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【Gt3兄弟@】
『シガテラのドラジェ』 後編(完結) R-18 JAL三つ巴 痴話喧嘩⇒円満解決? 過去話有り

「おいおい…そんなに震えるなよ、アレに押し込んだ時の威勢の良さはどうしたんだよ…」

ベッドに引き摺り戻せば、流石に諦めがついたのだろうか
大人しくなったジェイルは、俺の下でガタガタと震えている
拘束されたまま、半泣きで見上げるその目を見下ろすと
ヤバイ…もっと嬲りたくなるじゃないか、煽ってるのか…お前は?

トランクに詰め込む時は、大暴れの末に、反撃で部屋は半壊するは
俺も若干の手傷を負う程に、大変な騒ぎだったのに…
随分しおらしくなったモノだな、そんなに辛かったか?可哀想にな…

怯えからか?完全にねてしまっている耳を、はむはむと刺激してやりながら
尻尾の奥をいきなり弄っても、指への抵抗は殆ど無い
ああ…相当頑張ってもらったんだな、中までグチャグチャだな
この調子なら…身体を解してやる必要も無いな…

そのまま…少々乱暴に俯せにすると、尻尾を引っ張り上げて腰を上げさせる
様子が逐一ルークに見える様に押さえ込めば、心配そうに様子を見る視線も感じるだろ?
モニター越しに散々コイツの鳴き声を聞いてたせいか
既に昂ぶっていたナニを叩き込んでも、飢えきったソコは簡単に受け入れる

「んっんんっーぐっ…んっ」

触ってもらえなかった中のイイ所を重点的に嬲られ、細い身体が弓なりに跳ね上がる
ああ…気持いいんだろ?でも辛いよな?このままじゃ…気が狂いそうだよな
ほら…せっかく観客が居るんだから、もっと見せつけてやれよ
サービスで腰も振ってやれよ、お前の為に本気で怒っているんだからアイツは

ちょっと………ソレを外してくれるんじゃ無いの?その為に来たんじゃないの?
更に追い込んでどうするの…これ以上ド鬼畜スイッチを入れてどうするのっっ
もう限界で泣き喚くジェイルを、さらに手酷く嬲り続ける行為を見せつけられ
いい加減に堪忍袋の緒が切れた、バリバリと力の波動が上がってゆく
こんな簡易結界なら、俺だって破ろうと思えば出来るはず…とりあえず止めなきゃ

「ほら…見えるか?ジェイル? お前はルークのあの姿を見るのは初めてだろ?」

更に奥を抉る為に、背中に回ったベルトを引き掴み、細身の身体を引っ張り上げる
泣きながら喘ぐその目にも、何時もとは違うその姿は映っているはず
俺に対して怒り狂ってる、お姫様の目も… ルークには聞こえない様な小声で更に囁く

何だかんだ言ってもお前には甘いから、アイツは本気で怒ったりしないだろ?
良い機会だからよく見ておけよ、綺麗だろ?お前の為に怒ってるなら尚更に

本来は同族以外には、冷淡な感情しか持たない水妖でありながら
ルークは比較的他族にも友好的な方だが…それは相手が親しい程に?
アイツが譲り折れているからこそ、そう見えているだけかもしれない…

それでも、他者の為に…地上では消耗するはずの、半竜体を晒す程怒り狂う相手は
いくらお優しすぎる参謀長殿でも、限られてるだろうに

「だからな…いくらお遊びでも、そこまでお前を大事にしているアイツを
中途半端な危険に晒した事に、カチンとくる俺の気持ちも解るだろう?」

技術として教えたのは確かに俺、だが…こうも使い所を間違えられては
再教育してやるぐらいしか、方法が無いじゃないか…
そう言って、頸筋を丁寧に舐め上げててやれば…
特性のディルトに封じられ、他には言葉も飛ばせない『心音』が弱々しく返ってくる

