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【Gt3兄弟@】
『朝起きたら…』 4 戻りました (完) 【改正版】

無茶苦茶をしないか?心配だったから、そのまま、しっかり見張っていたかったのだけど
あの後、結局エースに、追い出されちゃったんだよね

どちらかと言えば?「コレは俺のモノ」とでも言わんばかりに
見せつける行為も、好きな筈なのに?何でかな?どういう風の吹き回し?
聞いてみたけど、明確な答えは返ってこなかった
ただ【込み入った事情】があるからって…

【込み入った事情】って?どんな事情なんだよ?????

仕方が無いから、渋々、隣の部屋に移動した俺は
窓際のソファに腰掛けながら、巨大な月が浮かぶ夜空を眺めていた
ナイトキャップのワインを、チビチビ飲みながらね

寝室から追い出されて、事情もわからずに、順番待ちって
ひとりぼっちで、お月様を見ながら酒飲んでるとか
哀しすぎるだろ?俺???しかも自分の屋敷で?
ついでに自由すぎるだろ?エースも?やっぱりタダのオヒトヨシ?かな俺?

こうなったら飲んでやる、飲みまくってやる!!!!!
なんて…ナカマハズレ感から、ちょっぴりムカムカしていたら

「おい…ルーク、ちょっと来てくれないか?」

半分開かれた、寝室の扉の影から、静かに声を掛けられる、

ソレに気がついた俺が、慌ててグラスをテーブルに置けば
エースがシーッと唇に指を当てる 音を立てちゃダメッて事???
えっ…もう気絶する程ヤっちゃったの?ソレとも何かあったの?

不安になりながらも…音を立てないように寝室に入る

「誰にも見せたくない…それに、ジェイルが目を覚ますと厄介だ
一度、この空間を封印させてもらうぞ…」

誰にも見せたくないって? 怪訝に思いながらベットの上を見ると
そこには見慣れた悪魔の姿はなく、ヒョウ?いや少し違う感じもするけど?
俺達とほぼ体格の変わらない、大型の猫科の獣が静かに横たわっていた

「これって…」
「噂くらいは聴いた事があるだろう?【砂漠の民】だ…」

魔界の西側に広がる広大な砂漠は、悪魔にとっては禁忌の土地だ
【帰らずの砂漠】と呼ばれるその地には、不可侵条約地帯であり
魔界の先住民でもある、魔神達の領域でもある
そこに住まうのが【砂漠の民】と呼ばれる一族
人間界ではスフィンクスとも呼ばれる、巨大な獣神の幼生である

強大な力を持つ親神と異なり、その子供は極端に弱く
清浄な砂漠の空気の中でしか生きられない
無事に成体に進化できるのは、極僅かな数しか居ないとか?

そしてその子供達は、何故か悪魔に似た【擬態】をもっている………

「心配いらない、コイツはもう立派な大人だよ」

眠る獣の頭を優しく撫でながら、エースはさらに続ける

「コイツは魔神に進化する事を拒んだ、そして悪魔になりたいとダミアンに願った…何故だと思う?」

脆弱な肉体を捨てて、巨大な魔力を持つ成体になる事が、何故嫌だったのか?
皆目解らなくて…俺は、フルフルと首を横に振ると、エースは笑って答えた

「楽器が弾けなくなるからだとよ、大馬鹿な理由だけど、らしいだろ?」

ああそうか…魔神は誇り高い生き物だ、悪魔のソレよりも、頑ななカタチで

脆弱だった幼生時代その物を、切り捨てたいのか?抹殺したいと願うのか?
理由は定かでは無いが、強靭な肉体と魔力を得るのと引き換えに
擬態能力を、小さな身体に変化する力を、永久に失ってしまうのだ
自由に動く両手諸共に…それが堪らなく嫌だったのだろうジェイルは…

悪魔であろうと、魔神であろうと関係ない
より強い存在になる事が、本能的な渇望であるはずなのに
それよりも惜しかったのかい?その両手が?

馬鹿げているけど、ジェイルがそんな風に考えた理由も解る分
ただ苦笑するしかない自分も、何処かに居る
ジェイルが獣神になってしまわなくて、良かったと安堵する自分も

その経緯にどんな事があったのか?俺はまだ知らないけど
機会があったら話してくれるのだろうか?何時になるか解らないけど

「ナリはこんなだが、体力と魔力は、魔神の成体とほとんど変わらないさ
ただ…肉体の成長を、無理矢理止めた後遺症がどうしてもあってな」

スーっとエースの手が、ジェイルの身体の上を移動すると
普段は目くらましが掛かっているのか?視覚的に見えもしなければ、その波動すら感じない
勿論触覚的な質感すら感じないのに、その痩躯をとりまいてる、細い帯状の封印には
薄ぼんやりと不可思議な文字の羅列が…そしてその一部が壊れ綻びているのが見える

