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【Gt3兄弟@】
『藪蛇又は鴨ねぎのジレンマ』 前編 R-18 主にJ×L 一部アンダーグラウンド表現有り

何でこんな事になったのか?好奇心からちょっとだけ…のつもりが大事に?
俺ってやつぱり押しに弱すぎるのかなぁ…反省しよう、今回はもう遅いけど

「ちょっと待ってよっっ まさかコノままにしてゆくつもり?」
「すぐ戻ってくるから大丈夫だって、ココで俺が、行方不明だったりしたら
誰かが探しにきちまうかもしれないだろ?ここまで?その方がヤバイでしょ?」

真っ青になる俺のうなじにキスをすると、ジェイルはスッとその場を離れる
外で彼を呼ぶ声に大きな声で返事をすると、俺の肩にばさりとジャケットをかける

「用事が済んだら、直ぐに戻ってくるから、暫く一名で楽しんでよ」
「ふざけんなっっ もう良いよ…シールドくらい引き千切るからっ」

人間界で無駄に魔力を発動するのは、気が引けるけど…
ジャキリと黒い爪を伸ばした瞬間、ジェイルがボソリと呟く

「ああ…ソレ俺のじゃなくて、エースのだから、千切ったら怒るよきっと
結構高いヤツだって言っていたし…まだ録音終わってないし〜
帰ってきたらスグに解いてあげるから、大人しく待っていてよ、ルーク」

空いた口が塞がらないとは…まさにこの事だ
たかがシールド・されどシールド、確かに消耗品ではあるけれど
他魔の機材を勝手に…こんな事に使うなんて、有り得ないだろ?普通?

「見付かりたくなかったら、大人しくココで隠れていてよ、じゃあね〜」

するりと部屋出て行く、馬鹿猫に必死に抗議するが、時は既に遅い

「ちょっとっっ!!!ちょっと待ってったら〜〜〜」

悲鳴に近い俺の叫び声は、今度はキチンと閉められた防音扉に阻まれて外には聞こえない
このスタジオの中でも一番狭いこの部屋は、今回は機材置き場に使われているから
ココに置かれている機材の持ち主、俺とエースとジェイルくらいしか来ないのは
解ってはいるけど………いやローディーくらいは来るかもしれない???

途端に全身から、冷や汗が吹き出した俺は、
慌てて積み上げられたアンプの後ろにコソコソと隠れる
いきなり立ち上がったモノだから、肩からずり落ちそうになったジャケットを
慌てて押さえる、肩を床に擦りつける格好で

ああ…何でこんな情けない事になってしまったのだろう…

ガッチガチに、拘束された上半身に、幾重にも食い込んでいるのは…
よりによってエースのシールドらしい………何でそんなモノ使うんだよ!!!

自由すぎるだろうがっっっあの鬼畜猫がっっっ

とにかくジェイルの録音が終わるまで、ココに隠れているしか無いの???
いや…その前に誰か来たら…特にエースに見つかったら洒落にならない
早く何とかしなきゃ…爪でぶった切れないなら、なんとか自力で解かなきゃ

潜り込んだ隙間は、丁度この部屋の壁に取り付けられた大きな姿見の前だったので、
必死に後ろ側を映しつつ、結び目を解こうとするのだけど…
複雑に絡みついてしまっていて、どうにも上手くいかないよ

ああ…何でこんな事になっちゃったんだろう??? 半べそをかきながらルークは思う

とりあえず?俺の録音は終わっていた事だけは、不幸中の幸いなのかな?
絶対に手首にも首筋にも、痕がついちゃうじゃないかコレ…
痕付けたまま人前になんて出られないし………

何て冷静に考えている場合じゃないっっ 本当にどうするんだよ早く何とかしなきゃ

※※※※※※※※※※※※※※

事の始まりは些細な事だったと思う…

半月程前だったろうか?打ち合わせも兼ねた、ささやかな呑み会
たまたま?俺とジェイルとライデンと言う珍しい組み合わせで
人間界での行きつけの店を出たのは、夜の2時を回った頃だったと思う

そのまま、誰かの部屋で飲み直すか?もう一軒くらいハシゴしようか?と
酔った勢いで、相談していた俺達の目にフッと止まったのが
ぼんやりと浮かぶ赤い小さな看板、赤地にシンプルな黒い活字で書かれた店名は…

「EHS?何だろう?何かの略語かな?」

雑居ビルの地下に細く続いている、その店の入口の階段を見れば、
隠れ家的でオシャレな、ショットバーの様な場所?だろうか?
行った事の無い店だが?新しく出来た店?それとも今まで気がつかなかっただけ?

