前がこれ以上抵抗するなら、アレがあのガキを食い殺す…ソレでもいいのか?」

その言葉を待っていたかの様に、鳥は封印を強く握り絞めると、鋭いクチバシでソレを小突きはじめる
ミシミシと軋む結界の中で、怯え後ずさる少女の様子が、ココからでも良く見える
僕がこのまま縊り殺されたら、その後に彼女がどうなるか解らないけれど
先に彼女が貪り喰われるのを見るのは御免だ…

今だけだ…僕を嬲っている間は、彼女に手を出さないだろう、おそらく
コレは時間稼ぎなんだ、確実に彼を封印出来る閣下を、助けを呼びに行ったゾッドを待つ為の……

無理にそう自分に言い聞かせると、僕は身体の力を抜いて一切の抵抗を放棄する

その反応に満足したのか、赤髪が鳥に目配せをすれば
鳥はすぐに封印を小突くのをやめて、ソレを掴んだままその場に蹲った

「鬼のくせに、随分甘ちゃんなんだな、センセイは…まぁいいけどな…」

股関節に痛みを感じる程に強く脚を開かれ、間に滑り込んでくる男の体温を感じながらも、現実から顔を背ける僕の髪を、赤髪は再び鷲頭噛む
僕の顔を強引に自分の方に向けると、未だに出血の止まらない眼孔を舐め回し、ぺちゃぺちゃと血を啜り、中に舌を射し込んでくる
脳にもダイレクトに伝わる、その嫌な感触から逃れたくて、必死に頭を振るのだが、そソレすらも力尽くで押さえつけられる

そのまま血塗れの真っ赤な唇が移動してくると、今度は僕のソレに重ねられてくる、当然の権利と言わぬばかりに

最低だ…人質さえ取られていなければ、そのまま舌を食い千切ってやるのに…

ドス黒い衝動を何とか抑えながら、無遠慮に中を舐め回し嬲る舌を受け入れるのだが
ああ…口内に広がる自分の血の味は嫌なモノだね、むせ返る様な錆びた金属の味に、ただ嗚咽する

「悔しいかい…だろうな、最高にそそる顔してるぜ、見せてやれないのが惜しいくらいだな…」

赤髪はそう言って笑うと、僕の脚や尻を撫で回し、弱い部分を再び弄くり始める
抵抗する気はなくても、惨めにヒクヒクと反応し震える僕の反応を嘲り、楽しんでる事は解る

そして宛がわれる熱い塊…強引にねじ込まれるソレの圧迫感と痛みに、僕の身体はのけぞり全身で拒絶する
申し訳程度に弄くられていても、前戯とは呼べないソレで解れるワケもない、
弱い内側を串刺しにされた様な激痛に呻き、ボタボタと涙が溢れ出す

「ううっ…ああっあぅ………」

冷や汗が溢れ出すし、ガチガチと身体が震え、歯が上手く合わせられないのだが、そんなモノは当然無視される
摩擦でギシギシと軋むその場所に、大きすぎるソレが何度も穿たれスライドする
無理なソレに傷つき血が流れても、ソレにすら興奮しているのだろう、中のナニがまた一段と大きくなり、僕を益々苦しめて追い詰める

「痛いか?まぁ野郎だから濡れないのは仕方ないな、一発出したら、少しは良くしてやるよ…」

良くなりたかったら、お前も頑張れよ、少しは腰でも振ってよ…
そう言って脚を撫で回していた手が、内股にも爪を立ててくる、態々薄く炎を纏って…
もう悲鳴を上げてやる気力すらない、何処まで痛めつけたら気が済むのやら
君が僕に対して抱いていた、拗くれた欲望はよく解ったよ、その薄暗い嫉妬心も…だからもう…
だが…狂った相手にそんな正論や理屈は通らない

這い回る爪はそのまま肌に食い込み、唇の触れた場所も噛み千切られる
意図的に痛みに敏感な場所ばかりを、抉られ、痛めつけられているのが嫌でも解る
殆ど拷問に近い一方的なこの暴行に、一体何時まで耐えなければならないのか…いっそひと思いに殺してくれ…
だなんて…全く僕らしくない思考が、一瞬だけど頭を過ぎるくらいだったよ…この時ばかりは
勿論そんな事は、後にも先にもこの時だけだったけどね

