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【Gt3兄弟@】
『ロクスタの薬壺』 後編(完結) R-18 X×L

「じゃあ…こうしよう、専用の人魚と水蛇がまだ持てない上に
水妖の医者にかかれないなら、僕が君の【主治医】になってあげるよ
君にとって利用価値があるから、今は殺せない…使用魔の交代が完了するまで
そういう筋書きなら、君の一族も納得するんじゃないかな?」

「でも………」

「遺された彼女達の寿命が尽きるのは、後どれくらいかかるの?」

「契約者が死んじゃたから…残りの寿命に関係無く、多分20年くらい…」

「それくらい時間があれば、僕の【沈黙】も証明出来るし
他の水妖からの信頼も、獲得出来るかもしれないでしょ?」

拘束が少しキツすぎたのと、彼が必死に暴れたせいだろうか…
少しだけ血が滲んでいる彼の手首を取ると、僕の爪で少しだけ切らせてもらう
溢れ出す血を、そのまま僕の【魔女の紋章】の上に塗りつけると
まだ震えるその手をそのまま、その上にあてがう

「入れていいよ…ココに君のシガテラを、【魔女の誓い】だけじゃなくて
君のシガテラの事も漏らしたら、君の毒が僕を始末する様に…
ここだけは無防備だからね、誓いをやぶったらと言う限定つきだけどね」

【魔女の紋章】の意味は知っているのでしょう?
それでも…君と君の一族には信用してもらえないのかな?

「何で…何でそこまでするの?」

「うん…愛してるとか?そういう感情とは、少し違うんだけど…
個悪魔的に君が、気に入っているからかな? ほらこの間もそうじゃない?
徹底して関係無い奴は、戦いに巻き込まない、君の気配りには感心したからね、
それだけじゃ駄目かな? 文化局の僕は、戦闘要員として戦場に立つ事はあまりないけど
軍事参謀が君みたいな奴なら…きっと下の兵士は安心だろうからね…」

水妖の君達程?眷属意識は高くは無いけどね、鬼族は傭兵稼業が多いからね
コチラにとっても先行投資みたいなモノだよ
意味のあまりない悪魔同士の争いで、どちらかが死ぬのも馬鹿らしいからね

そう言って巻き毛が張り付いた額に、キスを落とすとと
返事の代わりに、刺青の上のルークの掌が、じわじわと熱くなるのが解る
肌の上に滴った血液が、発光しながら深い青色に変化すると
僕の紋章の中に吸い込まれてゆく…いや注入されていると言った方が適切か

【呪詛】を追加される光景も感覚も、決して気持のいいモノではないけれど、
ソレで目の前の彼が掟に縛られず、これ以上無駄に争わないで済むのなら…
これくらいの事はどうと言う事は無い、魔女のソレを受けた時と同じくらいにはね

「Verschmelzung………」

小さな呪文と共に、皮膚の上に…ギルドの紋章の上に現れたのは、小さな青い竜
竜はそのままスルスルと紋章に絡みつくと、元からあった図案と同化して
そのまま固まって動かなくなった、シガテラの呪詛が紋章と同化したのだろう
その様子を覗きこんでいたルークが、安定した図案の上にキスをする

どうやら作業は完了らしい、吸収しきれなかった血を丹念に舐めとってくれる
その仕草がまた強烈な色香があって、この時点でもう一度ゾクリと来ていた事は
今後の信頼関係の為にも、黙っていた方がいいのだろうね…
薬湯で湯が濁っていて、中が見えなくて助かったかもしれない

その間、僕も彼の手を取り傷口に唇を寄せ、舌を這わせながら治癒魔法を流しこんでゆく
手枷の痕も全部消してしまおうね、綺麗な肌に、こんな傷痕は君には似合わないからね

「それと…コレは君が、嫌じゃなければのお話なんだけど…」

君の領海の採集できる、海洋生物の【毒】を少し分けてもらいたいかな?
いやね…人魚や水蛇の魔女から購入すると、結構高くついてね
自分でも採集には行くんだけど、水妖じゃない僕が、集められるモノは限られてるし
僕が毒を採集するには…その生物を殺していしまう確率が高いでしょ?
でも…君ならもっと、簡単に平和的に分けてもらえるでしょ?
ソレをそのままこの店と、研究室に持ち込んでくれると…助かるのだけどな?
勿論それなりの【お礼】はするよ、君の治療行為も含めて

「そんな事でいいの?」

採集行為で命を奪いたくない…と言ったのが、彼のツボだったのか?
キョトンとした顔が、僕を見上げているので、巻髪を撫でてあげながら続ける
まぁ…楽に水中に行ける、君には採集の難しさは解らないだろうけね、
君がこの契約が不釣り合いだと感じるなら、毒の提供だけでも充分に助かるんだよ
と囁けば…無防備に抱きついてくる、その仕草がまた妙に可愛らしくて