『ごめんなさい…俺が悪かったから…もうしないから、もう許して、許してよ』
「ちゃんと後で、ルークに謝れるな…」

ボロボロ泣きながらも、コクコクと頸を振るジェイルに満足した俺は
そろそろ終わりにする為に、チロリと前を見る、ああ…怒ってるな…もの凄く
丁度いいタイミングで、俺の結界も破られるかな?
結界に小さな綻びが発生する度に、ピキピキと金属音がする、
まぁお姫様もちょっと熱くなりすぎだぜ…後で殴らせてやるって、言っただろうに

もう我慢出来ない…あの腐れ外道…今すぐド鬼畜をブン殴る…
戦闘用のソレじゃないのに、なんでこんなに強力なんだよ…でももうすぐ破壊出来る
バリバリと上がる俺の魔力の反動で、部屋が、空間全体が、振動し震えていた

「まぁ…そう熱くなるなよ、お前も悪魔だから
コレくらいの行為は、直ぐにすると考えたんだがな…」

ニヤリと笑いながらそう呟くと、後ろからジェイルを抱えたまま
その大きな手が前に回り、胸元でクロスしているベルトを掴み上げる
もう片方の手が、立ち上がる乳首を強く刺激したかと思えば
滅多に伸ばさないその爪が、ガシリとその皮膚に食い込み、そのまま左から右へギリギリと切り裂いてゆく、
滴る鮮血がその手を伝って、ポタポタと下に流れ落ちてゆく

「んんっーんっー」

一気に切り裂くより、数段苦痛を伴うであろうソレに
鋭い悲鳴があがり、大粒の涙があふれ出し…頭を振り乱し痙攣ているのに
ド鬼畜様は、更に喜んでいる御様子…嬉しいワケないでしょっっそんな事されてっっ

バリンッと音がして、結界が崩壊するのと同時に
爪を伸ばしきった俺は、とりあえず宣戦布告の一撃を繰りだそうとしたけど…

ゴトンッと音がして、目の前でその口を塞いでいたモノが外れ落ちる
同時に腕拘束の要所が、突然全部解除されて…
ソレを掴んでいたエースの腕から、ジェイルの身体がずり落ちる
ずっと前を押さえつけていたモノも、効力を失っているようだ

「まさか…ジェイルの流血が、解除の鍵だったの………」
「そう言う事だな…今回は、優しくしすぎた事が、仇になったな…」

あそこまでお膳立てして、お前がそういう行為に走らないとは…
そこまで考えてなかった、俺の判断ミスもあるけどな

そう言ってニヤニヤと笑うエースの頬には、弾け飛んだ結界の破片で出来た切り傷が
防護魔法が織り込まれた軍服からはみ出した場所にも、同様の傷が刻まれているのに
無防備なはずのジェイルには、エースが付けた傷以外のソレは無い

気がつかなかったけど…結界破壊の余波が、一欠片でもジェイルに向かない様に
優先的に防護シールドを張っていたのだろう

何だか…色んな事が混乱してしまって、俺はぺたんとその場に座りこんでしまった

※※※※※※※※※※※※※※

「よしよし…辛かったな、お仕置きはもう終わりだからな…」

好き勝手な事を言いながら、ぐったりとするジェイルを撫で回し
汗ではりついてしまっている拘束具を、順番に外してゆくエースに、
半分意識が、ぶっ飛んでいるジェイルは、されるがままと言った感じだ
確かに俺の時みたいに…変な鬱血痕はついていないけど…
だからと言ってその行為が安全で、正当だとは到底思えないんだけど

ジェイルの体力消耗が激しすぎるのか? 胸に付けた爪痕が塞がらないな…
苦手なヒーリング魔法を掛けようとすれば、するりとルークの制止の手が伸びてくる

「火炎系悪魔に、ヒーリングの方は出来ないでしょ?俺に任せて…」

そう言うと自らの腕をズバリと切り裂く、黒い唇が自らの血を舐め上げ、ソレを口に含むと
そのまま、ジェイルの生乾きの傷口の上に重ねられられる
治癒魔法か?いや違う…何の力の波動も感じない、血液そのものに効果があるのか?
唇が触れた部分から皮膚が再生して、傷口が消えてゆく…最初から何もなかった様に