「コイツが消耗すると、こうして綻びが出てしまうのさ、おかしな変化はその影響だ」

そう言うとエースは、その破損した箇所に手を翳すと
聞いた事も無い様な真言の詠唱をはじめ、その綻びの修正を始めた
綻び千切れかけたその場所が、一際強く、発光しはじめると
一度粉々に砕けたソレが、再びその箇所に欠けた文字のカタチに、再構築しはじめる

ゼノンならともかく、普段、面倒な詠唱や、複雑な呪術が必要な術式的なモノを、
好んで使用しないエースが、ソレを施行する様は、何だか不思議な感じがして

俺はただその光景に見入っていた

上手く言えないのだけれど、他者が入り込めない様な強い絆を感じて、少しだけ胸が痛んだ

「じゃあ前にもこんなことがあったの?」
「現象は、同じではないけどたまにな…まぁここ最近は1000年単位で無かったから
本魔も自覚がなかったんだろ?それに…この姿に戻ってくれないと処置できないからな」

ああ…だから、ゼノンは治療できなかったって事?
医者嫌い・検査嫌い、だもんね、過去に何があったかは知らないけど…
それに、変異悪魔は、自分の元の姿を見られる事を、極端に嫌うモノも多いとは聴くけど
ジェイルも、そういうタイプだったのだろうか?少しだけ意外だ

それとも?今施術した術自体が、ゼノンですら知らない、特殊なモノなのだろうか?

「特にコイツは、この姿を見られる事を嫌うからな、昔の事情を知ってる相手であっても
はみ出した耳やら尻尾やらは、全然平気な癖にな…ソレが厄介なんだ」

封印の綻びが元に戻ると、獣の体はゆっくりと、見慣れた悪魔に戻ってゆく
完全に気を失っていたのだから、俺に正体を見られた事を気がついていないだろうけど

「ジェイル…」

そっと元に戻った手を取り思う、
例え元が何であれ、どんな姿であっても、お前はお前じゃないか

エースは知ってるのに、俺は知らなかったのが、少し悔しいよ、お前の大事な秘密を、
身体に関わる事じゃないか…ちゃんと知らせてくれないなんて、水くさいじゃないか

「良い機会だから…見せておこうと思った、お前にはね、俺の勝手な判断だが」

俺の背後でタバコをつけながら、エースはそう呟いた

またジェイルの変異異常が起こった時、側に居るのが自分じゃなかったら
お前だった時は、手を貸してやって欲しい…施術の方法は教えてやるから

今回だって、真っ先に頼ったのは、俺じゃなくてお前だろ?

コイツの気後れや気紛れや、自覚の無さだけじゃない、
何らかの理由で俺が、施術出来ない時もあるだろう?
案外コイツが心を許す奴は少ないんだ、正体を晒しても不安にならない奴は…

コイツに近いお前だから頼むんだ、引き受けてくれるか?

そう言うエースの顔は、妙に優しげで…どことなく寂しそうで
何だか不思議な感じはしたけど…断る理由は俺には無い

「そんな事頼まれなくたってやるよ、当たり前じゃないのさ」

ルークはそう答えると、ふんわりとしたジェイルの茶髪を撫でる
女の子のジェイルも可愛かったけど、ちゃんと抱きしめてあげたかったけど
やっぱり見慣れた姿の方が…こちらも安心するものだね
目を覚ましたら、埋め合わせをして貰えれば、ソレでいいよ

最も、今回は俺の方から、だまし討ちにしたカタチになっちゃったから、
逆に引っ掻かれるかもしれないけどね

「さてと…悪かったな、さっさっと元の姿に戻してしちまって」
「別にいいよそんな事は、またチャンスは何年か後にあるかもしれないし」

最初に相談に来た、あのジェイルの不安気な瞳は、俺だけのものだから
結局は誤和算じゃないか?と変に納得している自分も居る

「何笑ってるんだよ…」
「いいや…何でもないよ、まぁお姫様が、お休み中なら仕方ないや
俺達は、おとなしく飲もうよ、とっておきのワインがあるんだよ」

いけない…変にニヤついていたらしい、何を考えていたかはエースには内緒
怪訝な顔をするエースを軽く躱すと、俺は使用魔を呼び出す
たまには、こんな穏やかな夜があっても、いいじゃないかな?



end


初期の思い切りの足りない?エロ作品に、順番に手を入れておりますが…
考えたら?この頃から?ちょっと重かったかもしれませんね〜
一見ライトな様で、がっつり変態ですしね〜このシリーズ

それに…この時点では、参謀が男前だった様ですな
何処かで?何かが?弾けちゃったのかなぁ…何かが?

続編の『ちょっとした仕返し』『三つ目が通る』も順番に手を入れますので
少々お待ちくださいませね

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