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【位相空間】
堕天 3 R-18 軟禁?

皇太子が、寝室に何かを連れ込んでいる…
宮廷内部で、問題視されなかったワケではない
しかし…ダミアンの度重なる放浪癖に手を焼いていた侍従達にしてみれば
ソレが何であれ、かいがいしく世話を焼く彼が
機嫌良く宮殿に留まってくれる現状の方が、数段ありがたいのだ

奴隷か?ペットか?愛玩するのも嬲るのも、身分の高い者のたしなみの一つ

故にこの一件は黙認されてしまう、すすり泣くその声は誰にも届かない
いや寧ろ心地の良いモノとして聴かれていた、
天界人の悲鳴と嘆きなら尚更かもしれない

ダミアンが【天使の純潔】を穢したのは、何も今回が初めてではない
むしろ魔界では暗黙の了解、大魔王家の血を引く者の【悪癖】でもある

そこそこ徳の高いと言われる人間の聖職者・群れからはぐれた天使を見つけると
【誘惑】し【堕落】させずには居られない ジワジワと真綿で首を絞める様に

その始祖が【高位堕天使】だからなのか?
【汚れを知らぬ・知ろうともせぬ存在】への嫉妬心からなのか?
理由は定かでは無いが、魔界の住人達はその【感情的な悪癖】に好意的だ

魔力の強さだけが、力と権力の全てでもある魔界において
桁外れの強さを誇る絶対的支配者の、唯一目に見える
ウィークポイントであり、コンプレックスでもある
時には自身の王家との交渉に使える、カードでもあるからだ

ソコソコ見目の良い対象が、捕らえられると
必ずと言って良い程、王家の献上品になる事も珍しくない
殆どは軍事情報量は少なく捕虜としての価値も薄い下級天使で、
愛玩・加虐が過ぎて例え死んでしまっても、差し障りが無いからだ

現皇太子ダミアンにも、勿論その【悪癖】はあるのだが
ただし選り好みが、極端な程激しいとの噂だ
気に入ったモノはそれこそ、甘く優しく時間をかけて陥落するが
気に入らないモノは…あっさり嬲り殺される事も多い

掴まった対象者にとって、どちらが幸福なのかは?解らないが…

また…皇太子に愛されたと言っても、それは一過性のモノでしかない

【偏った堅い世界で育った者】は、最初だけは死にものぐるいで抵抗するが
一度そのタガさえ外れてしまえば、案外簡単に堕落し魔族に堕ちる
人間であればその魂を頂く事もあるが…
堕天使からの変異悪魔は、そう珍しい存在ではない

なによりも堕天のプロセス自体を好む皇太子は、気まぐれで
変異が完了してしまうと、その興味の対象から外れてしまうのだ

心まで完全に零落してしまうと、飽きられ寵愛を失ってしまうのだ
そういう元天使は、魔界人としての権利を保証されはするが、次々と暇を出されしまう
価値観が逆転した魔界で、一般市井として生き新たな生活を楽しむ者も多いが
中には軍部の末席に残る事を志願する者も居る
【仮初めの蜜月】が忘れられずに
再び寵を得る事は無い…と理解していても、
新たに縋る【主人】の側に侍る為に

そう考えれば…皇太子の【悪癖由来の寵愛】とは、
酷く残酷なモノなのかもしれない………

※※※※※※※※※※※※※※

人間の時間にして一月余り…少年は寝室に繋がれたまま
【飼い殺し】と言う言葉が相応しい状態が続いていた

【混血種】とは言え、戯れで捕らえてきた【下級天使】である
一度【禁忌】を侵せば、簡単に【堕天】すると思っていた

確かに【純潔の証】である【天使の輪】は粉々に砕け散った
しかし順調に進んでいたはずの【身体の変異】はそれ以上進まない…
いくらカラダを重ね悪魔の気と精を分け与えていても…何故か闇に染まりきらない

最初の夜こそ、【天使の輪】の破壊も兼ねて手酷く乱暴に抱かれたが…
ニ回目からは無理な挿入もしない、慣れるまで優しくしてあげるよ
悪魔はそう囁くが、屈辱的な扱いである事には変わりはない

少年の羞恥心などどうでもよく、十分に広がるまでと、
ネチネチと指で解されなぶられる、淫らな性具を押し込められる
一度始まれば、丁寧すぎる程の下準備をされ、
時間をかけ愛撫され嬲られる…

其処忙しい皇太子もスケジュールの間を潰して居るのだろう
昼夜を問わず、繰り返されるソレは不規則で何時やってくるか分からない
気持ちが休まらない天使はただガタガタと部屋の隅で震え、泣くばかりだ

精神的にはどうしても行為が受け入れられず…泣き喚いても許しては貰えない…
毎回枯れ果ててしまうと思う程、何度も前を絞りとられ
力が抜けた頃にようやく後ろに本物が入ってきて、さらに長い蹂躙が始まる