………つい我慢出来なくなった僕は、バスタブから彼を抱き上げると
そのまま僕の部屋に連れてゆくと、ベッドの上でもう一度その身体を貪ってしまった

※※※※※※※※※※※※※※

濡れたままの身体をベッドに押し倒し、抱きしめても彼は抵抗はしなかった

鬼の僕に喰われるとでも思っていたのか?一度目はあまり気持ちよくはなかっただろうから
僕より彼をちゃんと良くしてあげてないとね、まだ恥じらう膝を優しく開くと
女性にするのと同じくらい、前を丁寧に舐めあげてあげる
同時に後ろもマッサージしてあげながら、揉みほぐしてあげる
ダチュラのエキスをたっぷり入れた潤滑剤だからね、普通より気持ちがいいでしょ?

「ああっ…やぁん…ああっ」

甘い声が心地いい… 彼の手が僕の頭を掴んでいる
嫌なら押し返せばいいのに…ソレをしない所を見れば、悪くは無いでしょ?
太ももにもキスを落としながら、僕は一応彼に忠告する

「シガテラは、なるべく出さないでね、僕を殺せない上に、下手すると衝動を引き起こすから」

角に封印具をつけ、制御薬はたくさん服用しているのだけれど、君の媚態は艶めかしすぎるから
変な所でスイッチが入ってしまっては、まずいからね… そう付け加えると
一瞬ヒクリと彼の身体が震えるが、汗腺から微量に染み出していたらしい甘い香りが止まる
殺すつもりがなくても、こういうシーンでは、媚薬的な意味合いで、自然に染み出すんでしょ?
人魚の魔女や娼婦達と一緒で?

意識的に、素直に僕の言う事を聞いてくれるのが嬉しくて
より丁寧に愛撫してあげれば…さっきとは全然違う、内側の柔らかさと熱さが
僕の指をキュウキュウと押し返してくる

あっけなく僕の口に吐き出してしまうと、すっかり身体は溶けきっているようだ

彼の来店に備えて、竜王の文献は随分読んだけど、その中に
竜王の肉を食べて、死ねない身体になった愚かな人間の男の話があった

男は金の力で手に入れた人魚だけには飽き足らず、彼女の解放と引換に竜王に関係を迫る
慈悲深い竜王は、一度だけならと男と身体をつなぐが、男の策略に嵌り
海への帰り道の全てに、弱点である尖った石を撒き散らされ、男の虜になってしまうのだ

更に不老不死伝説を信じた、その愚か者に、肉をえぐられ瀕死の重傷を負うのだが
最終的に、その優しい竜王は、他の竜王に救出されて、
愚か者は【不死】にはなったけど、【不老】にはならず
全ての水と水生生物達に、【敵】とみなされ、悪意を向けられる事になる、
しまいには…飲み水もろくに摂取出来ずに、干からび、永遠に乾き苦しむ【罰】を受けるのだが………

竜王を、悪魔を尖った石ごときで、閉じ込められるとは考えにくいけど
ちょっとだけ…その愚かな人間の気持ちが解る

きっとその竜王は、彼の様なタイプだったのかもしれない…
思わず閉じ込めて、自分のモノにしたくなる気持ちも分からなくはないな

それくらい彼の痴態は官能的な、中毒性があった…シガテラの催淫作用など必要が無い程に

脚を更に広げて、ヒクつくソコにソレをあてがえば、首に手を回し抱きついてくるの可愛らしく
僕は深くキスをすると、一気にその身体を貫いてあげれば、痩躯がビクビクと跳ね上がる
その甘い声と、振り乱れる髪と、艶かしくくねる身体が、ただ色っぽくて…