「タマには新店開拓も必要だから、入ってみようか?」

誰からと言う事なく、そういう事になったけど…
その時ジェイルがニタリと笑っていた事に、俺とライデンは気がついていなかった

少し重々しい感じの扉を開けて、先に店内に入った俺は
たっぷり3分程は固まっていたと思う

あの〜もしもし?何ですか?このお店は???

店内に鳴り響くアイリッシュメタルは、ボリュームは抑えられてはいるものの
変に神経を逆撫でするのは、明らかに特殊な店である事が解る内装だからだろうか?
黒白のチェッカー柄の床に落ちる、派手な色調の照明
赤と黒が基調の店内には、何故か鉄格子や吊金具が乱立している
普通の服装の客も居るが…何であそこの彼は女装してるの???
いやそれ以前にスデにパンイチの男性客も???店員なのか?客なのか?
解らない女の子達も、やたら露出度の高い服装が多い様な???
普通の格好の奴等も、巨大なサングラスやアイマスクをしている者が多い

えっと…ココはもしかして?いやもしかしなくても?
ハプニングBarとか?SMBarとか?言われる場所でしょうか???

ふっと隣を見れば、目を皿の様に見開いてるライデンが、
俺よりも固まって、ロボットの様になっているのが見える
君にとっては、「未知との遭遇」だよね…多分?
その後ろで、もう我慢出来ないと腹を抱えて笑っているジェイル…
もう…知っていたなら先に言ってくれれば、教えてくれたらいいのに

「いらっしゃい?あら?間違って来ちゃった子達かしら?」

受付と覚しき場所に座る、怪しげな占い師の様な格好の年配の女性が
ニヤニヤと笑いながらこちらを見ている、ここの店のオーナーか?
ソレに準じる立場の人間か?黒服に黒髪のワリには、キツい印象のアイメイク
派手な色のアイシャドーと真っ赤な口紅…妙に貫禄のある風貌は
SM雑誌によくある様な?手練れの女王様?か悪役の魔女の様な雰囲気で、少し怖い

「たまにはこういう店もいいんじゃない?社会勉強だと思えば?」

ひーひーと笑いながら、ジェイルは人間界での身分証明を女性に見せている
年齢確認の為と言うが…本来の目的は、身分証明の提示で?
度を過ぎた、無茶な行為に及ばない為?と噂には聴いているけど…
イキナリ何の抵抗もなく先に提示されてしまうと、此方も引くに引けなくなってしまう
ジェイルにせっつかれる様に、つい身分証明を出して、つい入店しちゃったけど
ちょっとコレからどうするのさっっ こういうノリに不慣れなライデンが居るのに?

「まぁ初めてなら無理に参加する必要も無いわ、そこら辺でショーでも見ていなさいよ」

手続きを済ました俺達を、店内にエスコートしてくれたボンテージ姿の別の女性は
そう言って、比較的?安全?な店の端の方のボックス席に、案内してくれた

慣れた感じでドリンクの注文をすると、どっかりとソファーに座るジェイル
慌ててその隣に座る俺だが、何とも落ち着かないと言うか?何と言うか………
カルチャーショックに半泣きで肩にすがりついてる、
ライデンが一緒だからかもしれないけどさ

「何?知ってる店なの?それともこういう店に行き慣れてるの?」

じっとりとジェイルを睨みながら、皮肉も込めてそう訪ねれば

「うんにゃ、わざわざこんなトコ来なくても、魔界に帰れば…俺専用のがあるし
普通の綺麗なお姉さんが居る店と思えば、別にどうって事ないでしょ?コレくらい?」

この手の店って、何となく店の外からでも解らない?
普通の店っぽく装っていてもさ、雰囲気と言うか独特のニオイでさ
全体的な客層はライトっぽいけど、ディープな奴も出入りしてる感じかな?
運が良ければ?良い見世物が見られるかもよ?だからそう目くじらを立てるなよ、
所詮相手は人間なんだしさ と暢気にケラケラと笑っている