無理なく身体を繋げるための配慮と言うが
【純潔】を尊ぶ天使にとっては、どれも強い背徳感と屈辱しか感じない
最初は全力で抵抗したが全ては無駄だ…
抵抗が過ぎればまたあの【蔦】がとんでくる

それなのに…身体だけは、今まで意識した事すら無かった性感帯を
徐々に作りかえられるのが嫌でも分かる
悪魔に変化はしないが…確実に開発され始める身体…
その理不尽さに吐き気がした

「半分悪魔なのだから、直ぐに姿も変化するハズなのにおかしいね」

そう言って悪魔は、何度か自分の手首をバッサリ切ると
その血を無理に含ませようとするのだが…
絶対に飲まない…死んでも悪魔なんかになりたくない

嘘だ嘘だ嘘だ 全部私を陥れるための嘘だ
こんな事で【信仰】は揺るがない…これ以上穢れた手で俺に触れるな…

早い段階では、何度か舌を噛み切ろうとはした

しかし…ココでは直ぐ発見され治療されてしまうので
それだけでは死に切れない…早々にこの手段は諦めた

何度止めても自傷行為を止めようとしない私に業を煮やしたのか?
両手は鍵のついた袋状の拘束具で封印されてしまった

何が入っているのかわからない食事にも一切手をつけず、
唯一出来る反抗として、ハンストを続けるのだが
毎夜飽きもせず抱く悪魔に、身体を開かれるのと一緒に
得体のしれない薬物を、静脈点滴されてしまう

「最低限は食べないと…持たないよ」

事が終わり、ぐったりと横たわる俺の額を撫で回し、
悪魔はお決まりの説教を吐くのだが

五月蝿い・五月蝿い・五月蝿い

気に入らないのなら、殺せばいいだろう…いっそ殺してくれ
このまま【天使】ではないモノになってしまうなら…
死んでしまった方がいい………

強制的に栄養剤は入れてはいても、直接口から食事がとれないせいか…
日に日に肋が浮き上がり、顔色が悪くなる天使
もう抵抗する気力も体力もない、穢れてしまった身体だ…
飽きるまで、殺す気になるまで好きにすればいい

次第に背徳行為に慣れてゆく身体は、人形の様に無抵抗でも

〜ソレだけは譲れない〜

嫌だ…いくら穢されても絶対的に【悪魔】なんかにならない…
【天使】のまま【天界人】のまま死にたい…

抵抗する程に皇太子の執着を深めて居る事に、天使は最期まで気がつかない
しかしそろそろ時間切れだ、これ以上時間を掛けると命に関わる

モニター越しに見ても、一目で気に入った見てくれも勿論だが、
予想外の強情さに加えて、今まで抱いたどんな天使よりも綺麗な涙を流す

水妖の一族に帰すつもりだったが、手放せなくなったかもしれない…
青白くやつれた頬をなでながら、悪魔の皇太子は唇を噛みしめる


※※※※※※※※※※※※※※


「で?手に負えないから俺に手を貸せと?」

緊急で皇太子に呼び出された情報局長官は、最初こそ不機嫌だったが
具体的な用件を聴いてニヤニヤと嫌な笑みを漏らす

この男に任せていいモノか?今更ながら不安も過ぎるが
背に腹は代えられない…皇太子は深くため息をつく
しかし…王家の血筋の強い精を毎夜受けながら
悪魔に変異しない天使など聞いた事がない…通常なら

「予測でしか無いけど…もう半分天界側の血脈も相当強いみたいなんだよね」

悪魔に犯されそのまま悪魔に変異する事なく、その子供を宿した天使…
大概は戦場で敗れた敗者か、不運な力の無い者が多いワケだが
どうやらあの子の母体は母親は、そうでは無いらしい
私の遠い祖先と同等か?あるいはソレ以上の高位天使か…

その辺りの事情が、【混血種】が天界で生き延びた理由かもしれない

変異出来ないのは、天使で有りたい…
と願う自身の強すぎる意思の影響も勿論だが…

普通、悪魔の子を宿した天使は、
【罪の意識】とやらに耐えられず安易に自決する
自決せずとも母体ごと処分されるか、何らかの理由で処分を免れても、
身体の内側で起こる闇と光の力の反発に母体が耐えられず
結局は…母子共に衰弱死してしまう事例が殆どだと言う

故に無事に生まれ落ち、【成長した混血種】そのモノ自体がレアなのだ

「何しろデータが少なすぎるんだよ」

今回のケースは、変異種の研究者でもあるゼノンですらお手上げだ
ならば…より純度の高い【生粋の悪魔の精】を植えつけてみるのも手段の一つか…
大魔王家と言えど元を辿れば、最高位堕天使からの変異悪魔の血統
単純に【悪魔】と言うカテゴリーでは【生粋】とは言えない