気がつけば…手加減を忘れていたかも、負傷者で僕の患者さんになったのに

強めの治癒魔法もかけてはあげたけど、キツイ思いをさせてしまったかもしれないね

※※※※※※※※※※※※※※

「立てないなら、朝まで泊まっていく?」

強く抱きすぎたのだろうね?ぐったりとシーツに沈む彼の背中を撫でながら
休んで行くように、提案はしたのだけれど

「流石に朝まで何度も抱かれたら、身がもたないから…
それに、もう一度叔母上の店に行って、御機嫌伺いくらいしなきゃ、また今度ね」

と言って身支度を調えると、そそくさと逃げられてしまった まぁ懸命な判断だよね………

彼の気配が、完全に店から遠のいた事を確認してから
僕は天井近くのカーテンの隙間に呼びかける

「メリジューヌ…契約は無事に完了したよ、コレで貴女も満足ですか?」

こぽりと水溶性の音がすると、まるで水の中を泳ぐ様に
正面を向く大きな単眼を持つ、掌大の紅い金魚が、カーテンの隙間からゆっくり表れる

『最後のアレは余計だけれど、概ねコチラの希望通りね…ゼノン
愛する甥と争う道を選ばなかった事と、主治医を引き受けてくれた事に、深く感謝するわ…』

通話機能も備えたソレは、生きた偵察機の様なモノだ
水蛇の魔女メリジューヌ…さっきまでココに居た青い悪魔の、叔母に当たる女性だ

『水都には私も…いや私だけじゃなくて、水妖の魔女全てが掛け合うから
あの子の呪詛を受けた証拠を、紋章の記録を、もう少し撮らせてもらえるかしら?』

「ええ…お好きなだけどうぞ、魔女連が、味方になって頂けるなら僕も心強い…」

ふわふわと空中を泳ぐ金魚が、僕の胸の刺青に近づくと
その大きな目でフラッシュを焚きながら、カシャカシャと記録写真を撮っている音がする

もうすっかり身体に馴染んでしまったので、特に違和感はもう感じないが
濃いブラウンのヘナの染料と魔女の血、それに呪いを混ぜたモノで彫り込まれたギルドの紋章に、
巻き付く様に追加されたルークのシガテラの青は、やたら発色が良いけど…
不思議と前からあるソレと上手く馴染んでいる、やはり彼が人魚の血統だからか?

「メリジューヌ、少しだけ、質問したい事があるんだけど…いいかな?」

『答えられる範囲であれば、何なりと』

「彼は何故?後継者争いに参加したんだろう?
候補者同士の力の差がありすぎたり、権力も争いも好まない場合は
辞退する事も出来るんでしょ?彼なら進んでそっちを選びそうだけど?」

『ああ…その理由なら簡単よ、ルークはね、あの水晶宮で育ったから…』

あの子の母親は、妹の人魚ヴィヴィアン…
魔力は低くて、占いが得意だった魔女、ここまでは説明したわよね?
公爵家の侍女に上がってすぐ、あの子を宿して…側室になったものだから
正妻様とソリが合わなくてね…それに身体もあまり丈夫ではなかったから
あの子が物心つく前に死んでしまって…遺されたルークもお屋敷では窮屈でしょ?
そう考えたのか?公爵様は、ルークを水晶宮の女達に育てさせたからね
士官学校に上がる前までの、短い間だけれど…あの子にとっては故郷みたいな場所よ
後継者争いに参加したのも…権力云々よりも、水晶宮を御長男に渡したくなかったからでしょ?多分?
あの子が小さな時、世話になった人魚も水蛇も、まだ少数だけど残っているから…

「成る程だから…前任者の父上の遺された女性達に、気を遣っているんだね
契約者の近親者でも【血の治療】は完全に出来ない事は…他の水妖は知っているの?」

『いくら水妖でもそんな事まで気を遣う子なんて、早々居ないから、半々って所かしら?
私や水都の医者に相談すれば、「早く自分専用の女を持て」と注意され強要されるダケだから
言えなかっただけよ…本当にお馬鹿な子なんだから………』

「そういう所が、彼らしくて良い所なんじゃないのかな?
彼専用のスタッフが出来る迄だけど、主治医は引き受けたよ…間違い無く
ただ…秘密主義の水妖の治療データは少ないから、
治療には、貴女からの情報提供も不可欠だから、宜しく頼むよ
それと…多分これから彼がそちらに行くけど、ダチュラとマチンの解毒だけはしておいて
薬物が効きにくい体質でも、アレだけは、時間差で効いてくるかもしれないからね」

『随分とお高い媚薬も使っていたのね、解ったわ休む前に、飲ませておくわ』

そこで通信が途絶えると、金魚はユラユラと女主人の元に帰ってゆく
紅い尻尾が窓をくぐり抜け、暁の空高く渡ってゆくのを見送ると
カランカランと鳴るのは、店の玄関のベル どうやらココの女主人もお帰りの様だ

「お帰りなさいカリティ、夜会はどうでしたか?」

「どうもこうも無いわよっっ 喉からの摂取は、【薬壺】で防げても、
紋章に直接毒と呪いを受けるなんて、私は聴いていなかったわよっっ
ソレに何なの???あのお風呂場は?何時の間にあんなモノを…」

「観ていたんですか………」

「メリジューヌと一緒だったからね…預かり物の弟子を心配すれば当然でしょ?」

ギロリと睨まれる視線は、珍しく怒気を含んでいる
計画を正確に伝えれば、反対されると思って黙っていました、
ごめんなさい…酷く心配させてしまったみたいですね…
ツカツカと僕に近づくと、薬品焼けを隠し、夜会用に美しく飾られた爪が、僕の喉に食い込む

