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【Gt3兄弟@】
『瑠璃の魚と篭猫』4 R-18 LJ同居生活+D×J・A×J有り

「そうか…その子供については、未確認だったな、こちらでも調べてみよう」
「ありがとうございます伯父上、ソレと…拒絶反応を緩和する薬剤の資料も、送って頂けると助かります」

後日、結界の外に出たルーク、
カフスの通信機能を使うと、彼の伯父に事の次第を報告した

思いがけない展開を、同族に告白する事に、躊躇が無かったワケではなかったが
ソレ以上に…ルークは、ジェイルの酷い咳が、気になって仕方がなかった
それを緩和させる手段を、知りたいと感じていた

本当はもっと早くに、伯父上と連絡を取りたかったけれど

懐いたジェイルが、ベッタリとひっついて来るので、なかなか一名になれない
迂闊に連絡が出来ないので、彼が寝ている間に、こっそりカフスを試してみたけれど…
隔離されたジェイルのスペースでは、通信機が一切使え無いのだ

勿論外に出ても…ココはまだ皇太子殿下のプライベートエリアだからね
妨害電波的なモノが張り巡らされて居るのだろう、繋がりやすい場所を探しても
通信はノイズ混じりになってしまい、キンキンと耳に響いて、少し頭が痛くなってしまう

正直…僕自身は、ジェイルの素性など、完全にどうでも良くなっていた
役目とは言え、ジェイルの側に居るのは楽しかったから、彼の世話役でも構わなかった

隔離スペースの外に、自分の部屋は、宛がわれていたのだけれど
殆どその部屋には戻れずにいたため、ジェイルと寝起きまで、共にしている様な状態で
すっかり打ち解けてしまったのだ、まるで昔から知っている幼なじみの様に………

あの部屋には何でも揃っている、療養中のジェイルが、不用意に外に出なくても良い様に
彼が欲しがるモノは、何でも与えて居る様な雰囲気すらするのだが
皇太子殿下もお忙しい方だ、何時も彼の側に居るワケにもいかないのだろう

大きな部屋にポツンと一名で居る事は、どうしようもなく退屈で、寂しいらしいのだ…

ようやく手に入れた、遊び相手でもある僕と、片時も離れたく無いのか?
過剰な程にひっついて、甘えてくるのだが………どう言うワケか悪い気はしない

いくら共通の話題があるとは言え、同じ年頃の他族の子に
無防備に甘えられた経験なんて、今迄なかったから…つい甘やかしてしまう
僕には自分より年下の兄弟は居ないけど、もし居たとしたら、こんな感じなのだろうか?
僕が側に居るだけで、そんなにも嬉しいのなら、ずっと一緒に居てもいいと思うくらいだ

それに…自室の帰れば、同じ棟で寝起きをする他の従僕達に、質問攻めに遭うから困る
ジェイルの事を、根掘り葉掘り聞かれるのが、苦痛だった事もある

彼等にしてみれば…ジェイルは特別扱いが過ぎた、要注意のライバルなのだから当然だろう
その分?その世話役を任された僕自身の事は、あまり興味がないらしく、詮索されないのは助かるのだけれど…
大切な相手を悪く言われるのは…やはり辛い
あからさまな嫉妬心から来る、キツイ言葉尻には…嫌悪感を覚えてしまうから

のらりくらりと、彼等の追求を躱しながら、外での用事を済ませると
結局は奧に逃げ込んでしまう、無用のトラブルを避けるために
そんな僕に対しても、きっと良い感情は持たれていないだろうけど…
今はソレでいいと感じた…
コレは皇太子殿下に任された職務なんだから、とやかく言われる覚えはない

気がつけば…ここ数日で、自分でも随分大人な対応が、出来る様になった気がする

コレがもし僕自身に対するイビリだったりすれば、早々の心が折れてしまったかもしれないけれど
その標的が【護るべき相手】となれば、また感覚は違ってくるモノだな…と改めて実感する
悲しんでる暇なんて無いのだ、彼を護りたいと思うのは、保護欲みたいなモノなのろうか???
それが【弱い自分】をここまで強くするとは、王宮に上がるまで知らなかった感覚だ