※※※※※※※※※※※※※※

一方結界の外側では、何度もそれに斬りかかるゾッドの斧が火花を散らしていた
優しげで柔らかそうな見た目とは裏腹に、強固なソレには何故だか刃が立たないのだ
衝突するソレは、金属音を放つばかりだ…所々亀裂は入っていると言うのに

「まだ破壊出来そうに無いのかい?ゾッド?」
「全解放の出力でやってるんだが、有り得ないくらい堅いんだよコレがっっ
下手したら魔王宮の結界より手強いぞ、文化局の結界が、こんなに手強いなんて聴いてないぞ!!俺は!!!」

ゾッドはぶっきらぼうに応えるのだが、再び斧を構える、もう何回目のアタックだろう、体力も限界に近い…
膝が笑っているのだが、愚直な彼は、小細工を効かせる様な攻撃は出来ない

「中のゼノンには…外の様子が解らないのでしょうか?」

術者のゼノンが結界を解いてくれれば、直ぐにでも障壁は消えるのに…そう呟くデーモンに皇太子は応える

「お前の家の侍従達の話から推測するに、外側のコレは緊急用の特殊魔法具、魔力備蓄型の何某かで、結界を構築している様だからね
事前に魔力は吸わせていたとしても、今のゼノンとは遮断されている、完全な別個体のなんだよ、使い魔の様なモノと考えた方が妥当だね
だからゼノンが、今、コレを通して外の様子を知る事は難しいだろうね…
恐らくは…彼がエースとの戦闘に集中する為の措置だろうけど、かえって裏目に出てしまった様だね…」

オマケに完全な生物ではないからね、コレに自己判断能力は無いだろ?当然私のチャームも効かない
最初に与えられた、術者の指示に盲目的に従うばかりで…応用力は無い、だから外側から破壊するしか無いのだよ
困った様にソレを見上げる皇太子の横で、デーモンはその言葉を反芻する

別の生き物…術者の指示にしか従わない使い魔…

三名の回りでは召使い達が、大急ぎで仮の結界を構築しはじめている
医者の結界が破壊されれば、直ぐに展開されるであろう【ヒュプノス・コード】その魔力波動を一欠片も外に逃さない為の代物だ
エースの業火よりも及ぶ範囲の広いソレが、そのまま外に放出されれば、
王都と言えど死の眠りについてしまう、魔力レベルの低い者は特にひとたまりもない
それを考えれば…魔王都の中心部であっても、その暴発が副大魔王邸内で起こった事は、実は不幸中の幸いなのだ
少なくとも当主の【唄声】を敷地外に漏らす様な失策など、絶対に有り得ないから

敷地を護るモノ達をも辺りに集まり、場を包むように旋回しはじめている
その様子を見上げながら、黒い唇を噛みしめたデーモンは、ツカツカとその中心に歩み寄る

「何やってるんだっデーモンっっ!!!危なねぇから下がってろっ!!!」
「ゾッド…一度引いてくれ、試してみたい事がある…」

ゼーゼーと肩で息をしながら、悪態をつくゾッドを強引に下がらせると
デーモンは、従僕達が止めるのも聴かずに、ふわりと無防備にその結界に縋り付く
異なる魔力の接触とその反発作用で、彼の周囲に電磁波が発生する
パリパリと小さな稲妻が金の悪魔に纏わり付き、紺色の紋を刺した目蓋が苦痛に歪むが
デーモンは構わずに、その手を結界に添えてその表面を撫でると、可能な限り優しげな声で囁いた

「事情も知らずに、手荒な事をして悪かった、我々はお前の敵ではない…お前の主の友だ
お前はきっと何があっても、この結界を護れと命じられているのだろう?
契約者のゼノンが例え消滅しても、お前達の命が尽きてしまうまで内部の者を逃がすなと
だが…ソレでは困るのだ、吾輩はお前の主もお前も救わねばならんのだ、その敵である男も
だから…この結界を解いてくれ、道を開いてはくれないか?お願いだから……」