「えっ…お前、こんな芸当出来たのか?」

デーモンやゼノンが使う、治癒魔法とは明らかに違うソレを、
つい無意識に探るように見れば、酷く不機嫌な声が返ってくる

「何時も出来るワケじゃない…水の領域内で、魔力の充填が満タンの時だけしか出来ないんだ」

しかも…自分自身の傷には有効ではないし、使える相手は、限られているからね…

ルークはそう言うと、腕の傷口からもう一度血を拭い取り、今度は俺の頬の切り傷に、そっと口付ける
治癒魔法によくありがちな?温かい感触ではなく、ひんやりとしたソレは、不思議な感触だったが
切り傷が嘘の様に消えてしまった、痕跡すら残さずに

俺が傷のあった場所に、触れようとしたその時
それより先に、勢いよく張り手が飛んできた、傷が無くなれば、遠慮などいらないと言うばかりに

「おいおい…随分なご挨拶じゃないか」

平手だった分、拳程の打撃のパワーは無かったが
女の平手とは違うソレに、頬は軽く晴れ上がっているだろうな、そこを摩りながら相手を見れば
未だ興奮状態のルークは、フーフーと肩で息をしながら一気にまくし立てる

「殴らせてやるって、自分が言ったんじゃないかっっ
一体全体どういうつもりなんだよ!!!二度とこんな事をしたら許さない!!!!」

おまけに俺に平手を繰り出したまま、うつむいた顔を上げれば…
ゲッ………何だか解らないが…ボロボロと涙を流し、ガン泣きしてるじゃないか

「悪魔らしくない…言われなくても解ってるよっっ
余計な心配しなくても、破壊衝動が無いワケじゃないよっっ
ただもう二度と親しい奴を傷つけたくないだけ…それじゃ駄目なの???」

怒鳴り散らされるのではなく、突然泣き叫ばれる展開は、想定していなかったので、
コチラの方が、何だか面食らってしまう…
酷い目にあったのも痛い目にあったもは、お前じゃないじゃないか???

何だ?あの悪魔らしくない優しさや、行動パターンは、
何か特別な理由?込み入った事情でもあったのか?
いくら危険回避の予防線とは言え、やり方が少々乱暴で、性急すぎたのは確かだが…

「解った…とりあえず俺が悪かったから、頼む泣き止んでくれないか?」

返答に困ったとは言え、我ながら上手くない返しだったとは思うが
今は先に、ジェイルのケアをしてやらなければならない
口論している場合では無いので、仕方が無い…

相手もそう思っているのか?えずきながらもそれ以上は噛み付いては来なかった

まぁ冷静に考えれば…コイツだって、魔界では指折りの上級悪魔なのだから
少々【嗜虐癖】があった所で、早々?窮地に陥る心配も無いだろうか…
過保護で余計なお節介だった?かもしれないよな?

ソッチの意味で、もの欲しそうな面をしていたら、
有無を言わさずに、俺かジェイルが相手してやればいいだけの話か?
相手探しに苦労する人間じゃあるまいし………

密かにそう思い直した事は、ルークには言えない話ではあるがな

最後に…締め付けられていた下を外してやる時は、ちょっとの摩擦刺激でも辛いのか
ポロポロと泣くジェイルが…やっぱりいたたまれなくて

「それは…俺にヤらして…」

そう短く言うと、エースは意外にも簡単に譲ってくれた
なるべく中を刺激しないように、ゆっくりソレを外せば
ずっと不自然に堰き止められていたモノが、ジワジワとあふれ出してくる
鬱血したソレも痛そうで…俺はそっとそれに唇を寄せる

「ひっ…あっああっ」

震える足を抱き、舌と口で優しく刺激してやれば
後から後から溢れ出るソレは、まるで泣いているようだ
何時もなら…挑発的な媚態を晒す、ジェイルらしくもなく
俺の頭を挟んで、閉じようとする両脚を、優しく撫でてあげる

大丈夫だから、溜まったソレは全部吐き出していいから…

時間を掛けてゆっくりとケアをすれば、譫言の様に俺を呼ぶから
グスグスと泣いている顔を覗き込むと、すぐに抱きついてくる
あの件については、もう一度謝ってもらってるんだけど…再度何度も謝りながら

