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【Gt3兄弟@】
『シガテラのドラジェ』 前編 R-18 J×L⇔L×J SM表現・暗黒設定有り注意

窓の外はもう日が傾きかけているのだろうか?
金色の光が、閉じられたブラインドの向こうから微かに漏れている
照明の落とされた部屋の天井には見覚えが
妙にふかふかで寝心地のいい寝床、そのまま惰眠を幾らでも貪りたくなるソコは
ああそうだ…ジェイルのマンションの部屋…ジェイルの………

「目が覚めた?」

苦労して目を開ければ、隣には部屋着のこの部屋の主が
起き上がろうとする肩を柔らかく押さえつけられ、シーツの上に戻される

「無茶な事してごめんね、もう少し休んでいた方がいいよ」

そう言って、首筋の痣をぺちゃぺちゃと舐めあげる
腫れ上がり血が滲んでいるらしいソコを刺激され、
その痛痒さにルークはヒクリと身体を震わせ、短い息を吐く

何時の間にココに来たの?俺? お前が運んでくれたの?
えっと確かスタジオで、エースに無茶苦茶にされて
途中で意識がぶっ飛んで、その後…記憶が無いんだけど…

身じろぎ、無理に身体を動かそうとすれば、ズキリと身体中が痛い
ぼんやりと視界に入る両手首にくっきりと残る鬱血痕と、下腹の鈍痛が
都合の良い夢や、妄想でなかった事見せつける

ああ…いっそ夢ヲチとかだったら、助かるのに………

別に変態じみた酷い事をされたのは、今回が初めてでは無いけれど
願望があった事が、直接バレてしまった事の方が、大問題なんだよね

どうしよう…特にエースは次に逢う時には…どんな顔をすればいいのか解らないよ

痣を重点的に傷ついた部分を、柔らかい舌と唇が移動する、性的な行為ではない
直接治癒魔法を、傷口に直接流し込んでいるようだが…
効き目はあまりない様だ、逆に腫れて熱を持っている部分を
変に刺激されるのが辛いのか、イタキモチイイのか解らなくて
じわりとこぼれる涙を、丁寧に舐め取られる

「困ったな…俺もエースもヒーリング系は、得意じゃないんだよね…」

二名だけでなく、殆どの火炎系悪魔がそうだ、
全てを焼き尽くす、攻撃系魔法の威力と破壊力は桁外れだが
その反面、治癒魔法・ヒーリング系の力は、お世辞にも長けているとはいえない

属性故の特性なので、こればかりは仕方の無い事だ

それでも…生粋の火炎系悪魔では無く、変異悪魔のジェイルはまだマシな方で
とりあえず応急処置の止血だけは、出来るみたいだけれど
傷を完全に塞ぎ治してしまう事までは無理な様だ、勿論痣に関しても …

無理に苦手なヒーリング魔法なんて、使わなくて良いから…

そう伝えようとする前に、するりと脚の間に手が滑り込んでくる
ビクリと震える俺をぎゅっと抱きしめると、耳元で猫が囁く

「ゴメン…そんな顔されると、ついさ…」

一回だけシてもいい?

冷たい手が、俺の欲情を確認すると
さらに奥へ…まだエースの名残が残っているソコを弄る
ほんの少しの刺激で易々と、その指を受け入れてしまい
ぬちゃぬちゃと中を探られるだけで、漏れはじめるあえぎ声に
ジェイルの目が満足気に細くなる

どうなってるんだよ…俺の身体も

あれだけ無茶をされた後なのに、啼かされ、搾り取られた後なのに
しっかりくっきり勃ってるのが、浅ましくて情けなくて恥ずかしい
たいした前戯も必要とせずに、ジェイルのソレを受け入れてしまう
性急なソレに翻弄されながら、俺もまた快楽を貪ってしまう

お預けを食らった形のジェイルが、一回なんかで済むワケがない

痣だらけの身体を、多少は労ってくれているのか?
突き上げる激しさは、何時もより格段に優しいけど
バラバラになりそうな程、疲弊しきった身体には堪えるはずなのに
それでも本能的に、刺激を余さず拾おうとしてしまうのは、
悪魔らしく快楽主義の極みだから? ただ押しに弱すぎるだけ?