そう言ってポロポロと涙を流し、頬を擦り寄せるその様子に、居合わせた者は息をのむ
本来なら言葉で説得など出来よう筈もない、ウロボロスはあくまでも魔法具なのだから…
ところが…金色のカーテンは、ザワザワと、それまでとは違う動きで揺れ動く

そうだ…最初の夜に、ゼノンと魔女が、書斎に現れた時に感じた驚きと同じだ

彼等の作業を手伝っていた、あのゴレームとか言う人形達と同じでは無いか?
完全な生き物では無いかもしれないが…心が全く無い存在とは、とても思えない
相手が自らの主にとって、敵か味方かぐらいは理解出来るだろう?
今どうする事が最適で、どうすれば主が護れるかも?

そして、闇の色を刺した唇から溢れ出すのは、甘く優しげな旋律だ
【ヒュプノス・コード】に似ているが、確実にソレとは違う歌が、静かに紡ぎ出される
結界本体から、ほんの少しだけ魔力を吸い上げ、唄として練り直されたソレは
他者には、影響を与えてはいないが、ウロボロスには効いているのだろうか?
ゆらゆら揺れ動くソレの動きが、徐々に不規則になってゆく、まるでその子守歌に魅入られ、居眠りを始めたかの様に

「おい…ダミアン、何なんだ?アレは???」
「少なくとも【ヒュプノス・コード】とは違う、言霊の応用としては面白い現象だね…」

命を持たない者ですら、その声一つで誘惑して、意のままに操る能力を持つのか…

言霊を自在に使いこなす風伯系悪魔の長とは言え、コレも恐るべき異能と言えるだろう
物理的な攻撃だけが武器ではない【泣き落とし】も効果が高ければ立派な兵器だ
最もその慈悲が与えられるのは、魔界の生き物だけだろうけどね

本当にお前が私の腹心で、可愛い忠臣であってくれて助かるよ、デーモン
有り得ない事だが…仮に敵対すれば、これ以上厄介で面倒な相手は、居ないだろうからね
次第に元の姿に蛇のカタチに戻りつつ有るソレと、金色の悪魔の絡み合いを眺めながら、皇太子ダミアンは、心密かにそう考えていた

※※※※※※※※※※※※※※

生物は過度の苦痛を感じ続ければ、セロトニン等の脳内物質が、活発に分泌される
今際の際には、シナプス抑制が起こり、その痛みを和らげてくれると言うが…
それは人間や普通の魔族に限った事なのか?極端に身体の強度が高すぎるのも考え物だね
生粋の鬼の僕の身体には、そういう優し気な機能は、どうやら無いらしい
苦痛で気を失う事も、興奮する事も出来ないまま、ただ呻き耐えるしかなかった

血と吐き散らされたモノに塗れた下肢には、もう殆ど感覚は無くなってきている
上半身を中心に噛み千切られ、毟られた肌は、筋肉と神経組織が露出して、血と膿を滴らせ、紫色に腫れ上がっている上に
無造作に引きずり出された臓器の一部すら、あたりに拡散している

生きながら貪り喰われ、解体されているのと同じ様なモノだ
ソレでもまだ死ぬ事は無い、死ぬ事は出来ない…この丈夫すぎる身体ではね
長く嬲る為に、致命的な弱点をワザと外されているセイもあるのだろうけど

でも…もう時間の問題だろう、弱々しくなった心臓の鼓動と共に、流れ出る体液は減少してその勢いを失い、視界も狭くなりつつある
コアを体内から引き抜かれている以上、治癒魔法は使えず、何時もの様に傷口の自己再生すら出来ないのだから