それに…そんな取るに足らない雑音よりも、不安になってしまうのは、あの酷い咳と熱だ

他族から悪魔に転魔をするには、苦痛と苦悩はつきものだ、命に関わるモノではない
体内の血が完全に入れ替わってしまえば、自然に治まる物だ………と解っていても
日に何度も咳き込み、苦しそうなジェイルの姿を見るのは、忍びなかった

勿論殿下も、ソレを捨て置いているワケではない
毎日、朝と夕方にやってくる、王宮付きの医療スタッフは
その日の分の処方薬を、僕に渡して来るのだけれど………
病気や怪我では無い上に、身体の変化を阻害しない為にも?彼等も積極的な手が打てないのだろうか?
殆ど経過観察な治療は、根本的な解決には、なってない様にも感じるのが歯痒い

医者でも無い僕が、その治療方針に口を挟むワケには行かないけれど
治療に邪魔にならない程度の、呪いや、副作用の少ないサプリメントでもいい
少しでも咳が楽になるような、手段があるなら、取り寄せてあげたかった
水妖にも変異悪魔はたくさんいるからね、逆に王都ではお目に掛かれない、別手段もあるだろうから………

その時は、純粋にジェイルが心配だったから、その気持ちに他意は全くなかったのだけど
コレが後々…大問題に発展するとは、思ってもみなかった

ノイズだらけの通信を切ると、僕はジェイルの部屋に向かって歩き出す
そろそろ目が覚めた頃だろうから、今日は何をしてすごそうかな?

※※※※※※※※※※※※※※

エリアに戻ってくると…室内から別の気配を感じて、ルークは溜息をついた
もう見知った相手なのだが、どういう対応をしていいのか解らないからだ

そっと部屋の中を覗けば、金の髪の悪魔が背中を屈めて、ジェイルを抱き締めて居るのが見える
勿論、公務に出られているダミアン様では無いのだが…
相手の首と肩に回ったジェイルの腕は抵抗などしない、むしろ彼が与えるキスを喜んで受け入れる
ジェイルの世話係を任された以上は、僕にはその行為を咎める義務がある…とは思うけど出来るワケがない
相手が副大魔王であれば尚更だ、いくら皇太子殿下付きの従僕でも相手が悪すぎる

「ふぁ…んっ……」

上手く息継ぎが出来ないのか、熱の籠もったジェイルの声が小さく漏れるけど
閣下はまだ、彼を解放してやるつもりは無いみたいだ
片腕でがっちりとジェイルの腰を支えてやりながら、さらに深く口の中を探っているのだろう
派手な装飾品に飾られた手が、柔らかな茶髪を撫で上げ、更に引き寄せているのが見える

しかし………キス以上の行為を、しているワケでは無いのだから
閣下がダミアン様の留守をいい事に、その所有物に手を出しているとか
ジェイルはジェイルで、間男を引っ張り込んでいる?みたいな関係ではない………とは思うのだけど

必要以上に濃厚なソレは、酷く淫らに見えて、僕は目のやり場に困ってしまうのだ

深い事情は知らない、ジェイルに聴いても「約束だから」としか答えないし
勿論、僕が閣下に直接聴くどころか、意見する事も出来るワケもないから…
見ないフリをする事しか出来ない、身分違いと魔力の差から反論なんて出来ない

閣下が仕事の鬼で、常に激務でお忙しいのは、魔王宮内では常識だ
どうやらその合間を時間を作って、ココを訪れる様なので…
何時彼がやってくるかなんて、全く予測は出来なくて、良いタイミングで席も外せない

僕の立場や心配なんて、彼等の眼中に無いのかもしれないけど………
奔放すぎる両名に対して、苛立ちを感じているのもまた当然の事だ

でも………閣下が結界の中に入ってくる気配を感じると、ジェイルは何時も機嫌がいい
つま弾いていたギターを放り出し、尻尾をピンとたてると、弾む様な足取りで、彼を出迎える
躊躇も遠慮もありはしない、最大限に喉を鳴らすと、ぴょんと彼に抱きついしまう

子供が自分を気に掛け、優しくしてくれる大人に、過度に懐いているだけ…
僕と伯父上の関係とそう変わらない、と無理に思い込もうとするのだけれど
ダミアン様に、この関係が発覚した場合の事を思えば、とてつもなく不安だ

僕には経験が無いけれど…キスだけで相手を堕としてしまうなんて事があるらしいけど
魔界の最高権力者も、そういうタイプなのだろうか?