結局…年下の猫にも、更に好き勝手に貪りつくされてしまい

俺は諦めた様に、相手の背に腕を回す
自分で抱きつける分、温もりを確かめられる分
さっきのスタジオのアレよりかは、幾分かはマシかもしれない

※※※※※※※※※※※※※※

「何か飲み物を持ってくるね」

ぐったりとベッドの上にへたばって居る、俺の額にキスをすると
部屋を出て行ったジェイルの背中を、ぼんやりと見送くる

普通だったら?俺は怒るべきなんだよね?その他諸々の元凶と言うか?
そもそもあり得ない場所で無茶をされた上に、今だって…
ちゃんと雷を落とすべきなんだよね?年長者としては?

だけど…コレも何時もの事だけど、何故かビシッと怒れないんだよね
悪さが過ぎても、ちょっと困った様な?子供みたいな、上目遣いの顔をみるとさ
明らかにコイツが悪くて、当人にもその自覚があっても、ズルイだろお前は?

気配が充分に遠ざかった事を確認すると
俺はふらつく足取りでベッドを降りて、自分の鞄の中身を探る
アイメイク用の予備の鏡が、内ポケットの中にあったはず
探り出したソレを掴みだすと、壁際の姿見に向かい合わせる様にソレを置く

このままココに居るのは、流石にまずい…身体が持たない

多分レコーディングが終わったエースも、こっちに来るだろう
純粋に心配から様子を見に…ただ様子を見るだけで、終わらないだけのお話
悪気とかそう言うのでは無いのは、解っては居るのだけど
そのまま?ノリと勢いで?二名がかりで、責め立てられたら…
本格的に足腰が立たなく成る所では、済まないかも…多分

今回のスケジュール的にソレは不味い、人間界の仕事もきちんとこなす
ソレが俺なりの心情と言うか、ポリシーなので

ド鬼畜二名の暴走に、これ以上付き合ってはいられない
合わせ鏡の像の中に、俺だけが使える鍵を、魔方陣と印を描く

「Pier……」

そう小さく唱えると、細長い鏡の鏡面がドアサイズに広がり
水の波紋がゆらゆらと中に揺れる、空間が繋がった先は魔界の海か
人間界では見られない不可思議な魚影が、波の間を行き来する

こんな格好で帰ったら…きっと驚かせてしまうけど、緊急事態だから仕方が無いよね?

拾い集めた自分の服を、とりあえず着ると、
その上に壁際に掛けてあった、少し長めのコートを羽織る
ジェイルのだけど、露出部分を隠す為に貸してもらう

関係無い奴には、やはりこの手の傷はみせたく無いから

意を決した様に、ルークはそのまま鏡の中に入ってゆく
とぷんと水溶性の音がして、鏡面は細身の悪魔を受け止めると
徐々に光りが弱くなり、元通りの、唯の鏡に戻ってゆく

「ルーク?」

炭酸水とビールを片手に、部屋に戻ってきたジェイルは
もぬけの殻になったベッドを見回すと、壁際の鏡の付近の床が、濡れている事に気がつく
ほんのりと部屋の空気に残るのは…人間界ではなく魔界の海、東の原始の海の濃い香り

「逃げられちゃったか…」

行く先は何となく解るけど、火炎系悪魔の自分が手が届く範囲ではない
ああ…またエースに怒られちゃうかもな〜 そうつぶやきながら茶色の髪をかく

でも…あの傷はどうするんだろう?
ルークって対自分用のヒーリング魔法は、得意だったかな?
水妖の医者に診せるにしてもアレだし、最悪ゼノンに頼もうと思ってたのに

そう思いながらも、次の良い手段が思いつかず、ジェイルはタバコに火をつける
とりあえず後から来るであろう、エースへの言い訳でも考えて置こう…

※※※※※※※※※※※※※※

細かいチューニングをしていると、何やら強い視線を感じる

ガラス越しのミキサー室を、フッと見上げれば
手前でスタッフに指示を出している、松崎君の後ろの壁際に
腕を組んだままで、なにやら神妙な面持ちのエースがひっそりと立っている

珍しいね、魔界でも人間界でも多忙な君が、僕の録音作業の見学だなんて?
それとも?また何か言いにくい頼み事かな?