飽きもせず身体を揺さぶられて、中に熱を注がれようと、もう悲鳴も嬌声も上がらない
体温を失い人形か屍の様に、殆ど動かなくなった僕の反応が、ツマラナイくて物足りないのだろう
赤髪は、肘まで赤くそまったその腕と手を、べろりと舐めると、そのまま派手に開いた腹部の傷の奥を探り始める
今度は実体の肉を確実に切り裂きながら…ビクビクと震える僕の肺を押しのけると
直接撫で上げ触れてくるのは…脈打っている僕の心臓、堅い爪が当たる感触に思わず目を瞑る

「奥はまだ温かいなぁ…いくら鬼でも、ココを傷つけられたら流石にヤバイんだろ?」

目を細める赤い悪魔は、これ以上ない程に凶悪な目をしてそう言った
そう確かにそうだ…脳を欠損するよりも、心臓を責め立てられれば、魔族と言えどタダでは済まない…再生力の源のコアを抜かれているなら尚更に

ついさっきまで、この惨すぎる苦痛から逃れたくて、早く楽にしてもらえないか…とすら思っていたのに
イザその危機が近くなれば、みっともない程に震えが止まらない…生存本能軋み悲鳴を上げる
ヌチャヌチャと心臓を弄ばれ、何時でも引き裂かれ、潰される状態に追い込まれる事に、ここまで強い恐怖を感じるとは思っていなかったよ…

最期に悪態の一つでもつこうにも、言葉どころか思考すら纏まらない
こんな所で僕は終わってしまうのだろうか …惨めな骸を晒して?
ボロリと溢れる涙が、何に対してなのかも最早解らなかった

ところが…直ぐにでもソレを潰され、切り裂かれるであろう強い痛みが、降ってこないのだ
替わりに聞こえるのは、酷く苦しそうな僕以外の呻き声だ

堅く閉じた目蓋を開くよりも先に、心臓を握り絞めていた手が、唐突に身体の外に引き抜かれた
そして…僕両手を焼き蝕んでいた剣までもが、急速に力を失い消滅してしまう

何が起こっているのか解らなくて、自由になった腕を引き寄せ、
肘だけで身体を起こした僕の視界に入ってくるのは…僕の上で振り乱れる真っ赤な髪だ
いや、所々に漆黒の変色が見られる
自ら頭を両手で抱え込み、ゼーゼーと息を吐く彼は、もはや僕に構っている余裕など無いのだろう
支離滅裂で、内容が上手く聞き取れない叫び声を上げ、低く呻いているのだが…何故だかその声が二重に聞こえる

まさかコレは…主格の方が、黒髪の方が表面に出てきて居ると言うのか?赤髪と同時に?
魔弾銃で撃ち込まれた薬物が、時間を置いて効いていると言うのか?

「何故だっ何故お前が出てくる、出てこられるんだっっ」

苦し気に吠える赤髪の方の魔格に対して、びっくりする程静かな、もう一つの声が重なる

「………ソイツを消すワケにはいかないな、お前をどうにかする為にも」

同時に何かがシュルンと音をたて、僕の胸の中に戻って来る、コレは…抜かれたコア?
再生能力を取り戻した僕の身体から、自己修復の白煙が上がり始める、通常よりはかなり弱々しくはあるけれど

主の気が二つに分裂したからだろう、鳥は、瓦礫の上を落ち着き無く羽ばたくと
結界を掴んだまま飛び上がり、様子を伺う様に僕等の回りを旋回しはじめる
どうやら両者が異なる指示を出しているのだろう、混乱した鳥は、掴んだソレをポトリと落とした

僕もその僅かなチャンスを見過ごすワケにはいかない、咄嗟に放った衝撃波が結界を破れば
封印から解放された少女は、直ぐさま翼を広げて、僕達から距離を取ろうとする
見た目は少女でも、そこは流石に年嵩の女性だ…そのまま適当な物陰に隠れてくれれば…
等と、ほんの僅かに安堵しようとしたのは、僕の見通しが甘かったのだろうか?
突然彼女は何かに気がつくと、方向転換をして、ソレに向かって走り出す

そんな彼女の異変を赤髪が見逃す筈も無い、魔格の鬩ぎ合いのせいで魔力波動の安定はしていなかったが
火炎の渦は噴き上がり、乱れ飛ぶ火球の一つが、彼女の背を焼、翼を直撃するのだが
それでも構わず、彼女は何かを拾い上げて、僕の目の前にソレを投げ渡してきた

