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【金色の時間】
やせ我慢もつらいんです 1

うろたえるジェイルの手前上、大した事は無いと言ってはみたものの…
やはり鞭傷はかなり酷い…しかも凶器が俺の鞭では尚更だ
固まってしまったジェイルを庇う意味でも、払い落とす訳にもいかず
巻き取るにしても…何か別の物を噛ませるべきだった…

筋肉組織に対してガッツリ横に入ってしまった分、
治癒は遅いのは分かっている…その上、火炎魔法の爛れも酷い
咄嗟に利き手を出してしまったのも不覚だ…痺れが取れない
物理的な自己治療もやりにくくて仕方がない

職務上の負傷ならともかく…半分は俺のミスみたいなモノだ
ゼノンに診せるのは…少々気が引けるのだが…
早めに完治させるには、彼処に頼るのが一番早いから仕方がない
親しい間柄の者に対しては、存外口の悪いあの男に
詳細な理由を聴かれるのは癪にさわるがな…

※※※※※※※※※※

「確かにエースらしからぬヘマだよね〜」

研究室の片隅で治療に当たるゼノンは、真新しい傷口をシゲシゲと眺める呟く
苦虫を潰したような顔でエースは答えた

「咄嗟に利き手を出したのは確かにヘマだ…
でも今回は早めに治したい、実習はまだまだ残っているからな…」

爛れた組織の一部をメスで削りサンプルを取られ
生理食塩水で傷口を洗浄されると…チクチクとした痛みが広がる

「そうは言っても…これは時間が掛かるよ」

念のため撮影したレントゲンを見せられる
骨には異常はないが、筋肉の部分にモヤモヤとした陰りが見える

「骨まではイってないけど…真横に入りすぎてるよね、筋肉の損傷は激しいよ
医者としては…大事をとって暫く安静を進めたいね」

と言いながら、得体の知れない液体を丁寧に刷り込み
その上から更に、軟膏を2種類上塗りする
いずれも他では見た事の無い独特な色と臭いなのだが…
魔王宮の医療班の治療より遥かに効くのは分かっているので、何も言わない…

おそらく実験的な意味が含まれていたとしても

「その子のフィラメントがまだ不安定だから、決定的な対応治療が出来ないんだよ」

それがある程度特定できれば…対処魔法治療も同時進行出来るんだけどね…

「出来れば…その子の【精密調査】がしたいねぇ…君の治療の為にも」

そう提案した途端、ギロリと深緑色の目が僕を睨みつける
おやおや噂通り、余程大事にしているらしいね…その子を

「だってレアじゃないの?他種族からの変異悪魔は沢山居るけど…
【砂漠の爪】からの変異悪魔なんて前例が無いからね
今後の為にも、是非変化過程の記録を取りたいね」

冷却材を巻き込みながら、固定と保護の包帯を巻き付けてあげるのだが…
治療中の患者さんが、お医者さんをそんなに射殺す様な目で睨まないでよ
僕だからいいけど…医療班の他の誰かさんだったら可哀想でしょ?

「アレは俺の獲物だ手を出すな…」

残念…やっぱり無理かい? 低い威嚇の声を僕は、クスクスと笑って受け流す

「分かってるよ…情報局長官と皇太子の不興と恨みを買う程?
僕は馬鹿じゃないよ…同じ薬品と資料を君の屋敷と
情報局の医療室に届けておくから、朝と夕方2回処置を受けてね」

純粋に学者として興味と関心はつきないけど…今は仕方がないかな?
時間を置いて個悪魔的に親しくなったら…もとい手懐けたら
じっくりたっぷり調べさせてもらうよ…隅々までね

「ああそれと…いくら王家直々の【転魔の儀式】を受けていても
砂漠出身者にとって、ココの空気はまだ濃すぎると思うよ、
完全に【悪魔の身体】になるまではね…変な咳をしていたら注意してあげてね」