まぁいいや…もう少しで終わるから、そのままちょっと待っててよ
それとなく目配せをすれば、相手も気がついた様だ、
少しだけ申し訳なさそうな視線が、チロリとこちらを見る、

やれやれ…僕は、君の万能猫型ロボットじゃないんだけどね

一仕事終えて、録音ブースから出てくると、
廊下の販売機で、買ってきたらしいポカリを片手に、
エースがゆらりと近づいて来ると、小声で耳打ちをする

「石川君…じゃなかったゼノン、ちょといいか?」
「どうしたの?エース改まって?」

せっかくの気配りをありがたく頂戴しながら、小さく答える
まぁ…こういう時は大概?他には聴かせたくない内容なのだろうからね

「悪い…今日の仕事が捌けた後でいいから、内密にルークの手当を頼めないか?」

ルークが怪我って?さっきのアレ?

録音の前・ライブ前は、必ず自分で弦の張り替えをする僕も
実は結構早めにココに入っていた、人間には聞こえないだろうけど
悪魔の耳には、僅かに聞こえてしまう物音と言うか
完全にパニクッて乱れ飛ぶ、ルークの思念が、解りやすすぎたから
うん…コレはライデンには、聴かせない方がいいね、
相手がエースである以上?仕事前は、結構ナイーブな閣下にも同様かな?
スタッフの一部にも居る魔族達にも、内密の方が無難だよね?と
勝手ながら、結界を張らせてもらったから、何があったかくらい推測はつくけど

怪我させるまでヤっちゃったの?全く何をやっているのやら…

「怪我って…致命傷になる程度の?それじゃあ、部屋も大変な事に?」
「いや…肌に派手な鬱血痕をつけたダケだ、でも治りにくいだろ?あの手の傷は?
屋敷の使用魔に、診せるワケにもいかないはずだろ?何とかなるか?」

撮影も近かったはずだろ?とうなだれる長身が、何だか妙に可愛らしくて
僕は思わず吹き出してしまった、後悔するくらいならヤらなきゃいいのに
でもまぁソレも仕方無いか、相手がルークなら、水妖の彼なら
多少自制心が効かなくなるのも、仕方がない事かもしれないからねぇ

「笑い事じゃないだろう?」 ジトッと苦笑気味に、コチラを見る目に笑い返す
「ごめんごめん…その程度の傷なら、多分?僕の出る幕は無いよ、
彼専属の海のお姉さん達がいるから、僕が手を出すのは野暮だよ、どの道何もなくたって
集中エステに行くつもりだったんじゃない?写真大好きな、ルークなら?」
「はぁ?海のお姉さんって…あのハーレム状態の別宅の方か?」
「まぁそうとも言うけど、彼女達は、一種の保険だからね
水妖の上級悪魔なら珍しくないよ…殆どコンビニ外来の?君や閣下と違って、
ルークが、僕の研究室に来た事なんて、殆ど無いでしょ?」

言われてみれば確かに…参謀とは言っても、戦場の矢面に立つ事を厭わないルークは
手傷だって負う機会はあるはずなのに、文化局どころか、メディカルセンターでも
あまり見ない?いや殆ど見かけた事はない、生命を脅かすレベルの大怪我で無い限り

「水妖の治療には、その悪魔を想う人魚と水蛇の血…それ以上の特効薬は無いからね」

ただの【愛妾】兼【使用魔】じゃないんだよ、人間から転魔した彼女達は
生粋の魔界生まれの、人魚や水蛇に比べれば、魔力も寿命も劣るけど
ヒーリング効果は、絶大だからね…より力の強い水の中なら【契約者】限定でね
直接【血の契約】を交わしているんだから…
他族で同性の僕が、無粋に入り込む隙間なんて無いよ

「自分専属の女達なら、尚更診せたく無いんじゃないのか?あんな傷?」

「おやおや…情報長官ともあろうお方が、何を甘ちょろい事言っているのやら?
人間が、どうやって人魚や水蛇に成るかなんて、よくご存じだろうに?
行きすぎた情事の痕を見たくらいで、ドン引くような子なんて、一名も居ないんじゃない?
寧ろ今回の件に全く無関係の僕に、その傷を診察させる方が酷だと思うよ」