横向きに飛んで来たのは…さっき跳ね飛ばされた僕の角、血に塗れテラテラと光るソレが鈍く光る

※※※※※※※※※※※※※※

同レベルの魔族との殺し合いを、もっと濃密に楽しむつもりだったのに、思わぬ邪魔が入った
邪魔くさいガキを外に追い出すつもりが、捕まえてみれば…瞬間的にその血が見たくなる
コイツを切り裂いたら、相手はもっと怒り狂う…もっと凄惨な殺し合いを楽しむ事が出来る
発作的に娘の頸をへし折ろうとしたのだが、その額に出現した邪眼にヤられるとは、予想外の事態とは言え、俺もヤキが回ったもんだ

だが…思わぬ収穫も有った、どうやら俺は、黒髪のアイツとは全く別の存在らしい事
そしてあのガキは、どうやら俺と同じモノと言う事もだ…

この肉体から出る…いやこの身体を完全に俺だけのモノにす術を知っているなら、ゆっくりと小娘を締め上げてやればいい…
鬼を縊り殺した後に、誰にも知らせずに、何処ぞに監禁してな
ガキが一匹行方知らずになろうとも、表の俺の権限で揉み消す事など、造作の無い事だ

大切な情報源だからな…全てを聞き出すまでは、殺すつもりは無いのだが…

術を破られて、完全に動揺している鬼は、そこまで考えが及ばないらしいな
「従わねば娘を殺す…」と囁いてやれば、ボロボロと泣いて嘔吐きながらも、あっさりと股を開きやがったのは傑作だな
本当に変わったんだな…コイツは、昔のコイツなら…他者の為に自らを犠牲にするなど考えられなかったが

だが…肉体的な苦痛よりも、プライドが軋むのだろうな…
ロクに悲鳴すら上げずに、歯を食いしばり苦悶に歪むその顔が、堪らなくいい

取り澄ました学者の面を知って居る分、余計にそう感じるのかもしれないが
その強情さが完全に崩壊するまで、グチャグチャに責め立ててやりたくなる

可愛気の欠片すらない野郎だ、男でも構わずに抱く何時ものタイプとは、全く違う…
コイツの何が、こんなにも俺の加虐心を煽るのか?自分でも解らないのだが

何日でも何ヶ月でも構わない、このまま鎖に繋いで閉じ込めて、ドロドロになるまで調教したら、どうなるのだろうか?
それこそ…気に入った奴しか引っ張り込まない、俺の屋敷の北の塔で…
どうせ鬼の身体だろう?多少の無理をしても、そう簡単にはくたばらない…きっと愉快に違い無い

だが、流石に立場に有るコイツも、行方不明と言うワケには行かないだろう
本当に惜しいな、コレが最初で最後、これっきりで片付けてしまうのは…
もっと早くに掻っ攫って、閉じ込めてしまえば良かったが、もう遅いからな

発狂してもおかしくはない加虐にも、命乞いの一つすら漏らさずに
泣き濡れてはいても、鋭く睨み返してくるその目にもゾクゾクする、薄暗い興奮が止められない

せめて…最期の瞬間くらい、たっぷりと可愛がってやろうと思っていたのに

急に何かが迫り上がってくる、俺の心臓の鼓動音が替わってゆく
さっきの痛みとは違う頭痛が、酷い吐き気と共に俺を苦しめるのは何故だ?
別の声が俺の頭の中に鳴り響き、不完全ながらも身体の自由を制限しじめる

そんな馬鹿な…お前は消し飛んで、眠っているはずじゃないか
俺が外に出ている時は、お前は自力で表層面には出てこられない筈なのに何故?