念のため三角巾で腕を吊ろうとしたけど…そこまではしたくないと拒否される
医者の言う事は聴いて欲しいんだけどね

「分かった…注意しておく…邪魔したな…」
「おだいじに」

慌ただしく上着を着直すと、足早に帰ってゆくその背中は
心無しかお疲れ気味に見える…またオーバーワーク気味なんだろうね

「何だ?怪我したのかエースは?」

入れ替わる様に部屋に入ってきた、大柄の悪魔もそれが気になる様だ
じっとエースが出て行った廊下を覗いている

「おや?ゾッド来てたのかい?」
「あの程度の傷くらい簡単に治せるだろ?」
「ああ…僕は余計な出歯亀はしない主義なんだよ」

それに何時でも【何事も無かった様に戻せる】と思われるのもかなわない
僕の出来る事は限られているからね…
そうじゃなくても、エースは自分の身体を粗末にしすぎる傾向があるから
いくら他にもっと大切なモノがあると言ってもね…

君が傷つく事…それ事態を悲しむ者が居る事を
もっとちゃんと認識するべきだよ…確実にね
相手が負担に思ってしまうような、【過度な自己犠牲】は
愛情じゃなくて【ヒトリヨガリ】だよ…

「アンタって案外大人なんだな」
「なんだい今更?まぁ僕達は、外から見ている事しか出来ないけどね」

深入りし過ぎないのも礼儀のうちさ

そう言ってゼノンは、先程採集した患部の組織を顕微鏡で覗きはじめる
学者肌の師匠がアノモードに入ると、話など続かない
あの程度の切片で何が解るのか?俺にはさっぱり解らないが…

久しぶりのご機嫌伺いだったが、やれやれ俺は書庫の整理でもしておくか

何時も通りの文化局の静かな午後、傾きかけた西日が優しく部屋を照らしている

※※※※※※※※※※

すぐに治せると思っていた分、この時間のロスはキツいな
実習のプランと計画を練り直さないと…

吸い殻が山盛りになった灰皿、積み上げられたデータと書類
そうじゃなくても遅れ気味の仕事をこなすべく
今日も職場に泊まりこんでいる事も、傷には良くないとは分かっているのだが
全ての情報に自ら目を通さずに居られない?性分は仕方がない

「やせ我慢も大変だな…」

降ってきた声に顔を上げれば
同じくオーバーワーク気味の副大魔王が、コーヒーを片手に立っていた

「ゼノンに聴いた、怪我をしたんだって?」
「あのお喋りめ…」
「ちゃんと指示通りに薬を取り替えているか?見てきて欲しいともな」

夜の分はまだ替えてないだろう?
そう言ってワゴンから出したのはあの薬?どうやら医務室もグルらしい…
仕方がないと言う形で…ようやく書類から手を離す

「そうそう何事も諦めが肝心だな」

机の書類を脇に寄せると、チョコンとデスクの端に腰掛けるデーモン

渋々差し出された腕にまきつく包帯を、医療用のハサミで包切り取りながら
楽しそうに鼻歌を口ずさんでいたが…
未だに赤黒く変色したその傷痕が現れると、流石に顔色が変わる

「聴いていたより酷いな…」
「いや…見た目は派手だがそうでも無い」

変な心配をさせたくなかったから…黙っていようと…思っていた
しかしソレに、何故か罪悪感を感じて視線を外そうとすると…

ペチャリと生暖かい物が患部をなぞりはじめる

「なっ………」
「大人しくしていろ…直ぐに済むから」

舐めあげられる傷口に、治癒魔法の膨大なエネルギー波を感じ
慌てて手を引こうとするが、ガッチリと抑えつけられる

「よせ…デーモン」

それは…お前の身体に掛かる負担が大きすぎる
逃げ腰のエースの目に映るのは…優しく笑いながらも紫色に染まったデーモンの瞳

「本気を出した吾輩には、お前でも叶わない…分かっているだろう?」

ビリビリと上がる空気の波動に、本能的な恐怖心がジワジワと湧く
ああ…故意で無かったのだが…どうやら逆鱗に触れてしまったのかもしれない…

※※※※※※※※※※

「んっ…あっあっ」

まさか自分のデスクで、こんな目に遭うとは思って居なかった
モニターは完全にシャットアウトしている…声も漏れる訳もない
分かっているのに…安心出来ない…出来る訳がない

あの細腕の何処にそんな力があるのか?いとも簡単に押し倒されると
前のめりに折り曲げられ、机に押し付けられたまま、強引に身体を開かれている

長身の悪魔は喘ぐ…悪かったもう許してくれ…と鳴きながら

あまり受身に慣れているとは言い難い後ろは
何時もに増して狭いのは…絶対的な恐怖心からか?不安感からか?
治療用の軟膏を塗り込んではいるモノのの
どうも滑りは悪いようだ…それでも辞めてやる気にはならない
ガチガチと震える腰をしっかり固定すると、哀願の言葉に耳をかさずに更に突き上げる…