弱味や格好悪い部分は、絶対に見せられない魔界の女性より?
その点だけは、べったりと甘えやすいだろうけど…
その分?背負い込まなくてもいい【重さ】は、スゴそうだよね…

いくら『合理的』な方法だったとしても、僕にはあのシステムは真似出来ないよ

解った様な?解らない様な?複雑な顔をするエースの肩をぽんぽんと叩くと
「ごちそうさま」とポカリのお礼だけは言って、僕はその場を後にする

まぁ…水面下では、【水妖】と対立関係もある【火炎系悪魔】である以前に
『そういう関係の相手』でもあるエースに、アノ事は伝えない方がいいだろう

水妖の秘密であり、本当の意味の【最期の切り札】でもある事項だから

異属性及び他種族は、単純な『同属性間の有効治療法』とでも思っていた方が良い事だ
直接効力は無いとしても…【魔女の証】に秘密を誓っているから
あくまでも中立的な、記録の管理者としては…沈黙を守るのみだねえ………

※※※※※※※※※※※※※※

ジェイルのマンションから逃げ帰り、魔界の海の別荘【水晶宮】にたどり着くと
出迎えてくれた人魚と水蛇達を、驚かせてしまった様だ
ココの女中頭・ハウスキーパーを兼ねてくれている、年嵩の人魚が慌てて、
外出中の子達も含めて、使用魔全員に緊急連絡をしている

俺の使用魔と言っても、彼女達全員が、何時もこの別宅に居るワケではない

予め予定されているヒーリングに必要な、【当番】の子達が、
俺を出迎えてくれてくれるのが常で、他の子は近海に外出して居る事が多い、
その時の【当番】を勝ち取れなかった事に、むくれてしまう子も多いから…
まぁ外出すると言っても結局は、俺の魔力で庇護出来る範囲の、近海領域内には居るんだけれどね…

お風呂の準備が出来るまで、みんなの邪魔にならない様に、寝室で休んでいると
窓の外には続々とココに帰ってくる、俺専用の看護婦さん達の姿が見える

みな一度は、天窓にすがりつきから、心配そうにコチラを見るけど、
俺に抱きついて、お帰りなさいのキスをするより、先にする事が役目があると
浴室に急ぐその姿が健気で、ひらひらと手を振って答える

ああ…こういう事にナイーブな子もいるのに、変に驚かしちゃって、本当にゴメンね…

「浴室の用意が調いました…」

と呼ばれて浴室に向かえば、結局全員が協力してくれたのだろうか?
真っ赤に染まった浴槽の色は、何時もより数段濃い…色は勿論、甘ったるい香りも
提供してもらうのは、一名あたり「グラス一杯の血で良い」と、何時も言っているのに
今回は絶対に過剰に提供している子がいるはずだ、後で念入りにチェックしなくちゃ

他魔にはとても見せられない傷を晒すのは嫌だけど…
不思議と彼女達の前では、他程抵抗が無い 単純に女の子に対するソレとは違うから

俺専用の医療スタッフみたいなモノで、日頃から傷付き、弱り切った自分を晒す相手
と言う事もあるのかもしれないけど… 彼女達の姿を変える時は、俺の血を使うせいか?
【血の契約】を交わした事により、すでに俺の肉体の一部?のような感覚があるんだよね
単純な恋魔や恋人、血族同族とも違う、依存に近い繋がり?とでも言うのか?

コレは…何らかの形で、特に自らの肉体の一部を媒介にして、
人間・他生物を転魔させ、自らの使い魔に出来る能力を持つ者
極一部の悪魔にしか、解らない感覚かもしれないけれど…

ばさりとローブを落とすと、俺も普段は格納している鰭を全て広げる
耳の少し上から広がる、深いブルーの鰭は翼の様に広がり
両手首と両足首からも、少々小ぶりな鰭が、背びれを思い切り広げるのも久しぶりだ

水中では便利だけど…地上では、今ひとつ様にならないと言う理由もあるけど
俺の水中使用の外見は、海竜の父親より母親似の、人魚や水蛇のソレによく似ているので
少しだけ恥ずかしいと思っている、ぱっと見だけは、女悪魔?と勘違いされ
或いは魔力レベルの低い、海洋性の魔物と間違われやすいので