熱を持ちとろんとした視線で、閣下を見上げるジェイルの目は、何だか酷く頼りない
閣下はジェイルの額の髪を、やさしく掻き上げてやりながら
ようやく腕の中の彼を解放するのだが…キスだけでも相当な刺激なのだろう
腰が砕けてしまっているジェイルは、ぐにゃりと相手に身体をあずけるたままだ

「今日の分はおしまい…どうだ少しは気分が良くなったか?」
「………今そんな事聴く???」

もうすっかり、慣れてしまったこの両名のやりとりも、何時もの常套句と言った所だ
タイミングを計って室内に入れば、僕の気配にはとうに気がついていたのだろう
閣下に抱きついたまま、その背中越しにジェイルが此方を見る

「お帰りルーク、何処に行っていたの???」

ああ…もうっっ、頼むから、先に閣下に挨拶だけでもさせてよ
どうにも天然気味で、王宮内の序列が解っていない風体のジェイルの反応に
思わず、引きつった様な苦笑いも漏れてしまうのだが………

そんな無礼な僕の態度を、肝心の閣下は少しも気にはしていない様だ

ゆっくりと此方を振り返った金の悪魔は、そっとジェイをベッドの上に戻してやると
ジェイルにしがみつかれて、乱れた襟元を手早く整えてしまう
そしてもう一度だけ、名残惜しそうにジェイルの頬に軽くキスを落とすと
まるで何事も無かったかの様に、僕の脇をすり抜けて部屋から出て行ってしまう

彼は直属の上司と言うワケではないけれど…
この件の事も有り、未だに真っ直ぐに視線が合わせられない
目を伏せ、礼を取る僕に、すれ違い様に声が掛かる
見せつけられる行為とは、裏腹な涼やかな声で

「御苦労…また少し熱が出ている様だ、気をつけてやってくれ」
「………はい」

それでも…まだ彼は良い方なのだ、もう一名に比べれば………

この隔離エリアに出入りを許されているのは、僕と王宮付きの医療スタッフが数名、それと閣下
副大魔王の魔力がいかに強大だろうと、皇太子殿下の許可もなくココには入れないはずだ
一連の行為にも何か意図があるのだろうけど、此方からは確認出来ないよ…恐ろしくて

その上…同じ様にフリーパスの者がもう一名居るのだ、此方の方は更にタチが悪い

※※※※※※※※※※※※※※

「寝ている間にルークが居なくなっちゃうんだもん、びっくりしたよ
入れ違いだったのかな?閣下が来たから、寂しくはなかったけどさ………」

少し不機嫌そうな上目遣いで、パタパタと尻尾をはたくジェイルには悪意はなく
どうしようもなく可愛らしいのだが、状況が状況なだけに、生半可な返事は出来ない…
それに僕の戸惑いも解ってないだろうな…多分
この子の相手をするのは、楽しいけれど
同時に知ったらマズイ事を、知りすぎてしまったのでは無いだろうか?自分は???
殿下がお帰りになったら、事実を報告すべきなのか?隠蔽すべきなのか?
ルーク自身の中でもまだ答えが出てこないのだ

でももう少し、この子の回りの事情を把握してから考えても、遅くはない筈だよね
殿下の外遊のスケジュールを考えれば、まだまだ時間はたっぷりあるのだから

堂々巡りのネガティブ思考から、逃れたくなったルークは、少々無理な作り笑いをすると
ジェイルの髪をかきあげて、その頬に優しくキスをする
自室から持ち込んだ荷物を降ろすと、特に重量のあるショルダーを、ボフリとジェイルの側に降ろした

「ちょっと外に用事があったんだよ、ついでに色々必要なモノを持ってきたんだ………」

君が寝ている間くらいしか、僕は外出できないからね
うっかり、そう続けそうになる言葉を、ぐっと飲み込んでしまう
確かにジェイルに懐かれすぎて、身動きが取れなくなってしまうのは…困るけど