へ〜そうですか・そうですか…
地獄最悪の拷問官のカンは、そりゃ確かなのかもしれないけど、
こんな時に発動させるモンじゃ無いだろうにっっ まったく…もうっ

そりゃお前にとっては、普通?で日常的で?どうって事無い?情景かもしれないけど
俺もライデンも慣れちゃいないんだよっっ 悪魔だからって一緒にすんなよっっ
と言う【常識的な突っ込み】は、おそらく意味も持たないのだろうな…

もうこうなったら?ただひたすら回りを気にせず飲んで食ってやる!!!
とでも思ったのか?目を伏せたまま、フードメニューを捏ねくり回し始めた
ライデンの頭をヨシヨシと撫でながら

居心地の悪さとバツの悪さに、俺は本当に困ってしまった
とにかく目のやり場に困るのだ…悪魔のクセにウブだとか?そういう理由じゃなくて
うん…実は【ちょっぴり興味がある】から、でも今日のこのツレにだけは、
それは知られたく無いんだよな… そこら辺の空気を読んでくれよ〜ブラザ〜

実は…魔界関係者にも仕事関係者にも一切秘密にしているけど
この手の店に来店したのは、今日が初めてでは無いのだ…
あくまでも社会勉強だから、人間観察の為だから、興味本位なだけだからっっっ

でも…どの店も、大概入口で身分証明のコピーをとられてしまう事もあり
どうにも思い切った行動には出られなくて…
仮世でコンビニにエロ本も買いに行けた、聖飢魔II時代ならともかく
一応今はこの仮世の顔で、芸能活動してるんだし…
何処で関係者の目が…信者の目が、Fanの目があ有るか解らないじゃないか
この手の店が増えたのが、本解散の後だった事がちょっぴり残念だなんて
欠片も思ってなんか居ないんだからねっっっ

で…結局はワンドリンクのカクテルを飲んで、短時間でそのまま帰ってしまってばかりだ
数少ない?この手の店の来訪の時は、何時も何時も…我ながら何やってんだか?
一名で来ると、本当〜にする事がなくて「間」が持たない
かと言って店内で引っかけた他の客や、店員に話しかけるのもちょっと怖い…
その後?予想だにしなかった展開になった時、どう切り抜ければいいのか解らないじゃないか?

「そう言うルークこそ、来た事あるんじゃ無いの?」

運ばれてきたカクテルを飲みながら、ジェイルがポツリと呟く

「冗談…朝までやってるBarなら行くけど、この手の店は初めてだよ…」

てか知ってたら、入らなかったよお前達とは…と続けそうになる言葉を飲み込むと
ニヤニヤと意味深な笑みをうかべ、ジェイルはこちらの様子をうかがっている

「そう…じゃ、まぁそういう事にしておいてあげるよ、
まぁ今日は【社会見学】って事でいいんじゃない?」

そういう事ってどういう事だよっっと思いつつも、反論する元気も気力も今は無い
いつの間にか注文したのか?てんこ盛りのガーリックチャーハンと
鶏からを受け取ったライデンが、色気より食い気と嬉しそうにパクついている
うん…君にはそっちの方が似合うから、大人しくカロリー摂取していてくれ

ああ…でもこんな所に、未来の雷帝を引っ張り込んだ事が知れたら
きっとデーモンに怒られる、たっぷり1〜2時間は小言を言われる
それにゼノンもきっと激怒する…こちらは、何をされるか解らないから
皇子様には、後で念入りに口止めをしておかないとね

「お集まりの紳士淑女の皆様、当店スタッフによるショーのお時間でございます
ステージ中央にご注目くださいませ………」

以外にも普通〜な感じなアナウンスと共に、中央の舞台に上がってくる二人の女性
ふ〜ん…一見してどちらが、どちらの役割であるかが解る出で立ちなんだ

そう…この手の店に来たのは、初めてではないけれど
何時も短時間で逃げ帰ってしまう為、ショーとやらを生で見る事は、
実は初めてだったりするのだ コレはちょっと期待大かも?

いやさ…この憑依体に降臨して、悪魔の記憶が覚醒するまではさ
普通の青春時代を送っていた訳だし、普通の人間の男子学生だったワケだから
普通にエロ本やら、AVやらを鑑賞していた時期もあってさ
今回は初めて【日本】って言う、この【ちっちゃい島国】だったワケじゃん?