だが…ココの彼女達は、その姿が、綺麗だと愛おしいと言ってくれる
この海域支配権の後継者争いの時には、マイナスポイントにしかならなかったソレを

最も俺の母親は、人間から転魔した彼女達とは違い
人魚の血が濃いだけの、生粋の悪魔ではあるけれど…姿が似ている事もあるのか?
自分の領域・領海内で、発生する人魚と水蛇を取りこぼせないのは
男なのに女性形に近いこの姿?そんなコンプレックスからも、来ているのかもしれない

とぷんと浸かる浴槽の湯は、待ちかねたように、優しく俺を包み込む
傷を癒やし…肌に吸い込まれてゆく、彼女達が俺を想う分と同じくらい

大昔…何処の人間の女王様が、どうやってこの方法を知ったのか?は知らないが
同じ方法で、美白とアンチエイジングをしようとしたらしいけど 愚かな話だ
コレは一部の水妖しか使えない術だ、互いに血を交換出来る力と相性
相手を想う気持、あるいは憎しみで、癒やしにも毒にもなる特殊な魔法

鰭だけではなく、さらに鱗も全部外に出してしまうと
浴槽の縁で心配そうにコチラを見ている、愛妾達に手をさしのべる

「おいで…血を流しすぎた子には、後でお説教だからね…」

途端に嬉しそうに浴槽に滑り込んでくる、人魚と水蛇達
一名ずつ抱きしめると、採血の為の傷を確かめ、ヒーリングで確実に塞でゆく…

彼女達の血が、契約者である俺に馴染み、その傷を癒やしてくれるのと同等に
彼女達の物理的な傷を癒やすのもまた、庇護者である俺の魔力だから…

手当を済ませた順に、治りきらない俺の傷の手当てと、
肌の手入れを初めてくれる、彼女達の唇と指が触れる度に
破損部分が、ジワジワと再生してゆくのが解る
鰭と鱗の全てを、丁寧に揉みほぐしマッサージしてくれる
ココに来て長い子・まだ日の浅い子の技術の差はあっても
俺限定で惜しみなく放出される、治癒魔法の波動が暖かく心地がいい
優しいその手に身をゆだねながら、うっとりと俺は目を細めると、
順番にその瑞々しい肌に唇を這わす

赤い湯の中にくねる水妖達の宴は、始まったばかりだ

※※※※※※※※※※※※※※

それから丸二日程は、外からの連絡も完全にシャットダウンして
久しぶりの休日を楽しんだ、初日は本調子じゃない俺がグダグダだったけれど

時間の許す限り普通の長風呂を楽しんで、手慣れた彼女達の集中エステを受けると
ボロボロだった身体が、すっかり軽くなった感じだよ
お肌もぷるんと若返った感じ?別宅はいいな…俺にも癒やしは、必要だからね

愛妾達の献身的な治療のおかげもあるけれど

上級悪魔と言っても、本来は水中生活の方が、適した水妖だからね俺は
地上でずっと生活していると、結構負担がかかってるんだよね、色んな場所にね

水の本来の力が強い、この【原始の海】の海水の中に居るだけでも
身体の中の細胞が活性してゆくのが解る…魔力回復と同じレベルで

本当はもっと頻繁に、ココに来た方がいいんだよね
ココで待ってる子達の為にも、自分自身の為にも…

だけど、なかなか忙しくて、纏まった時間が取れないのが現実で
寂しい思いをさせて居るかもしれない
時間は…生粋の魔族達よりずっと限られて居るのに

だから…ここに来た時は、綿の様に彼女達に甘える事にしている

外では格好悪すぎる程に、甘えたな俺を、彼女達は喜んで受け入れてくれるから
仕方のない主人だと、母親の様に、年上の姉の様に接してくれる

ずるい大人の妥協とは解っているけど…

過酷な修羅場を潜ってきた彼女達の強さと弱さの両方を利用した、
ただの身勝手な、甘えと解っているけど、ソレがこの居心地の良い空間を、
契約者と彼女達の関係を、維持する為とあれば…
お互いが納得した事であるならば、致し方ない事かもしれない