ずっと寂しい想いをしていた様だから仕方がない、捉えようによっては、可愛らしい束縛じゃないか

持ち込んだのは、控え室に置いたままだった、私物のギターと
私物のエフェクターやシールドとその他諸々だ、何時までも借り物では落ち着かないから
愛用のアンプとヘッドも、水晶宮から送ってもらう手はずになっている

それから…ショルダーの中から、重そうに球体を取り出すと
ソレを見て、流石に驚いたのだろう、金色の目が大きく見開かれて
僕の顔と、手の中のモノを、交互に何度も覗き込む

淡いブルーの発光を帯びた、巨大な水晶玉に見えるソレは…僕らの頭ほどの大きさはある
その中には細波が、キラキラと光りながらうねっている、水妖系悪魔の魔力の集合体…
協力者を探して、これだけの質量に育て上げるのには、それなりの苦労したんだからね

核になっているのは、確かに僕の一部、魔力を部分的に取り出し、結晶化したモノだけれど
僕の魔力だけでは…コレからやろうとする事には、少々力が足りなかった

だからこのエリアに居る水妖系悪魔に、片っ端から声を掛けて頼んでみた
ほんの少しづつで構わないから、魔力を貸して欲しい、協力して欲しいと頭を下げた
理由が突飛なだけに…最初は渋い顔をした者も多かったが
そこは他の属性とは違う、愚痴りながらも、最終的には魔力を分けてくれる

中には…間接的にダミアン様に媚びを売りたいから、なんて輩も居るだろうけど
中級・下級悪魔が中心の衛兵や使用魔達はにしてみれば
水妖の中では最上位の海竜の若君に、突然頭を下げられて面食らってしまった…
そう感じた者の方が、圧倒的に多いのだろうな…
身分や立場を利用した威圧ではなく、腰の低すぎる対応に
思わず応じてしまった…そんな所だろう

それでも…もしこれが他の属性なら、こうもスンナリとは協力は得られなかっただろう
いくら同族でも、まだ殆ど面識の無い相手に何かを頼むなんて
以前なら怖くて絶対に出来ないと思っていたけど
突然の無茶な申し入れに答えてくれた、眷属の温かさに、改めて感謝せずにはいられなかった

「コレが原因で、僕のギターが錆びた事は無いけれど…
ジェイル、念のため君の機材に、結界と防護を掛けてもらえる?」
「えっ…何をするの???」
「見たいって言っていたでしょう、海を…今からソレを見せてあげるよ」

※※※※※※※※※※※※※※

空間を直接に【海】に繋げてしまった方が、術としては簡単な事なのだけど
この隔離エリアでソレを行うのは、セキュリティーを暴発させる自殺行為に等しいだろう
仮にソレが可能であったとしても、僕の魔力では到底足りないのは解っている

だから…本物の海を見せてあげる事は、まだ出来ないけれど
僕の中の海のイメージを、魔力を分けてくれた同族達の記憶を見せてあげるね

と言われても、今ひとつピンとは来ないよね?
キョトンとしてるジェイルのに笑いかけると、僕は床に魔方陣を描く
専用の顔料を含んだチョークで書かれたそれは、全ての図形と呪符を書き終えると
全体が淡く紫色に光り始める、その中央に持って来た球体を据え置くと
魔方陣に反応したソレは、フワリと宙に浮かび上がる

すると…仄かな光りはその上部の一点に集まり
一気に拡散する様に、放射状に外に溢れ出した
青い光りを放ち空間に広がって行くのは、連続する波と飛沫
そしてその間には、半透明の魚影と海の生き物達の姿が、遊ぶ様に紛れる

それらはには実体はない…術者であるルークと、魔力を分け与えた水妖達の記憶
彼等自身の楽園に対するイメージと、その恋慕の結晶であるが故に
例え実体がない影であっても、実物のソレに近く、リアルで美しいのだ

写真や映像では見た事があっても、本物の海にまで赴いた事の無いジェイルからみれば
室内一杯に広がる海のイメージは、ただ驚きの連続なのだろう
人間界や異界の、立体映像等とはワケが違う、それぞれが独立した意思を持ち
まるで大気中を泳ぐかの様に、ゆったりとあたりを旋回しているのだから