「ここでは嫌だ…」

押し殺した悲鳴に近いその声を楽しみながら
勃ちあがる前をなで上げ…震える首筋をねっとりと舐め上げる

「イきたいか?エース?」

慣れないエースは…後ろだけの刺激ではまだイく事が出来ない
生殺しの状態に耐えかねて…自ら慰めようとすれば
即座に手首をねじ上げられ、包帯で拘束されてしまった

痛い…傷だけではなくて別の何処も…

「イきたい…もう勘弁してくれ…」

熱にうなされた目元が涙ぐみ、
息も絶え絶えに…それでも絞りだされる様に返される返事
その悲鳴に満足したのか?

紫の瞳がニヤリと笑う、心底楽しそうに

「ひっうあっ…あっ」
「吾輩と一緒にイかせてやろう…もっと叫べばいい…」

軟膏を塗られた小さな手が指が、ねっとりと俺のソレに絡みつく
同時に後ろからも容赦なくなぶられる
俺はだだ頭を振り、泣き喚く事しか出来ない

「あっああっ」

身体の中に熱を感じるのとほぼ同時に、俺の前も劣情を放つ
抱かれるのは嫌じゃない…だがコノ場所で、こんなやり方はあんまりだ
ぐったりと崩れ落ちる俺を、デーモンが見下ろしている

熱を帯びた紫の瞳をギラギラと光らせて…
これが地獄最強の悪魔の本来の姿…

※※※※※※※※※※

「最初から黙って治療くらいさせれば良いのだ…」

すっかり抵抗する気力もなくなった俺が、来客用のソファにへたりこむと
その脇に寄り添う様に座るデーモンは…もう何時ものデーモンだ

拘束の痕が青くついた手首にをとり、再び唇をよせる
うっすらと血が滲んだソコを、ペチャリと舐められると
徐々に薄くなってゆくのが解る 唇は徐々に下がり
腕の患部に到達すると、ことさら丁寧に傷口を舐めあげる
そのむず痒い痛みと、ワザとたてているであろう音が
嫌でも先程までの行為を思い出させるのだろうか?

「うっ………」

背中を駆け上がるざわめき、性感帯ではない場所を舐められているのに何故?

「そんな顔をするな…もう収まったモノが復活しても良いのか?」

サラリと恐ろしい事を言われ…絶句気味に相手を見上げれば
何時も通りの優しいキスが降りてくる

負傷者にこれ以上無体はしない、冗談だと鼻で笑われた

治癒魔法のじんわりとした温かさが、焼き切れた神経を修復してゆくのが解る
俺はただボンヤリとその様子を目で追う事しか出来なかった

「酷い傷だが…悪意は感じないな…焦りと戸惑いは強く感じるが」

治癒魔法が得意ではない俺には…物理的な状況証拠しか解らないが
デーモンやゼノンの様に、治癒魔法を頻繁に使うタイプの悪魔は
傷口に残る【加害者の念】の様なモノを読み取る事が出来るらしい

つまり…コレをデーモンに見せたかったのか?

便利屋の様に自分に頼らず、たまには愛魔に癒やして貰えという事か?
いずれにしても…上手い事ゼノンに嵌められたのは間違いなさそうだ

「早く会ってみたいモノだな…2名のお気に入りとやらに」

ぽつりと呟かれた台詞に、一瞬動揺するのが隠せなかった

「何だ…妬いているのか?お前が?」
「吾輩にもそれなりの独占欲は有ると言う事だな」

お前や皇太子殿下ほど、露骨でも激しくも無いけどな…

さも可笑しそうにデーモンが笑う…

砂漠から来た少年と、最高司令官が出会うのは…後もう少し


続く


時間が空いちゃってすみません
S系閣下もたまには悪くないかな?とか?駄目ですか?
其の2は…閣下と生意気代官の出会いみたいな感じですが
多分そんなにエロはきつめじゃないかな?
読まなくても【見習い拷問管と教官】は楽しめますので
苦手な方はスルーしてくださいね



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