「あの事はもういいから、気にしてないからさ、俺の方こそゴメンね…
俺が普通に悪魔らしかったら、もっと短時間で、解放出来たかもしれなかったね…」

ヨシヨシと撫でてやる前髪の下の目は、こうやって見るとやはり年下の可愛い弟だから
ボロボロのクセに、もう一回ちゃんと抱いてとせがんでくるのが、可愛らしくて
身体に無理が掛からない範囲なら…と求めに応じていると
無防備な背後から、スルリとエースの腕が伸びてくる、呼んでも居ないのに…

「ちょっと…何してるのさっっ」

そんな気分じゃないし、向こうで好きなだけ酒でも飲んでたらいいだろっっ
と、キッと睨み付けても、少しも怯まないよな…このエロ大魔神が

「いいから続けろよ、暇でしょうがないから俺も混ぜろって、ちゃんと良くしてやるから」

縋り付いてくるジェイルの足が、がっちり俺の腰に絡んでいるのをイイ事に
好き勝手にセクハラしてくる、ド鬼畜がもう一名… 何なんだよ…この異常な状態は
せっかくリフレッシュ休暇に行っていたのに、
そんなの意味がなくなったくらい、へとへとなんだけど…俺…
はっきり言ってしまえば、ジェイルと同じくらい………
これ以上アンタ等のハード過ぎる倒錯世界に、出来れば付き合いたく無いんだけど

頭ではそう思っているのに…解っているのに…

エースの手に抱きすくめられると、勝手に熱くなる身体がうらめしい
慣れた手つきで後ろを解されてしまうと…血の臭いに酔っているのか?
何時もより数段大きなソレが、情け容赦無く俺の中に入ってくる

前は前で…さっきまでの疲弊モードが嘘みたいな、ジェイルに貪りつくされてるし

「やぁ…やめてよ、同時になんて無理っ……」

髪を振り乱す俺の顎を持ち上げると、エースは俺の唇を深く貪る
前に回ってきた腕が、俺の腰を支えてくれているから、何とか体勢は保っているけど
腰も腹の中も、もう溶けてしまいそうで…ゴメン…もう死にそうなんですけど…

ド鬼畜二名を同時に相手に出来る程、俺は頑丈に出来ていないのに…
でもこんな状態じゃ…逃げ出したくても、逃げられない…自分の屋敷の中なのに………

「中が凄い事になってるな…なんだ、コイツの拘束姿には興奮したのか?
それとも…自分もされてみたかったか?あんな風に?今度してやろうか?」

背後から俺をガンガン突き上げながら、エースがとんでもない事を言う
冗談でしょ?あんなの、ジェイルだから、何ともなかったダケで
俺があんな事されたら…両肩とも脱臼しちゃうだろうに…

とうとう完全に身体を支えきれなくなった俺が、前にへたり込むと、
待ち構えていた、ジェイルがギュッと抱きしめてくる

「あそこまで無理に絞めなきゃ…多分?大丈夫なんじゃない?」

あの…さっきまでの、切羽詰まった可愛らしい反応は、全部演技だったのですか?
そう思いたくなるほどに、ケロリと元の状態に戻ってしまったジェイルが
後ろのド鬼畜のソレと、絶妙に合わせた腰使いで、前も翻弄してくるので
俺は息をするタイミングすら、解らなくなってきた

オマケにまだ格納出来ず、垂れ下がる俺の鰭を、
ジェイルの舌が、チロチロと舐め上げて刺激してくる

「ルークのコレ初めて見たよ…綺麗なのに、しまったままなんて勿体ないな…」

やだって…やめろって、ソコは急所でもあるから、他より鋭敏に出来てるから…
ビクビクと震える俺の反応を、金色の瞳がニンマリと見上げてる

こんなの【詐欺】だ…最初からコイツ等に、填められただけだったのだろうか?
前も後も、やたらと連携の良いド鬼畜コンビに、嬲られ、搾り取られて
結局弄ばれるのが、俺の立場なワケ?この関係の?
やっぱり俺の相方は、両方とも最悪最低なのだろうか………