「すごい…これが海???」

キラキラとした目で、それを見上げるジェイルの頭からは、獣の耳が飛び出している
調子の悪い時ばかりではない、彼の興奮が抑えられなくなった時、嬉しい時も
そうなってしまう事は、ここ数日でよく解っているから、何だか僕も嬉しくなってしまう

術の媒介に必要な魔法球を練り上げるには、少しばかり苦労したけれど
こうやって解りやすいカタチで喜んでくれるなら、報われた様な気分になる

「調子が良くなったら、本物も見せてあげるけど、今はこれで我慢してね」

遠慮がちにそう言う僕の言葉を、ジェイルは聴いているのか?いないのか?解らないけど
スゴイスゴイと小さな子供の様にはしゃぎながら、手近な魚影にじゃれついている姿はやはり可愛い
触る事は出来ないけれど…それでも、意思を持つ魚たちの反応が、面白くて仕方がないのだろう

少し延びた彼の爪を器用に避けながら、踊る様に泳ぐ魚達の影と
飛び跳ねる猫の姿を見ながら、僕はやれやれとその場に腰を下ろすのだけど

そんなジェイルの側に、一際大きな魚影が近づいてゆく
メガロドン、人間界では既に絶滅してしまった巨大な古代鮫も、魔界の海では現役だ
20メートルを超えるその巨体は、鯨ではなく、ちょっとした怪物の様にすら見える
生まれながらに魔力を持つ者も多く、変異悪魔に変化する事も珍しくない

その大きさに目を見張る猫は、よせばいいのにその大物にもチョッカイを出す
当然の事ながら、先程までの魚達の様にはいかない
牙が折り重なる巨大な口を開けると、不作法な子供に対して一喝する
下手をすれば丸呑みにされてしまいそうな、その迫力に圧倒されてしまったのだろう

驚いたジェイルは、慌てて僕の所に戻ってくると、抱きついてその背に隠れてしまう
よっぽどビックリしたのかな?尻尾がポンポンに膨れている
怒りが治まらない古代鮫が、ゆるりと此方にむかって威嚇してくるけど

『鎮まれ………海の大老よ、若輩者が失礼した』

反転する僕の魔力波動と、海竜の気配、水妖にしか解らない言葉に、彼は直ぐに我に返ってくれた様だ
翳した僕の掌に、その巨大な鼻先を軽く当てて礼を取ってくれると、踵を返して魔法球の中に戻ってくれた

全てが僕の記憶ではないからね、他の者のソレも入り混ぜて合わせてあるから
何でも思い通りにはならないのは、仕方がない事だけど
変に揉め事に発展しなくて良かった…と、少しだけ安堵の溜息を漏らすと
そんな僕の心中を知ってか知らずか、脇からひょっこりと顔を覗かせたジェイルが、此方を見上げている

「ごめん…ルーク、アイツ怒っていたの???」
「古代鮫はプライドも高いからね、次からは注意してね………」

身に過ぎた相手にチョッカイを出すのは危険だよ、現実世界なら尚更にと
本来ならココでガツンと言うべきなんだろうけど、親に叱られた子供の様に、不安気なその目を見ると弱い
先に謝ってるし、コレ以上叱らなくてもいいかな?と言う気分になってしまう

「………でもルークって強いんだね、俺ちょっとビックリしたよっっ」

びっくりするも何も、相手は水妖の眷属なんだから、当たり前の事なんだけどね
その頂点の君臨する海竜の一族には、それなりの礼を払ってくれて当然なのだ
例え僕の様な末席の、まだ魔力の弱い仔竜であったとしてもだ

「そんな事ないよ、アレは僕の眷属だから、遠慮してるだけだよ………」

「強くなりなさい」と言われてても「強い」と言われた事も無かったから
何だかこそばゆくて、気恥ずかしくて、しどろもどろとしてしまう僕に
ジェイルは更にギュッと抱きつくと、ゴロゴロと喉を鳴らして擦り寄ってくる

「俺は、強いルークが大好きだよ………」

そう言ってしがみついてきた腕は、ゆるゆると首の後ろに回ってきて
紅い唇が、僕のソレに重ねられそうになるのだけれど…
寸前で僕はソレをやんわりと止める、彼の頬にも手の甲にもキスはしてるけど
唇同士のソレはしない様にしていた、そこだけはケジメをつけたかった僕なりに