でもその複雑な【緊縄術】って奴?【独特の文化】が本当に綺麗で芸術的でさ

他の国では見た事の無いものだったからさ、ちょっぴり興味があると言うか
生で実際を見てみたいと言うか…そういうのって有るじゃないか?ごにょごにょ

慣れた感じで?ステージの周りに集まる客の様には行かないけど
出された酒をチビチビと飲みながら、興味なんて一つも無い風に装いながら
チラ見している俺を、ジェイルはニヤニヤ笑いながら見ている

※※※※※※※※※※※※※※

初めて見たショーは、プロ同士だからか?
えげつなさは少なく、とても小綺麗に纏まっていた感じ?
どちらかが野郎だったら、特にM役がそうだったら、どん引きしたかもしれないけど
女性同士のソレは不思議な感覚で…エロさと言うより?芸術的で?
うん、見応えはあったと思う、やっぱり生で見るのは全然違うな〜臨場感が?

酔った勢いで入っちゃたけど、俺一名ではショーの鑑賞までたどり着けなかったかも?
そう考えれば?ある意味幸運だったのかも?と後になって思ったけど…

ただ問題は………ショーが終わった後だった

そもそも朝までやっている様な、Barやクラブに終電後も残っている様な輩は
そのまま真っ直ぐ自宅に帰る様な野暮天は、少ないのは当たり前だ
【お持ち帰り】が前提なのは当然で、大半はナンパや一夜限りの相手を探す者
あるいは…同系列のパートナーを探しに来ている奴等が殆どだからだ

ましてや…この手の【特殊な店】では、出会いの少なさも切実なのだろう

刺激的なショーに触発された客達は、そこらかしこで相手を探すワケだが
やはり「M」と呼ばれる方が、圧倒的に多い様だ
余程の事がなければ、生命の危機に遭遇しない現在日本では、当たり前の光景か?

気がつけば…遠巻きに取り囲まれているな…俺達?
いや正確に言えば…熱い視線のその先には、ニヤニヤと笑う【地獄の猫】が居る

何でも…その気のある人間は、本能的に【真逆のソレ】を感じ取る事が出来るらしい
つまり今ココで「最高にモテモテ」なのは、コイツと言うワケか

特に命令も指示もしても居ないのに、四つん這いのまま、おずおずと
ジェイルのショートブーツにキスをしてくる、見知らぬ女性
マスクで隠れているその顔は、結構可愛いのに…普通じゃ駄目なのか?
その顔を靴先で軽く持ち上げると、満面の笑みを浮かべるジェイル
ああ…やばい顔してるよこの男…と思った時はもう遅い
勢いよく蹴り上げられた女性が、軽く吹っ飛んでいった

何やってんだよっっ 人間相手にヤリスギだってっっ

瞬間的に俺は、真っ青になるけど うわっ…何て悪人面してるんだよっヤバイって
しかし、当の女性は床に尻餅をつきながらも、うっとりと此方を見上げて居る
途端に場の空気が変わる じわじわと包囲網を狭める客の吐息は熱い

その子にソレが許されるなら、私にも… そんなノリなの?Mの皆さんって?

「あちゃ…キスのお返しぐらいのつもりが、ちょっとヤリスギた
面倒になるから、少し早いけど出ようか?ココの分は俺が持つから…」

小声でジェイルにそう言われて、慌ててライデンの方を見れば
散々飲み食いした結果だろうか?いつの間にか、くーくーと寝息を立てている
あれだけ食べた質量は、一体何処に行ってしまうのか?
何故か軽い彼の体を小脇に抱え、慌てて席を立とうとすれば

「待って、ちょっといいかな?ルーク?」

振り返った俺の顎をいきなり持ち上げると、深々と重ねられる唇
一瞬何が起こったか解らず、目を見開く俺にかまわず
後頭部に回ってきた手が、指が、巻き毛に絡みつき、
逃げうつ頭を押さえつけ、さらに口内を深く深く貪る

「ふっ…んっ…」

中途半端な姿勢でライデンを抱えたままなので、ロクに抵抗出来ない俺
ニンマリと笑うその目が俺を見下ろすと、そのままギョロリと周囲の客を順番に睨む
諦めとも感嘆とも付かないため息と共に、周囲の包囲網が少し緩まった様に感じた

「ちょっとっっ!イキナリ何するんだよっ!!!」

こんな所を誰かに見られたら、それこそどんな噂を流されるか解らない
ようやく引きはがしたジェイルの指が、シーと俺の唇に当てられる

「だって俺の今夜の相手が決まらななきゃ、きっとココから出してくれないぜアイツ等
だったら『もう相手は決まってます』宣言をしちゃった方がいいの、こういう場所はね」

下手に後からついてこられたりしたら、お互い困るじゃないか?
一応人間界では芸能人なんだからさ? 言い分は解らなく無いけど…
おい…ちょっと待てっっ つまりアイツ等全員が、
今夜のお前の相手は、俺だって認めたって事かよっっ なんじゃそりゃっっ