※※※※※※※※※※※※※※

「で…結局?今回のコレは何なのさ、俺に対する嫌がらせなわけ?」

事が終わって、完全に腰が抜けたらしい、ルークの肩を抱いていると
酷く不機嫌そうな声が、そう訪ねてくる

「いや…ソレもあるけど、ソレだけじゃ無いんだけどな…」

ちょっとは、「悪魔らしい加虐癖も持って欲しかった」
なんて言ったら、コイツはまた怒り狂うんだろうな…

「エースはね、ルークに【リバ】になって欲しかったダケだよ、心配だから…」

俺の反対側で、ルークの背中に抱きついていたジェイルが
間髪入れずに、さらっと【核心】を言ってしまうので、頭に軽く裏拳を入れる
どうして一言多いんだお前は…もう一度【お仕置き】されたいのか?

ルークが一番嫌がる【お嬢さん扱い】に、また怒るかと思えば
深いため息だけが聞こえる、癇癪は不発か?何だ今日はやけに大人しいじゃないか?

「二名とも何だか勘違いしてるみたいだけど、俺はソコまで弱っちくないよ…」

一応?アンタ等だから、【あんな行為】を許したワケで
他の何某にあんな事されたら、躊躇無く相手をぶっ飛ばすから…

「俺だって領地の他に、領域と領海を持つ海竜だから…
親族間の殺し合い無しに、ソレは無理でしょ?常識でしょ?」

エースが考えて居る程、慈悲深いワケでもなければ、弱々しいワケでも無い
でなきゃ【参謀職】なんて勤まらないよ、切れ者の情報局長官がらしくないよ
何トンチンカンな事を、考えてるのさ…

予想外にその反応は、静かなモノであったけれど
あの遠い所を見るような寂しげな目を、俺は見逃せなかった
「二度と親しい奴を傷つけたくない」さっきコイツは、泣きながらそう言った

ソレは…噂にに聴く【水妖の後継者争い】の事を指しているのか?
だとしたら…やっぱりお前は、優しすぎるだろうに…かなり危うい程に………

だけどソレは口にはしない、多分ルークが一番触れては欲しくな部分だろうから

※※※※※※※※※※※※※※

文化局に戻ったゼノンは、未処理の資料に目を通しながら、思い出していた
もう随分前の事だけど、僕は水妖の後継者争いの現場を目撃した事がある

魔女の内弟子だった頃の話だ、王都の程近く【幻惑の森】と呼ばれる場所で
内陸部の火山の裾野に広がるその森の中央には、外界から隔絶された巨大な湖があり
ソコは【水妖の決闘の場所】と言う噂は、魔女達から聞いていたけど…
それに鉢合わせる機会に、恵まれるとは思っていなかった

そもそも眷属意識が強い彼等は、同族間では殆ど争う事がない
あったとしても…パートナーの取り合いなどの些細なモノで、
命の奪い合いにまで発展する事は、きわめて希だ

それでも、支配階級の【領域・領海の相続争い】に関しては別だ

数の限られた支配者の座が、空けば…ソレにふさわしい血統と魔力の持ち主は
最後の一名が、勝者が決まるまで戦う どちらかが死ぬまで争う事も珍しくないらしい

戦闘要員よりも、内官・行政官の任につく者が、圧倒的に多い水妖らしく
大昔はその時期が来ると同族血族間の、隠れた場所での暗殺・謀殺が多かったらしいが

今は違う…【後継者争い】には、厳格な【作法】があるらしい 
候補者を中心として眷属内部の、無用な派閥争いへの発展を避けるために

あくまでも中立の立場を護る、水妖の【祭事官】から選出される
数人の勝負の見届け役【監視者】が見守る中
候補者同士が、一対一の決闘で戦う事が、慣例・条件となったそうだ

決着が付くまで、他の水妖は、候補者への手助けは禁じられている
候補者も助けを求めてはならない、実の親子・親族であってもだ
その代わり候補者自身の力であれば、どの様な手段を用いる事も許される