「駄目だよ…ソレはダミアン様の為にとっておかないと………」

僕もジェイルの事は大好きだ、血は繋がってはいないけど弟の様で
だからこそ、ソコの部分には触れていけないと思っていた

閣下とジェイルのソレや、もう一名との関係を否定して
彼を傷付けるつもりなんて、微塵もないのだけれど…
せめて、お守り役の僕だけは「禁」を破りたくは無かった
だってココに要る限り、僕もジェイルも、皇太子殿下の所有物でしかないのだから

「まだ駄目?ルークは俺の事が嫌い???」
「嫌いなワケないでしょう?僕も好きだよ…だけど立場上こういうのはマズイよ…」

今後もずっと僕と一緒にいたいなら、誘惑してこないでよ
君の誘いに乗らない様にするのは、結構大変なんだからさ

半分は冗談、半分は真実のソレを、そのままストレートに伝えると
僕の困り顔から察してはくれたのか?「はぁい」と気のない返事をすると
渋々ながら僕を離してはくれる、かなり残念そうな顔はしていても

打ち解けてからは、何かある度にこんな調子だけど
一応は此方の言い分も聴いてくれるからね、このまま適度な距離感を保てればいいけど

そう思いながらも、ドキドキする気持ちを抑えるのには苦労する
普段の子供っぽい雰囲気とは対照的で、こういう時に見せる色香は一種独特なのだ
ちょっと気を抜けば、此方が引きずられそうになってしまうからタチが悪い
色事には…まだちょっと疎いコノ僕でさえ…

コレは元気になった後が大変だ、外の悪魔達からジェイルを守り切る為には
並大抵じゃない苦労が必要になるだろう…と思うと、正直頭が痛いくらいだ

大人しく僕から離れて、再び魚達と戯れだしたジェイルは、それでも機嫌は良さそうで
今度はイルカの群れに興味を持ったらしく、少し離れた場所でピンとたった尾が、フルフルと揺れていた

「何だ…出迎えがないと思ったら、魚臭い事になってるじゃないか………」

不意に聞こえてきた、不機嫌そうなミドルトーンの声に、ルークの巻き毛はザワリと逆立つ
何時の間に部屋に入って来たのだろう?その気配に気がつく事も出来なかった
イルカと遊ぶジェイルから目を離して、部屋の戸口を見れば
黒衣の長身の悪魔が、煙草をふかしながら佇んでいる
ゾクリとする様な視線で此方を見下ろして…火炎系悪魔のソレにはやはり慣れない

「………お勉強の時間だジェイル、玩具は片付けろ、それと水妖のガキは席を外してもらおうか?」

高圧的な声でそう言われてしまえば、此方は何も言えない
殿下の側近中の側近えある情報局長官に、異論を唱えられるワケがないじゃないか…
その上水面下では…僕等水妖系悪魔と、何かと対立関係にある属性だ
小さな揉め事が、属性間の大事に発展する危険性を考慮すれば、ますます波風は立てられない

ルークは黙って術の展開を閉じると、部屋に広がっていた海は一瞬で消える
残念そうにソレを見上げるジェイルを宥めると、慌てて魔法球を回収してしまう
そう…彼が、僕以外この部屋に入る事を許されている「二名目の男」
しかも、先程まで居た閣下とはワケが違う…確実に肉体関係があるとしか思えない相手だ

「じゃぁ…僕は少し出てくるから………また後でね」
「うん解った、終わったら連絡するよ」

僕にヒラヒラと手を振りながらも、不躾な訪問者を出迎えるジェイルに、憤りを感じないワケではないけれど
全ては…僕の魔力が低いから悪いのだ、力が無いから彼を護りきれていない
例え相手が魔界のツートップでも、ガツンと言うべきなのだ…「役目」を遂行する為には

でも…ソレが出来ない自分が歯痒くて仕方がない…
ジェイルは僕の事を「強い」なんて言うけど、強くなんかないよ
結局はこうして逃げ回っているんだから………

そう思えばこそいたたまれなくて、ルークは足早にその場を後にした

※※※※※※※※※※※※※※

パタパタと遠ざかってゆく足音を聞きながら、エースはニヤリと笑うと
目の前の少年を抱き寄せて、深々とキスをする
ジェイルもそれを拒まない、直ぐにその背に腕を回して縋り付くと、濃厚なソレを余さず味わう
既に火照って、柔らかくなりかけている肌に触れて、エースは失笑する