もう何日かは無理でも、一日くらいは…ここでゆっくりしていたいな…
水蛇の膝を枕に、きらきらと光る水面を見上げながら、
ぼんやりと、そんな事を考えていたのだが

無粋に鳴り響くのは、緊急用のホットラインのコールだ

一応休暇願いはしっかり取って、受理されたんだけどな…
軍上層部に所属する自分にはソレも仕方ない事
仕方なくモニターを通して、ラインを繋げれば、相手は王都の本宅の執事だ

「リフレッシュ休暇中に、申し訳ございません…」
「体力も体調も、大分戻ったから問題無いよ、どうしたの?何かあったの?」

気怠げにそう答えると、壮年の執事は、汗をハンカチで拭いながら報告する

「実は…早朝に情報局のエース長官から、お荷物が届いておりまして…」

【極秘】扱いにはなっていましたが、【至急】の印は付いていなかったので
御主人様が帰還されてから、お渡しすれば良いと考えていたのですが…
何やら中から物音がするのですよ、今現在もこの様に…
緊急で中身を確認させて頂こうにも、私どもレベルでは解除出来ない封印が
いかが致しましょう?危険物とあれば…そちらに転送するのは、無理がございますよね

本宅の使用魔達は、魔力レベルがソコソコ高い者ばかりなので
多少の事があっても、最低限度自分自身くらいは、守る事が出来るけど
ココに居る子達は、生粋の魔族に比べれば、やはり脆弱だからね

外からの攻撃は俺の防御壁で護っているけど…内側に危険物など持ち込まれたら
多分ひとたまりも無いから、名残惜しいけど、本宅に帰るのが一番良さそうだ

「極秘扱いでしょ?彼が送り主なら、お前達が、下手に手を出すのは駄目だよ
火傷するかもしれないから、何もしちゃいけないよ、何だろう?すぐに帰るね」

それにしても、エースから荷物?何だろう?
勘ぐりすぎかもしれないけど、何だか凄く嫌な予感がするんだけど…

プツンと通信を切ると、その場に居合わせた愛妾達は、みな寂しそうな顔だ
予定が繰り上がって残念なのは、俺も同じだからそんな顔しないで
もう一度一名ずつ抱きしめ、キスをすると、その耳元に囁く

「ごめんね、急用が出来たから、今日はもう帰るね
撮影直前にもう一度来るから、そこで少し長めに時間を作るからね」

寝室の鏡に、来た時と同じ呪文を掛けると、本宅の書斎に繋がる
俺のエリア内、或いは外からでも目的地が自分の領域なら
鏡を通して何処にでも行けるこの方法は、本当に便利なんだよね
使った鏡が、少々濡れてしまう事を差し引いても
地上に戻る為に、伸ばしきった鰭を全て格納してから
鏡に半身を埋めると、ひらひらと手を振る彼女達が見える

なるべく早い内に、ゆっくり出来る時間をとるからね

そう呟き鏡の中を抜ければ、王都の屋敷の書斎
主が水妖の館らしく、快適にすごせるように加湿されては居るものの
やっぱり地上は乾燥しているなぁ…海に比べればね…
などと思っていれば、「お帰りなさいませ」と出迎える、本宅のメイド達

しっとりと濡れた身体に、お気に入りのローブをそのまま羽織り
したたり落ちる水滴を、ふかふかのタオルで軽く拭っていると
通信室から帰ってきた執事が、恭しく俺を出迎える

「それで問題の荷物は?」
「万が一の事も考えて、防護封印付きの客間の方に移動いたしました」

魔界では、陰謀・暗殺・事件など日常茶飯事の事だ
客として迎え入れた者が、実はスパイ、あるいは暗殺者だった…
なんて事も決して珍しい事では無いのだ…
故にその疑いのある客をお通しする、特別仕様の客間がある事も、
貴族の館であれば、特に珍しい事ではない

外見上は普通の客間として利用しても、何の失礼も無い様な、居心地の良い豪華な作りとなっているが…
いざ事が起こった場合は、そのままその部屋に客だったモノを閉じ込め、捕縛する事も可能な程
堅固な封印と攻撃用の仕掛けが、部屋全体の取り巻くように仕掛けられている

危険物の保管場所としても、うってつけ…と言う事だ

「お前達は離れて、まぁエースからなら、俺に危害を加えるモノでは無いとは思うから」

そう言って使用魔達を全て下がらせると、俺は部屋の中央に置かれたソレに目を落とす

何なのコレ?両足を抱え、背中を丸めた状態なら?
大人の人間が一人くらいは、楽々入ってしまいそうな程の大きな革のトランクは、
アンティーク調で、随分い厳つい作りなのだが…問題はソコではない

その上から、何重にも巻き付けられた鎖は一体何なのさ????