勝手にそんな事されたら、風評被害が〜変な噂がまた立つじゃないか〜〜〜
真っ青になりながら半泣きの俺に、更に追い打ちを掛ける言葉が

「い〜じゃないか?俺のFanもお前のFanもソレほどショックじゃないだろ?
居もしない女とじゃれついてる噂より、喜ぶんじゃね〜の?」

何なら今度ステージで、チューでもするか?サービスで?
反省の色の欠片も無いその返しに、ゲンナリとしながらも
今はただこの場を早く退場したくて、ライデンを引きずりながら受付に戻る

ジェイルは財布を取り出していたが、受付の女性は支払いは要らないと言い始める

「お代は要らないは、今回は店持ちで結構ヨ、その代わり貴方ココの正式会員にならない?
今日はお相手が居るみたいだから諦めるけど、次回は是非お一人で………
ソコソコお客の相手をしてくれるなら、飲食代は勿論、出演料を払ってもいいわよ」

ジェイルを見上げる目は熱い…えっそんな如何にもな風体なのに
コイツも…いや失礼しました、貴女もM属性なのですかい?

「ん〜まぁ暇だったら、考えておくよ…」

また近いうちに時間が出来たらね…そう付け加えると
女性の手を取りその甲にゆっくりキスを落とす、何をやってるんだか…
やっぱりそういう事を教えたのは、あのエロ親父なのかねぇ…どいつもこいつも

※※※※※※※※※※※※※※

名残惜しそうな女性に俺も軽く会釈をすると、慌てて店の外に出る
クラクラする頭を押さえつつ、ライデンを抱えたまま苦労して細い階段を上ると
外の空は若干白み始めていた、始発もそろそろ動き出す時間の様だが
「寝た子」を起こさない無いためにも、タクシーを拾った方が良いだろう

「ライデンも寝てる事だし、今日はもう流れ解散でいいかな?」

ショーが見られたのは新鮮だったけど、何だか疲れちゃったし、次はスタジオでいいよね?
そう言ってタクシーが拾いやすいであろう、表通りに歩き出そうとする俺の二の腕を
ジェイルはグッと掴むと、少々乱暴にビルの隙間に引っ張り込む
壁際に追い込まれて、よろける俺の逃げ道を、ダンと手をついて塞ぐ

文句を言おうとするその唇を、もう一度強引に塞がれた

ライデンが一緒なのに何してんだよっ とキッと相手を睨めば
ああ…ジェイルの瞳は縦長の瞳孔が入った、金色の悪魔のソレに変化してる
多分放っておけば、このまま仮世の姿から悪魔の姿に戻ってしまう
朝から何盛ってるんだよっっこのエロ猫がっっ
そう思いながらも…変に身体の力が抜けてゆくのは、相手のキスが巧みだから
それとも…徹夜で飲み倒した疲労困憊からか?もうよくわかんないないよ…

「駄目だって…こんな所で悪魔に戻ったら、そんなにシたきゃさっきの彼女とヤれよ」

まともに蹴り飛ばされても、怒りもぜずに、うっとりと見上げてくるくらいの子だ
変なスイッチが入っちゃったジェイルに、少々乱暴に扱われたところで
むしろ大喜びするんじゃないの? 俺はライデンを連れて帰らないと…

「ん〜俺のプレイに人間は耐えられないから無理…うっかり殺しちゃったらまずいでしょ」

契約も無しにうっかり人間を嬲り殺したら、始末書などで済む話では無い
ルークならそう簡単に壊れちゃったりしないでしょ?