「なんだ?ガキ同士でじゃれ合っていたのか???」

エースの無遠慮な手が、直ぐさま露出度の高い衣装を剥ぎ取り
ツンと上を向く胸の突起を、やわやわと撫で上げるのだが
少し膨れた顔で、ジェイルは相手を見上げ、濡れた声で答える

「………だったら良いんだけど、今日も不発だよ、全然乗ってきてくれない…
あんなに身持ちが堅くて、クソ真面目な悪魔は初めてだよ………」

そう言って残念そうで、何処か哀しそうな不満を漏らす少年を
更に強く腕の中に抱き寄せると、エースはじっとりと好きな場所を愛撫しはじめる
小さな吐息は、直ぐに喘ぎ声にチェンジすると、もう止まらない

「俺が居るからいいじゃないか…コッチはガキに頼らなくても退屈しないだろう?
しかも…よりによって水妖のガキを連れてくるとは、俺に対する牽制か???
全く、ダミアンもイヤミな態度を取れる様になったモンだぜ………」

不機嫌な口調でそう続けるエースに、ジェイルは弾む息の下からも答える

「違うよっっ………ルークはそんなんじゃないよっっ………
一度、ルークの音を聴いてみたら解るよ……エースとは違うけど凄いんだから」

ジェイルが、あの水妖のガキを褒める度に、俺はムシャクシャして仕方がない
養い親のダミアンは別として、コレは俺の獲物も同然なのだから
他のヤツに「特別な好意」を持っている事実が気に入らないのだ

それも…火炎系悪魔にとっては、最もイケスカナイ水妖のガキとなれば尚更だ

お前があのガキを庇えば庇う程に、俺がイライラする事に
気がつけないのは仕方がないのか?コイツもお子様だからな………

頭を擡げ始めた前を、すこし乱暴に扱き上げてやりながら
性感帯の耳を舐め上げてやれば、ソレだけでも、はちきれそうじゃないか
あのガキを想って、貯め込んでいたんだろう?
俺にシてもらうまで、欲情しきった身体を持てあまし、痩せ我慢をしてたのか?

そう思えば…玉砕続きの弟分を、不憫にも思うのだが
この変に飢えきった身体のエロい反応も、悪くはないのだ、何時もより過敏な分尚更に

「ふん、お前だけで堕とせないないなら…俺も協力してやろうか???」

ムカツク相手だと言うのに、何故そんな言葉が出てしまったののは
悪銭苦闘するジェイルの様子に同情してか?いや便乗した冗談?のつもりが半分で
残りは、身持ちの堅すぎのガキに対しての嫌味、侮蔑の意味も勿論含んでいたのだが

苦笑いを浮かべる俺を、ジェイルはキッと睨み返すと、強い口調で吐き捨てた

「先に手を出さないでよっっ!ルークは絶対に自分で手に入れるんだからっっ!」

少しばかり怒っていても、そんなに切羽詰まった目を向けられれば
ますます意地悪もしてやりたくなるじゃないか………可愛いヤツだなお前は
言葉とは裏腹に、ヒクヒクと俺の手に縋り付いてくるナニを、更に刺激してやりながら
さっきまでココに居た、感じの悪い方のガキの事を考える

あの坊主の身辺調査は、情報局にも上がっている、俺自身も追跡調査を加えた
いかにもダミアンの好みを抑えた容姿も、事前に写真資料では確認しているのだが
俺とアイツは属性間の相性が悪すぎるのだ、本能的に火炎系悪魔を警戒するガキの顔には
今の所可愛らしさを感じる事は出来ない、いくらソコソコの美形でもな

一度くらい、直接に接触する必要があるのかもな…水妖のクソ餓鬼とは思い込まずに
ジェイルの「玩具」として安全かどうか?、確認はしておいた方が無難だろう?
コイツの出自の特殊事情を、まだ公には隠しておく必要がある内はな…