だからか…その決戦の場は、敢えて海から離れた【隔絶された場所】になるらしい

下手をすれば、自分のウィークポイントを晒す事になる程の
最終的な手段やワザ・決まり手を繰り出す事にもなるから
争いに無関係な第三者にまで、見せつけるモノでは無いからだ

勝負の始まりは…とても繊細なモノで、周囲の無関係者の確認から始まる
例え他族であろうとも、その場に居合わせる何てことは通常ない

たまたま僕が、強力な魔力隠しのローブを着用していた事と
普通だったら誰もよりつかないその森で、薬草の採集をしていた事
そして…候補者の片方が、若すぎる対戦相手を見くびっていた事
周囲を調べる必要も無く、直ぐに勝負のカタのつく相手と考えていた事による、偶然だろう

実際…僕も最初は、【後継者争いの決闘】だとは思わ なかったくらいだ

最終形態に変化した海竜に追いかけ回される、いたいけな【人魚】だと思っていた
それくらい…対戦相手の見た目は弱々しく、圧倒的に不利な状態に見えた
ところが…突然繰り出された波動の爆発に、少女の様な姿とは、かけ離れたソレに
彼女ではなく、彼もまた海竜の一族で、候補者の一名である事が解った

何故?最終形態にならないのだろう?
本来なら…無関係な僕が、ソレを覗き見する事は、非礼に当たる
速やかにその場を離れるのが筋なのだが…ソコは学者の性と言うか…好奇心に負けて、
つい成り行きを、最後まで観察してしまった コレも若気の至りと言うか

両者の力のぶつかり合うエネルギー波は、凄まじいモノだった
下手をすれば…この湖の存在自体が、吹っ飛んで しまいそうなくらいに
水妖である以上、お互いに水辺でなければ100%の力は出せない
故にこの場から離れられないのは、仕方が無いとしても
本来は広大な海に住む、巨大な海竜二名が、暴れ回れる程この湖は広くない

だからか…あの若い方の水妖は、竜になろうとしないのだ
戦闘の余波で、周囲を破壊し尽くしている事を、気にもとめない相手とは違って…
元々この湖に住む水妖と、水性生物に気を遣っているのだ

それに一見?ただ逃げ回っている様で、紙一重の所で避けている
小さな質量のまま、小回りの効く肉体を有効利用してる様にも見える

だが…水竜系の男悪魔と言えば、もっと戦闘向きな半竜体のはずなのだが

彼のソレはあまりにも無防備、武器の一部にもなりうる角も剣鱗も無ければ
鎧・装甲の代わりになるような、堅い鱗も殆ど無さそうだ
圧倒的な体格差故か?その波動の全てを受け流す事は出来ない…
徐々に傷ついてゆく彼の流す血で、湖面は赤く染まり始める
やはり…この勝負は、先により強い状態に、竜化した者の勝ちなのだろうか?

ところが…そう思った矢先に、突然巨大な竜が、咆吼を上げて苦しみ始める、
機械的な振動で痙攣したかと思えば…目・口・鼻・耳…全ての穴から鮮血が吹き出し、
鱗の間からもジワジワと体液が漏れ始めると、ショック状態は、ものの数分だったと思う
身体の半分を陸に乗り上げたまま、ドウンと地響きと砂煙を上げて倒れこんでしまった

巨体を維持する事が不可能になったのか?萎む様に元のサイズに戻ってゆく
青い紋の入ったその悪魔の顔には、既に【屍斑】が浮かび始めていた

服毒してしまった者に見られる、典型的な症状だ

だが何時の間に毒を?相手がソレらしきモノを、打ち込んだ様子も無ければ
極端な劇症状態からみれば、事前に服用させていたワケでも無さそうだ

「卑怯ではないかっっ 【シガテラ】を使うなど、恥を知れっっ」

血反吐を吐き散らし、荒く呼吸を乱しながらも、さらに男は吠える
しかし水中から上がってきた彼は、至って涼しい顔だ、満身創痍ではあるけれど

ツカツカと男に近づくと、鋭い爪の生えた素足で、容赦なくその後頭部を踏みつける
水際の浅瀬の泥水に顔を鎮められた男が、苦し気に呻き藻掻く

「俺自身が戦闘で流す血だって、立派な武器だ、規定違反ではないはずだよ、兄貴…
散々母上を下賎呼ばわりしやがって、アンタをヤるには【シガテラ】って前から決めてたんだよ
どうだい?大っ嫌いな【人魚の毒】に浸食された気分は?このまま降参するなら、助けてやるよ…」