鎖全体が封印の役割を果たしているのか?薄いぼんやり光っている
その全部が連結している?要の巨大な金属パーツには、エースの家の家紋が彫り込まれ
巨大な錠前と鍵がぶら下がっている…一見簡単に解除出来そうだけど…
この屋敷で、俺の次に魔力が強いあの執事ですら、鍵に触れる事が出来なかったらしい

つまり俺だけが…俺にしか触れない様に、【制限魔法】が掛かっているワケね

トランク本体の革に押された、情報局の紋章の焼印を指でなぞりながら
ソレが本物である事を確かめ、ますます得体の知れないソレを、慎重に伺っていると
突然ガンッという音と共に、トランクが一瞬中に浮くほどに、バタバタッと動いた

何っっ???一体何なのっっコレ???

中に何か動くモノが?生き物でも入ってるの???中から蹴ってる?暴れてるの???
いやでも相手は…エースでしょ?そんな中途半端な事なんて………まさか…まさかね…

嫌な予感がした俺は、再びソレが暴れ出す前に、
慌ててその鍵を手に取り、鍵穴に差し込めば、思った通りだ

俺の手なら簡単に解除出来た ゴトリと重い音がして錠前が落ちる

せっかく手入れしてもらったばかりのネイルが、剥げてしまう事も気にせず
外れた鎖を慌てて取り払い、大急ぎでトランクの蓋を開ければ…

やっぱり…嫌な予感が的中………

あのド鬼畜のド外道…一体全体何考えてるんだよっっ

いくら大型のトランクとは言っても、
閉じ込められ、監禁されるには、あまりにも狭いその場所に
折り曲げられた、ジェイルが押し込められていた

後手にされた両腕を、二の腕から先を纏めて袋状の革袋に突っ込まれ
上から締め上げられる、酷く苦しそうな拘束具を付けられて…

いくら他魔より身体が柔らかいと言ったって、コレはあんまりなんじゃないの?
そして…こういう時の貞操帯は、お約束なのでしょうか?
前はがっちり拘束された上で、後ろにも何か押し込まれている

何時からこんな状態になってたのか?解らないけど…

相当辛かったのだろう、酸欠で半分曇った目に何時もの余裕は欠片も無い
棒枷を口に押し込まれ、助けも呼べなかったのだろう
まぁソレがなくても声を出せたかは、解らないけど
泣き濡れた涙の痕と、ぐっしょりとかいた汗が、トランクの内張の布に広がっている

「ジェイルっっ生きてる???大丈夫!!!」

慌てて狭い場所から、その上半身を引っ張り出すと、口に押し込められてソレを外す
ペチペチと頬を叩いてはみるモノの、息はしているものの反応は薄い

普通の男なら、到底出来ないレベルまで締め上げられた腕の拘束が、とにかく苦しそうで、
革袋を身体に固定している一番太いベルトを、両肩にから前に回り胸元をクロスしている部も、
爪で引き千切ろうとすれば…バチリッと何かに阻まれる

嘘………何かコレにも仕掛けられているの???

どうしたら良いか解らず、狼狽える俺の視界に、
トランクの蓋の内側に貼り付けられた、シンプルな封筒が目に止まる
深紅の封蝋の上の紋は、コレもエースの家の紋章
ジェイルの肩を抱いたまま、慌ててソレを毟り取り、開封すれば
見慣れた文字で、短く素っ気ない注意書きの様なモノ?がしたためられていた

『危険行為への罰則・教育的指導の一環だ、お前も協力させてやるよ
好きにして構わないぞ、お前が満足するまで、拘束が解除されない
そういう制限魔法をかけてあるから、ジェイルにもそれは言ってあるから
遠慮は要らないから、存分に可愛がってやれよ、じゃあな』

はぁ???何ですか???ソレは???
ええええっ???そんな一方的に、巻き込まれても困るんですけどっっっ

思わず手紙を破り捨てると、腕の中でジェイルが、小さく身じろぐ
狭いトランクからは解放され、新鮮な空気を吸えたからだろうか?
徐々に曇った目に光りが戻り始める、泣き濡れた瞳が俺を見上げる