急いで鬼の心臓を潰そうとしたのだが、黒髪が内側から全力でソレを拒む
うるさい貴様は出てくるんじゃない、引っ込んでいろ、俺の邪魔をするな
邪魔くさいお前を切除する、その術が手に入りそうなこの時に、お前の出番なんて無いんだ

畜生…あの狂った医者みたいに、何よりも先にお前を、魂を喰い殺すべきだったのか

※※※※※※※※※※※※※※

「ゼノン…ソレで俺の心臓を突けっっ…早くっ俺がコイツを抑えている内にっっ」

聞き慣れたミドルトーンの声が、恐らくは黒髪方の叫び声が聞こえた
二つの魔格がせめぎ合い、肉体の主導権を争うが故か?
瞬間的に変わる表情が、彼の体内の異様な状態を示唆している
僕も黙って相手を見上げているワケではない、まだ傷の塞がらない手で、飛んで来た角を掴み取ると、ソレを媒介に小型の短刀を出現させる
力の上手く入らない手では、そのままの形状では、相手を斬りつける事は出来ないからね

そのまま短刀で、無防備な彼の胸板の中央を、至近距離の心臓の真上を刺し貫けばいい
そうする事でしかこの場は切り抜けられない、僕と少女が助かる術は無い
解りすぎている現実なのに、どういうワケか僕は躊躇する、手が震えるのは痛みの為なんかじゃない

それは…黒髪の方の目を見てしまったから、諦めとも安堵ともつかない静かな目を
僕の手に武器が錬成されるのを見て、赤髪の方は本能的な危機に目を見開いたけど
黒髪の方のソレは、赤髪を押さえ込み歪んではいても、満足気なのが引っかかったから

このまま…僕の手に掛かって消滅しても、君は満足だと言うのか?
そんなの…らしくなさ過ぎるじゃないか、何故そんなにも簡単に諦める???

驚きと同時に、きっと僕の方も、もの凄い目で、彼を睨んでいたのだろう
バリバリと衝突する魔力波動の歪みの下で、黒髪は自嘲気味に笑いながら言った

「いいから…早く殺れ…俺自身の攻撃では、完全にコイツを抹殺出来ない………
デーモンの館から、破壊者を王都に放つくらいなら、アイツの立場を悪くするくらいなら
俺はココで滅んだ方がマシだ…だから殺せっゼノンっっでなきゃお前も助からないっっ」

最もな理屈と、断末魔の様な黒髪の叫び声を聴いて尚、僕の手には力が入らない

思い出してしまうのは、故意ではなく覗き見してしまったあの光景だ
目的の為ならば手段を選ばない、極悪非道の冷血漢と言われたエースの、あまりにも意外すぎた一面
彼の愛魔の胸元に無防備に掏り寄り、怯え震えていたあの姿だ
最愛の者に殺される事を喜び、安堵していたあの表情を見てしまったのが、良く無かったのだろう

僕にはこの男が殺せない…こんな結末なんて誰も望んではいない
こんな納得出来ないカタチで、エースの心臓に止めの一撃をくれてやるなんて無理だ

『邪眼の真実』を知ったから何だと言うのだ…期待とは違う結果に絶望するだけなんてどうかしてる
患者自身が諦めてしまえば、どんな治療行為だって無駄になるんだ
愛する者の為に死ぬ、自己犠牲が貴いだって?悪魔がそんな感情を持つ方がオカシイ
情報局の切れ者ともあろう者が、何を寝ぼけた事を言っているんだっっ

ギンともう一度彼を睨み付けると、一瞬の内に鬼面に豹変したであろう僕の顔に、黒髪はニヤリと笑い、赤髪が怯んだのを感じる
なけなしの魔力の全てが込められた刃が煌めき、悲鳴と共に鮮血が噴き上がるのだが、ソレは荒れ狂う破壊者の心臓を刺し貫いてはいない

心臓をワザと外して胸をひと突きした後に、引き抜いたソレで、利き腕の腱と静脈を一気に切断してやったからね
派手な出血が僕の顔の上に、バシャバシャと降りかかる
胸抑えて蹌踉ける彼に構わず、返す刀で両脚の大腿部の腱も同様に斬りつけると
腹部にも何カ所かダメージを負ってもらった、血と体組織に塗れた短刀が役にたたなくなるまで、彼が当分動けない程度にはね
コレで少しの間は、彼の動きを制限する事が出来る筈だから、いくら強力な再生能力があったとしてもだ