「誰がッ…その様な恥知らずな真似が、出来るかっっ さぁ殺せっ早くっっ」

でなければ…お前もお前の母も、いずれ殺してやるっっ 妾腹に家督など譲らせない

そう喚き続ける男を、更にグリグリと踏みつけると、青年の手には彼の流す血がユラユラと集まる
その血は1m弱の槍状の硬化物質を形成する、深紅だったソレが、ドス黒く変化してゆく
血に含まれる【毒素】が、彼の感情の昂ぶりに呼応して強くなっているのだろう

「同じ水妖なのに、最後まで解り合えなくて残念だよ、バイバイ…兄貴…」

大きくソレを振りかぶる彼の顔は、憎い獲物を仕留められる?喜びの色は全く無く
酷く哀しげに見えて…僕は思わず声を掛けてしまった、覗き見をしていた事も忘れて

「待ってっっ、駄目だよ、君は兄さんを殺したらいけない…」

呆気にとられた二名がコチラを見ている…僕も状況に気がついた時はもう遅い
勝負は途中中断【監視者】の水妖が数名、静かに水中から岸に上がって来た

トドメを刺すには至らないが、兄を名乗る男が、最早戦闘不能なのは明白だ
今すぐにでも解毒と延命処置を施さなければ、恐らくはこのまま死ぬだろう
結局は監視者達の一致の意見で、弟の方の水妖の勝利は認められた様だ
男は不服そうではあったが、監視者のジャッジには従うのが【掟】らしい
他族の僕にまで、無様な様を見られた事も含めて、【敗北】を認めると、
直ぐさま延命処置が施される、やはり同族を見捨てる事は極力避けたいのだろう
水妖とはそういう属性種族だからだ 弟の方も応急処置を受けている

「好奇心からとは言え、覗き見をした上に、勝負に水を差して申し訳ない」

僕はただ平謝りするばかりだが、監視者達は、一様に戸惑っているようだ
「魔女のローブ」を脱いだ僕が、使い魔ではなく、鬼族の上級悪魔で、文化局の関係者であるからだ
恐らくは…僕が力の弱い下級悪魔なら、この場で殺処分されていたかもしれない
水妖の秘密を守る為に… だが今ココで僕と同等の力を持つモノは
勝者となった若い水竜しか居ないのだろう、【監視者】達は、彼と僕の顔を交互に見ている

「……さっきは…止めてくれてありがとう…」

濡れた巻き毛を指でもてあそびながら、意外にも彼は、はにかんだ様にそう言った

後継者争いで変な事になっちゃったけど…兄貴を殺したかったワケじゃないから

それと…今ココで起こった事は、誰にも言わないでくれるかな?
勿論文化局の記録にも、残さない様にしてくれる?
止めてくれた貴方と対立したり、殺し合ったりするのは避けたいから…

おおよそ悪魔らしくない、下出な態度が、妙に可愛らしい
さっきの凄まじい死闘を見た後でも、やはり女性に近いその見た目故か?

僕は黙って襟元をくつろげると、左胸の刺青を見せる
通称【魔女の紋章】何処のギルドに所属しているかを示すのと同時に
同じギルド内の魔女の秘術を、他に決して漏らさないと言う【誓い証し】
【誓い】を破れば、刺青が心臓を食い破る…最も鬼の僕に効力があるかは解らないけど
魔女達に敬意を払う意味と・文化局の記録に転記しない、秘密を守る約束として入れた
そして…魔女のギルドには、魔界生まれの方の人魚・水蛇出身の魔女達は何処も多い