「助けて、助けて…ルーク………」

拘束されたままで、動きにくい身体でもたれかかってくると
噛みつく様に唇を重ねてくる…あまりの必死さに、狼狽えながらもソレに応えると
その口内と舌の乾ききった感触に、哀れみより先に怒りを覚える

いくらなんでも酷いでしょ、この仕打ちはあんまりだ

ジェイルがこんな状態では、下手に使用魔を呼ぶワケにもいかず、
俺は空気中の水分を、片手に集めると、口移しで飲ませてあげる
咳き込みながら、貪るようにソレに吸い付くその頭を、撫でてやる事しか出来なかったけど

水分補給が済んでしまえば、そのまま殆ど力尽きる形で崩れ落ち、
今度は、俺のローブの中に頭を突っ込んでくる

「ちょっと待って…ちょっとでも楽にしてあげるから」

俺は必死に擦り寄り、サービスしようとするジェイルを引きはがすと
その身体を抱き上げて、この部屋のベッドの上に運び上げる

拘束だけでも相当辛いはずなのに、無理に乗り出す無防備な脇腹が
トランクの縁が変に当たって、痛そうなのが、いたたまれなくて

お仕置きだか?なんだか知らないけど…強制的な据え膳って苦手なんだよ

普通だったら?こんな美味しそうな獲物が、ワザワザお膳立て付きで転がっていたら
遠慮なくガツガツ頂く場面なのかもしれないけど、俺はこういうのは苦手なの
自分がされるのはともかく、他魔にソレをするのはダメなんだから仕方がない

到底悪魔らしくない思考かもしれないけどさ…

それにしても…何考えてるんだよっエースはっっ

よくこんな酷い事思いつくよな…俺が連絡のつかない場所に潜り込んでいたら
一体どうするつもりだったんだよっっっ そしたらずっと閉じ込められたまま?だったの?

急に空恐ろしい考えに思い至り、ブルりと震えが走る

やりかねないのかな…本気でブチッと来たら、やりかねないかも…特に三つ目赤髪の方は…



続く


『藪蛇』の続きが思いついてしまったので、6969のリクの前に何となく
順番が前後してしまってすみません、もう少々お待ちくださいませm(_ _)m

しかし我ながら酷いなコリャ(T_T)(T_T)(T_T) 毒喰らわば皿まで?
最期まで吐き出せ鬼畜ワールド? ジェイルお仕置きのリクもあった事だし(責任転嫁)
真面目な信者様〜どうか呪い殺さないでくださいませ〜〜〜ひいいいい

不真面目な懺悔は置いておいて、今回ご使用のお道具様は
『アーム・バインダー』又は『アーム・ホルダー』で検索すれば
腐るほど画像は出てきます…Amazonでも実は販売中?
(と言うか?Amazonって、何でも売りすぎじゃないか?と思うこの頃?)

筋肉が多くて身体の硬い男性が装着しても、今ひとつ締まらないので
主に女性にしか使えない?特殊拘束具ですが…
ソコはほら?身体の柔らかい方なら?もしかしたら行けるかも?
的なイケナイ妄想ですよ〜おほほほ〜 女性の装着写真を見て脳内変化させると
もう一つ楽しめると思いますので、エロいお姉様方にはオススメです

血のお風呂に関しては、説明の必要は無いかな?
血の伯爵夫人〜エリザベート・バートリーのアレが元ネタ

それと人魚の肉を食べれば不老不死に、血を飲めば万病が完治する?
と言う八百比丘尼伝説?が一部入っておりますが
同時に身体に合わなければ、猛毒となってしまい
その場で食べた人間を、化物の様な醜い姿に変え殺してしまうという
ちょっと怖い話も少し入ってます

後半は水妖のちょっと怖い部分も出てくるかも?
このままだと、参謀が、好き勝手にやられっぱなしのMちゃんで
ただの気のいいお兄ちゃんになってしまうので、
ちっとは悪魔らしい所も見せておかないと…的な感じなのですが


果たして上手くいくかは…まぁ後半をお楽しみくださいませ

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あきゅろす。
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