俺の明確な返答と約束を待とうとしても、身体の方はそうもいかないのだろう
震えながら絶頂を迎えてしまうジェイルの身体を、抱き締めると、そのままジェイルの痩躯を抱き上げる
お楽しみはこれからだ…冷たくて固い床の上じゃ流石に辛いだろう?
ベッドでしっかり犯してやるよ、暫くは自分で抜く必要もないくらいたっぷりとな

しがみついてくる猫の背と頭を、やわやわと撫でてやりながらも
偶然を装った、ガキとの接触方法を考える俺は、よほど悪い顔をしていたのだろうか?
不安気に此方を見るジェイルの目は、何時になく不信感でいっぱいだ

「心配するな…お前の玩具だろ?先に味見したりなんてしねぇよ………」

じっとりと俺を見る仏頂面のその頬に、優しくキスをしてやれば
半信半疑ながらも?俺の言葉に安堵はしたのだろうか?
何時も通りの喉を鳴らす音と振動が、ようやく此方側にも伝わってくる

悪魔としても、拷問官としてもやや締まりは無いが
解りやすいコレがないとどうにも調子が出ない、コイツを抱くときは

ベッドに降ろした猫を組み敷くと、一気にパンツを下ろしてしまう
一応は潤滑剤を塗ってはやったが、柔らかくなりすぎだなお前のココは
可哀想によっぽど欲求不満だったのだろう、それまで弄ってもいなかったソコは
俺の指を嬉しげに飲み込んで、ソコだけが別の生き物の様にうねっている
早くその先の快楽を寄越せ!とでも言わぬばかりに

「………絶対、約束だからね…エース…」

それなのに、こんなにもグズグズドロドロで、俺のナニを欲しがっているクセに
いきり勃った俺のソレに貫かれても尚、譫言の様にジェイルは「約束」と繰り返すのだ
その柔らかい身体を折り曲げて、角度を変えては、息も付かさずに追い込んでやっても
中の良い所ばかりを、徹底的に刺激してやっているのに…それでも行為に集中出来ないか???

そこまでコイツに愛されている、あの朴念仁のガキは、やはり気に入らない

ならば俺も答えてやるだけさ…「安心しろ」と…今だけはな
確実に「約束」を守れるかどうか?は二の次だけどな

何度目かのソレを吐き散らす猫の内側に、俺も劣情を叩き込みながら、半泣きの面を見下ろし考える

本当に罪作りな淫乱猫だなお前は…この強烈な色香に惑わされない、アイツの方がどうかしている
砂漠を旅する悪魔を、片っ端から誘惑しては引っ張り込み、喰い散らしていた魔物と言う浮き名も頷ける

【色好みのスフィンクス】の本気のお手並みを拝見しようか?と言う所だな…

だが考えてみれば…コイツは今迄、与えられてばかりの環境だったからな
少し誘えば、惑わされた相手の方から、コイツの手中に転がりこんでくる
そんな駆け引きしかなかったのだろう?コイツの対魔関係から察するに

だからだろう…幾ら肉体関係はあっても、個悪魔に対する執着心が薄く、淡泊なのだ本来は

そんなヤツが、自らの欲望を抑制してまで、相手との関係を守り、執着する事自体が、珍しい事なのだ…
拒絶されて居るワケでも無いのに、思い通りにならない相手に、苛立って居るのもまた微笑ましい
一連の態度から考えるに、マトモに他者かを想うのは、初めてかもしれないな…

相手に若干の不満はあるももの、コイツとあのガキとの距離が縮まれば良いとも思う
ジェイルのささやかなワガママが、適う事を願いながらも

やはり何処かに、嫉妬心はあるものだと、エースはひっそりと自嘲した




続く


なかなか進みませんが…お守り役のルークちゃんかなり苦戦中

そりゃ魔界のツートップに意見なんて出来ませんよね…おっかなくて、後が怖くて
その上、護ってるつもりの可愛いにゃんこに、実はガッツリ狙われてるし
その視線にすら、あんまり気がついてないのが…失礼ながらヌケサクで
生真面目・奥手過ぎて、歯痒いですが…こう言う萌えも、たまには悪くないしょう???

ガッツリ?エログロばかりじゃなくて、こういう気持ちもたまには大事にしたいかな…
オクテなキャラを書く時の醍醐味ですね、ははははは(^_^;)

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あきゅろす。
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