「Annullamento」

彼女がそう唱えると、見た目は【細身の香油入れ】を思わせる壺が
僕の喉の中から出現して、彼女の手の中に収まる

毒使いの間では【ロクスタの薬壺】と呼ばれる、体内に仕込む特殊な魔法具だ
服用したモノを身体に取り込まずに、一時的に貯め込む為のもの

日常から、自らも様々な毒物や薬を試し、ある程度の耐性はあったとしても
相手や心理状態によって、コロコロと成分が変わる【シガテラ】については
防ぎ様が無い、手段としては、本魔に毒の分泌を抑えさえる薬を与えるぐらいが、関の山だから
しかも…ルークのソレは、巨大な海竜を一瞬で仕留める程に強力だから
【毒使い】の僕にだって、生身では太刀打ち出来ない

だからカリティにも、外側から協力してもらうしか無かった…
多分?この件に関しては僕からは直接話してはいないけど、あの【不良天使】も関わっているに違い無い
並大抵の薬壺では、早い段階で底が腐食して、溶けてしまったことだろう
まぁ…僕を殺す事に、消極的だったルークの心理状態もあるのだろうけど

取り出した壷の中に残る毒を、チャプチャプと振って確かめると
彼女はその中身を、ウミユリの標本瓶にゆっくりと注ぎ込む
黒い毒は、瓶の中の海水に触れると、青白く変化する
その中から尾鰭の長い小さな魚が数匹発生すると、揺れる花の間に遊び始める

「綺麗ですね…」

「海竜のシガテラは、この花には逆に良いそうよ…研究の対象には出来ないけどね」

発光する花を見下ろす、年上の師匠の顔が、何故か少し寂しげに見えて
僕は慌てて、背中から彼女の身体を抱きすくめる

「御心配をかけてすみませんでした、すぐに浴室も片付けますから」

彼女の観ていない所で、全てを終わらせてしまおうとした僕がアサハカだったな?
ここは素直に謝っておいた方が良さそうだ、これ以上、ご機嫌を損ねないウチに

「すぐに片付ける必要なんてないわ、折角なら私とも遊んでもらおうかしら?」

「はて?貴女にアチラの趣味があったとは?記憶には無いのですが?」

「誰が拘束されたい等と言った?お前がアレを付けるにきまってるでしょう?」

やれやれ…目が戦女神だったと言う?その時代に戻ってはいませんか?
でも…今回は僕が全面的に悪いから、逆らわない方が身のための様だ

「わかりましたよ…お師匠様…失礼、女王様のお気に召すままに」

普段の研究着とは対照的で、露出度も高く、魅惑的すぎる夜会の衣装の彼女に
傅くのも悪くは無いから、僕は慣れた手つきで彼女の顎を上げて唇を貪る

「それにしても…あの子も可愛い子ね、また来るのなら、私も味見してもいいのかしら?」

「あまりオススメはしませんよ、貴女もその薬壺が必要でしょうし…」

何よりも貴女のやり方は荒っぽいから、彼の身体じゃ持ちませんよ
賢者殿か、僕、ソレ以上の体力のある男じゃなきゃ…貴女の相手は務まらないでしょうに?

「失礼な言い草ね…猛獣か何かか?私は?」

「こんなに綺麗な野獣になら、喰われてもいいと思ってますよ僕は、ちょっとした弟子のヤキモチですよ」

そう言って、僕はもう一度彼女とキスをすると、その身体を抱き上げる
文化局には…今日は出勤出来ないと連絡を入れなきゃいけないね



end


久しぶりに【鬼畜和尚】が書きたかっただけでしたが、思ったより甘甘に?

参謀の御発生日の直後だと言うのに、なんつーモノをUPしているのでしょう(^_^;)

天使の方だけじゃなく、人魚の方にも受難の相が、やっぱりこのサイト内の扱いは酷いな(;´Д`)

ちなみに作中に出てくる植物は、全部毒草なので、真似しない様にね

ウミユリは…実際は触手みたいなイソギンチャク?なのですが
結構種類によっては綺麗かも? 実際のユリの花とは似ても似つきませんが
なんであんな学名がついたのかな? 化石マニアが一度は憧れる奴ではありますが

魔界のソレは花の百合に近い感じ、ガラスの水中花みたいなモノと思ってください

ロクスタとは…皇帝ネロの庇護をうけ、その母親アグリッピナの陰謀の影で活躍した
有名な女毒使い・薬師です、毒使いの魔女の総称として使わせてもらいました(^_^;)


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