「馬鹿野郎っ何で止めを刺さないっっ」

もしかしたら、彼が表層面に留まるのは、もう限界なのだろうか?
傷から溢れる血を抑えながら、息も絶え絶えに黒髪が叫ぶのだが、肩で息をする僕も冷たく言い放つ

「脆弱な人間じゃあるまいし、君の自決に付き合うなんて、僕は御免だね
足掻きなよ最後まで、納得出来るまで、君を殺していいのは残念ながら僕じゃない」

せっかくのチャンスをフイにする選択は、多分間違っているのだが
何故だか、無防備な彼に致命的なダメージを与え始末する事は出来なかった、自分の命も掛かっているのに
だが医者には医者のやり方がある、武官の君には解らないだろうけどね

「ふん…甘ちゃんには変わらないだろうに、センセイ?せっかくのチャンスだったのに…」

主要な腱を欠損した腕をダラリと垂らしながらも、ゲラゲラと笑う赤髪の気が徐々に大きくなる
やっぱり駄目か?間に合わないか?僕の再生力も、この傷の深さには追いついていない
利腕では無いにしろ、残ったエースの腕がガシリと僕の喉を掴む
このまま先にエースの傷が癒えて、赤髪が復活がしてしまえば、ソコで命運は尽きてしまう、全くの犬死になってしまう
僕も癒えきらない腹部の傷を抑えながら、血に塗れた短刀を握り絞めるのだが

キーンと甲高い高い金属音が、突然耳鳴りの様に響き渡る
ソレに共鳴した様に、大地が震え始める小規模な地震が起きた様に
何が起こっているか解らない赤髪は、慌てた様に辺りを見上げるのだが
その肩越しに、その上を見上げる僕の目も見開かれる
ウロボロスが解除されかかっている…それも破壊ではなく?一体誰が?
術者の僕の指示に従わずにに、他者のソレに従うなど通常なら有り得ない事だ

カーテンの様に降り注いでいた金色の粒子が、結界を構成するモノが旋回しはじめると
徐々に元の姿に、巨大な蛇のカタチに戻り始めている

そして聞こえてくるのは、甘く切ない旋律…聴いた事のない唄声

途端に赤髪の前髪がザワザワと逆立ち、怯えとも喜びともつかない表情を浮かべる
全く何て顔をしているのだろうね、そんな顔は僕に見せるべきモノでは無いだろうに
戦場に立つ機会の少ない僕でも解るよ、コレは彼の声だろう?
エースの為だけに紡ぎ出されるソレが、こんなにも優しげなモノとは想像もしなかった
全てを死の眠りに誘うと言う、強力な武器で呪詛がねぇ

半分崩壊しかけていた筈のウロボロス達が、すっかり元の状態に戻ってしまうと
少し高い位置に、巨大な蛇の双頭を従える、金色の悪魔のシルエットが見える

そうなれば…最早僕には、何の興味も無いのだろう
表層面を支配しているのが、どちらの魔格なのかすらも、もうどうでも良いのだ
両脚の腱の損傷も治りきっていないはずなのに、彼はふらりと立ちあがる
夢を見る様な目つきで、最愛の相手を凝視したまま

ああ…こんなにも解りやすい態度を取っているにも関わらず
【君】の想いは届いていなかったのかい?最愛の彼に対しては?
狂った狂気の根源、忌むべき魔格だと…本来の彼を食いつぶす病魔と誤解され
別の魂だと認識されて居なかったのだから、仕方の無い事かもしれないけれど

彼がどれだけの絶望と孤独の中で苦しんだか…何となく解ってしまうから

必要以上に同情的になってしまうのだろうか、全くらしくないよね…我ながら…
こうやって直面してみれば【邪眼】と【鬼】のその衝動はやはり似ている
部分的に共通項が多いからとは言え、入れ込みすぎだよね…まったく



続く

注釈はまた後日!ひたすらグロくて、理不尽でスミマセン(T_T)


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