「ジェイルの様に素直に私の血を飲んでくれれば…話は早いのだけどねぇ」

原因はハッキリと分からないが、今回に限っては【強制的な転魔】は不可能な様だ
本人に転魔の意思が無い限り、無理に輸血をしても効果は薄いらしい

「でも何で俺なんだ?」

普通に考えれば、より古い純血種の豪族であるデーモンの方が適任では?
鬼系列のゼノンは…下手をすると解剖・生体実験までしかねないので、
即刻却下になったのは理解出来るとして…

何よりも父親の血統が分かっているなら…
それに近い血脈の悪魔にその役目を負わせた方が、
身体には早く馴染むのではないか?

「ああそれも考えもたよ…でも天界への恋慕からか?
あの子は金髪に過剰反応するからね、それに転魔が完了したら、
約束通りに、一度は水妖の一族に戻すつもりだからね
まだまだ天界よりのあの子の暴挙暴言を聞かせたくないんだよ…
今後のあの子の立場を護る為にもね」

それなら水妖とは【犬猿の仲】の火炎系悪魔の方が、後腐れがないだろう?

「そこそこ信用出来る【悪役】には俺が適任って事か?」
「まぁ…そう言う事だ気を悪くしないくれ」

一度は信頼関係を失いかけた、ジェイルの一件と同様に
再びエースの助力を借りなければならない事に
多少なりとも自戒と悔しさはあるのだろう
目の前の男が、安心して弱味を見せる事が出来る側近中の側近であり、
数少ない盟友でもあり悪友であるとしても…

マジックミラー越しに医務室を覗きこむ皇太子の顔を見れば
自嘲気味で、複雑な表情は少し寂し気にも見える

一見我が儘・気儘に周囲を困惑させ、傲慢に見えるこの皇太子ではあるが
為政者としてのセンスは決して悪くはない、不真面目に見えるのは上辺だけ、
幕閣の立場にまで細かい気配り配慮を考え、摂政職も円滑にこなしている

そして時折見せるこの【繊細な臆病さ】が、エースは嫌いでは無いのだ

士官学校時代からの腐れ縁でもあり、家臣としての礼をとる間柄になっても
とにかく【高い身分の自覚】が見られない問題行動に悩まされる事も多く
愛魔を巡っての対立や、その他諸々の意見の相違があったとしても

何故か憎めない…困った顔をされると相談を持ちかけられると断れない

デーモンに対するソレとは、また違った意味の
【保護欲】の様なモノがかきたてられるのだろうか?
皇太子との関係は単純な盟友を越えた何かがある

少々出来の悪い?意地っ張りな弟分と言った所か?

ただ思うのは…いずれこの皇子が、大魔王に即位した時は
出来うる限り支えてやりたいと思うのは何故か?自分でもよく解らない

「まぁ良いだろう、見たところなかなかの美形だ 役得として引き受けてやるよ」

何故【変異】しないのか?今後も捕獲回収するであろう天界からの虜囚に
同じ現象が発生した時の為にも、詳細なデータは必要である事は間違いなく
純粋に興味もある…ゼノンの知的好奇心とは違う職務的な意味で

何よりも宮廷内部に今後も置くつもりなら、最低限度の安全性は調査しなければ
面倒な手続きも踏まずに、自身で調べられるのであれば…願ったりだ

「おいジェイル、いい機会だからお前も一緒に来い」

直接【変異前の堕天使】に触れる機会なんて滅多にないだろう?
興味深々で医務室を覗いていたジェイルは、ピョコンと耳を出し振り返る

「いいの?」

【尋問の実習】と言うより、自分と同じ変異悪魔に成ろうとしている対象の
その【過程】に興味があるのだろう

甘える猫がまとわりつく様に、長身の上官に付き従う

「弱っている相手だ…あまり無理をしないでおくれ」
「大丈夫…壊さない程度に優しくしてはやるさ」

心配なら其処で見物していればいいさ
そう言い残して2名は部屋を後にする

この決断が【吉】と出るか【凶】と出るか…
医務室からの音声をONに切り替えると、設えられたソファに腰を降ろす

やや照明が控え目の此方側から見る医務室は、やけに明るく見える

ふと【朔夜】のモニター室でのエースの気持ちが、
ほんの少しだが理解出来た気持ちにもなる

やれやれ…これは思っていたよりキツいかもしれないね

自ら依頼しておきながら、ちりちりと焦がれる嫉妬の気持ちを押し殺す
計器モニターを見つめる皇太子の目に、青い反射している



続く


気の置けない【なかよし】なのか?【天敵同士】なのか?
今一つ解らない?ウチのダミ様と長官………
でもこういう関係が実は一番大事だよね〜
と書き逃げてみたりします(^_^;)


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