「それに…乳首が硬くなってるぜ、何?興奮したの?ああいうの好き?」

するりとシャツの下に入ってくる手が、ダイレクトに胸の突起を刺激する
小さく息をのみ…ビクビクと震える俺の反応を、楽しんでいやがる
駄目だって…ライデンが目を覚ましたら、この惨状をどう思うんだよっっ

「どうせライデンは爆睡中だろ?このまま放置されたら辛いでしょ?ルークも?」

いいじゃん…どっかのホテルに行こう、何時もより優しくしてやるからさ…

妙に甘ったるい声が耳元で囁かれ、首筋をぺちゃぺちゃと舐められる
ワザと音を立てられると…続きを期待する感覚に、
ゾワゾワとした何かが背骨を駆け上がる、駄目だって引き摺られたら
でも…気持ちが良すぎて、このまま帰宅してしまうのが段々惜しくなる
俺の吐息に熱が籠もってゆく様を、細くなった金色の目がじっとりと見ている

………二間続きの部屋とかなら、寝かしつけておけるかな………

「万が一皇子様が目を覚ましちゃった、交ぜてやれば良いだろ?」

ポツリと呟かれる殺し文句と思われる言葉、
だが…コレがかろうじて俺を正気に戻してくれる

反射的にジャキリと伸びる、俺の両手の爪
不意打ちのつもりで繰り出した攻撃は、ジェイルの頬を掠りはしたけれど
紙一重の所で避けられる、薄く皮膚を破った場所から、じわりと血が滲む

「この馬鹿猫っ そんな事したら精霊界との外交問題に発展するわっっっ」

普段はその事を忘れがちだけど、ライデンは雷精の皇位継承者だ
ソレが…前後不覚になるまで酒を飲まされたあげく、
上級悪魔とは言え一介の悪魔と3Pだなんて洒落にならない…大スキャンダルだ
ライデンの意思でそうなったとしてもだ…それ以前にそんな事ゼノンに知られたら
問題発覚の前にマヂに殺される…想像も付かない程えげつない目に遭わされるに違いない

それよりも何よりも…色恋沙汰の対象として、ライデンを見た事が無い
純粋な友達なんだから、濡れ場なんて絶対に見せたくないっっっ
俺がめちゃめちゃ恥ずかしいじゃないかっっ 何引き摺られそうになってんの?俺?

コレも全部・全部、おかしな場所に引っ張り込んだジェイルが悪いんだっっ

「もうっ俺は帰るからなっっ お前は他を当たりやがれっっ」

そう捨て台詞を残し、小脇にライデンを抱えたままのルークは
逃げる様にその場を後にする、真っ青になったり赤面したり忙しい事だ
ぷんすか怒っているらしい巻き毛は、ほんの少し浮き上がって膨れている様に見える

「やれやれ…振られちゃったか、まぁ仕方ないか…」

残されたジェイルは頬の傷をぬぐうと、甲に付着した自分の血をチロチロ舐める

まぁいいさ…チャンスはいくらでもあるし…
【こういう事】は時間をかけて、ゆっくりと逃げ道を塞ぎ、追い込んでゆく方が楽しい

特に相手がルーク、お前ならね………

無駄に滾った血を鎮めたければ、ちょこっと魔界に帰ればいいだけの話だ
俺専用のオモチャも玩具箱にも、不自由はしていないのだから

完全に悪魔の姿に戻ったジェイルが、何も無い空間に手を翳すと
捻れる空気の振動と共に、ぽっかりと口を開ける地獄への入口
その先には…荒野にそびえる高い城壁…地獄の最下層、最高刑務所
かすかに聞こえるのは、捕らえられた虜囚の悲鳴と呻き声、
あふれ出す灼熱の空気には、怨念と血のニオイが入り交じる

一度入ったら最期…生きては出られないと言う、ジェイル専用の玩具箱

ねっとりとした薄暗い笑みを零すと、吸い込まれる様にその中に彼は消えていった
ここ最近人間界での仕事が変に忙しく、地獄の本業がおろそかになりがちじゃないか?と
小言を言われたばかりだからね…赤い悪魔に、今日は久しぶりにイイ仕事が出来そうだよ

八つ当たり半分に嬲られる虜囚は、否、生け贄は、今回どれだけ出る事やら?

悪魔の姿が完全に消えてしまうと、空間の歪みはあっと言う間に消滅する

雑居ビルの路地裏には、周囲より少し遅れて朝日が差し込んでゆく
何事も無かった様に何時もの朝を迎える、その空気は静かで穏やかだった…


続く


「読み切り」にするつもりだったのですが、長くなったから切ります
と言うか?コレも一種の焦らしプレイ?と考えて楽しんでいただければ幸いです

変な所で切るなんて酷い?ああ酷いですとも〜だって錆寝はリアルS子だもん 
壊れちゃってナンボですから?タマにはこんなのも有りでしょ?



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あきゅろす。
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