彼女達の血が、相手を想う気持で【薬】になり、憎む気持で【毒】にもなる
そんな事は魔女の間では常識だ、時には【媚薬的】な意味も含む事も……

更にソレは、【対象者】にしか効かない…彼のソレもそうだ
海竜を殺しかける程の強力な【毒の血】が流れたと言うのに、湖の小魚一匹殺さない、
慈悲深い事にも効果があるのは、その時の【攻撃対象者】だけなのだ

だが…本来この力を備えているのは、女性の魔力レベルの弱い人魚と水蛇だけのはずだが
彼は【特殊な例】なのだろうか?それとも?人間から人魚や水蛇を作る【能力者】もまた
同じ血を持つのだろうか?興味はつきないが、今は沈黙を守ろう…

【魔女の紋章】に誓って、最初から他に秘密は漏らさない…と言う証しにはなるなら

紋章を見た彼は、瞬間的にホッと胸をなで下ろす
コレの意味を知っていると言う事は、彼の母君あるいはそれに連なる親族は、人魚系の魔女と言う事か?
成る程…お家騒動の一端が見えなくも無い話だ

「今は兄貴の解毒治療が先だから、失礼するけど、また改めて挨拶には行くよ
文化局?それとも魔女の館?どちらに赴けばいいのかな?」
「夜は概ね、魔女の館に…その方が、君も足を運びやすいでしょ?生体実験室より?」

確かに違いないよね…彼はそう言って笑いながらも
腕の傷から自分の血を舐め取り、すでに意識の無い負傷者と唇を重ねる、
肉親で同性同士だと言うのに、それがまた、変に色っぽく見えるのは
彼が水妖で、中性的な姿形だからだけじゃない、無意識の媚態か?
ただの治療行為だと言 うのに、変にドギマギしてしまった僕は
ソレこそ見てはいけないような気がして、視線を足下に落とした

彼自身も消耗している為か?破壊した細胞の再生にまでは至らない様だが、
残留する毒の作用の無効化くらいの効果はあるのか?屍斑の発生進行が止まったようだ

「ああ…ちゃんとした、自己紹介がまだだったね、僕は文化局のゼノン、君は?」
「水都での手続きがまだあるから…多分来週くらいには、職場に戻れるとかな?
参謀本部所属のルーク、まだ一番下っ端だけどね」

ぱっと見は、まだ学生と言っても通る様な様相で、本部所属?
貴族だとしても相当優秀でなければ、その地位に付く事は出来ない
見た目だけでは解らないものだ…男水妖が使う【シガテラ】 の件も含めて

水都に帰ってゆく水妖達を見送りながら、そう思った事が今は懐かしい

最初に強烈過ぎるソレを見せつけられて居るからね…
僕は怖くて安易に【水妖】には、特にルークには、手は出せないよ…

人間的な表現をすれば…
何時でも殺せるデスサイズを、相手の頸に引っかけて、にっこり笑っている死神と、
何も知らずに、宜しくヤてる様なモノだからね…
喉元に刃物を当てられているのはドチラだか? 好き勝手にしているつもりで
本当は…強力な媚態と【自家製媚薬】に、操られているのかもしれないよ?

まぁあの二名が、あの水竜の様に毒に当てられ、運び込まれた事は無いから
振り回され気味な付き合いも、多少の無茶な扱いも、妥協と納得の範囲内なんでしょう?
水妖のお姫様にとっても? だから僕は何にも言わないよ、出歯亀は嫌いだからね

【シガテラ】=主に海洋の熱帯魚系食用魚が、身体の中に貯め込む【毒物】の一種
環境や食べ物によって、本来毒を持たないはずの魚が、有毒になったモノを主に指す
釣り上げた魚は不用意に調理をしない事、WEB・図鑑等の情報だけを鵜呑みにしないこと
弱い相手と侮ると、トンでもないしっぺ返しを喰らうと言うお話



end


円満解決なのか?コレは?管理人も良く解らないデス
好き勝手している様で、実は相手の方が一枚上手だった何てことは
良く有ることですから〜あははははは…と書き散らし

無責任逃げてゆく私めが、一番無責任と言う事ですね
最後までおつきあい頂きありがとうございます(^_^;)


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あきゅろす。
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