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【RX+師弟悪魔】
『カミサマと自己満足』 1 R-15 RXZ微妙な三角関係

「ゼノン?居るか?」

何時もの局長専用の研究室に居なかったから、多分此方のはず…
プライベートエリアの温室を、入口から覗きこんだ、ゾッドは、
一応大きな声で、呼び掛けてみるのだが、返事は帰って来ない…

温室に放された、細かい小動物や鳥、虫の羽音くらいしか聞こえない

まぁ普通の奴だったら、ここで諦めて帰る所だが
そこは師弟関係のある間柄だ、特別に無断侵入も許されている彼は
大柄の身体からは想像も出来ない様子で、慎重にそっと結界を飛び越える

魔界で一番強固な結界を、張る事の出来る、ゼノンのソレを
何の苦も無く飛び越えられるのは、彼くらいなモノなのだが
だからと言って、ずかずかと乱暴にソレをぶち破る様な、無粋な真似はしない

結界は術者にとって、心の壁と同じ様な意味合いを持つ、強固であればある程に…

それを粗末に扱う事が、出来なくなっている、その意味を知った今はもう
全ての結界を、無条件に飛び越えられる、特殊能力者であってもだ

特にココの結界を破壊したのは、後にも先にも、最初の一回だけだ…
だがソレはまだ、後先を考えない若気の至りだから出来た事
ココの主の人となりを、よく知らなかったからこそ出来た暴挙だ
もし…ちゃんとソレを知っていたら、理解していたら…

多分あんな無茶な事は、出来なかったかもしれない、その後が恐ろしくて

「見える範囲に居ないって事は、相当、奥まで行っていやがるのか?」

キョロキョロと辺りを見回すのだが、目指す相手の姿は見えない、気配も感じない
でも…この中に確実に居る感じはする、この広い温室内の何処かに

ゾッドは、やれやれと溜息をつきながら、手にした荷物を肩にかつぎあげる

それほど重量は無いのだが、割れ物と繊細器機が、細かい部品が多い為、
ちょっと過剰に、梱包しすぎたかもしれないな
いくら人間界に行くついでにと、頼まれたオツカイでも
嵩張って、持ちにくくて仕方が無い分、出来れば今日中に渡したいものだ

【極内密】に頼まれたモノであれば尚更、職員に預けて、後は宜しくとは言えないからな

それ以前に、こんなモノを購入して、一体どうするつもりなのか?
ちゃんと理由を聞くべきか?何時も通りに余計な口を挟まない方が、剣呑なのだろうか?
思案しながら歩くゾッドの足取りは、心なしか何時もより重い…

何だか…良からぬ予感はするんだよな〜予感は…
こういう時の予感は、何故だか?大抵当たってしまうから始末が悪い

※※※※※※※※※※※※※※

そう、それは…僕の不注意でもあったんだよね

確かにその夜は変に?蒸し暑くて、寝苦しかったからね…
無意識に胸元を広げたまま、うたた寝をしていた僕にも非があるよね
昼間からライデンが遊びに来ていたのに、仕事があってちょっと待たせてしまったのに
彼がシャワーを使っている短い間なら…と
慣れからくる?油断みたいなモノも、確かにあったんだよね

「………ねぇ、ゼノンって、こんな所に刺青入れていたの?」

その声に気がついて、慌てて目を覚ましたけど…隠すにはもう遅い
潤んだ大きな目が、じっと、それこそ穴が開きそうな勢いで、僕の胸元を覗きこんでいる

左胸の魔女の紋章と、ソレに絡みつくルークの青龍を

「ああ…話してなかったよね、コレはね…」

出来れば…君には見せたくは無かった…

見せる必要の無い相手に、見られる危険のある時は、
事前に目くらましの魔法を掛けていた、今迄は…
なのに…今日に限って、一番見られたく無い君に、コレを見つけられるなんて
いくら疲れていたとは言え…迂闊な自分が情けないよ

でも…見られてしまったからには、見付かってしまったからには、仕方がないからね
変にごまかすより、きちんと説明をしておいた方がいいだろう

きちんと経緯は話した、コレはファッションじゃなくて、魔女の内弟子時代に入れた事を
所属ギルドを示すモノで、ギルド内の情報を漏らさないと言う、誓いの印である事
ソレに絡みつく青龍も同等で、ルークの水妖の秘密を、記録・公言しないと言う証であって
水妖全体との争いを避けながら、彼の主治医になる為には、やむを得なかった事も
全て説明した…納得した上で受けた、強力な【呪詛】でもある事も

特に青龍の方は、一度見てしまえば…呪詛の相手がルークである事は、彼を知る者なら誰の目にもバレバレで
変に誤魔化したりしても、誤解曲解されてしまうと厄介だ…と思ったからなのだが…

どうやら雷帝の御子息の、お怒りポイントは、別の方向に向かってしまわれた様だ
ある程度は予想の範囲ではあったけれど………

「ずるい…魔女の紋章はともかく、ルークの模様がココに入っているなんて」
「ライデン?」
「俺の印もココに入れてやる、そんでゼノンの印を、俺の同じ所入れてよ」

ねぇ…いいでしょ?そう言って、僕の上に馬乗りになって
半泣きの目で見下ろすその顔が、妙に真剣で困ってしまう
言っている事は、単なるワガママな上、かなり無茶苦茶で、横暴で
一時的なヤキモチから来る?子供じみた、意地の張り合いみたいなモノだけど

【誓い】って部分が、悪かったのかな?

独占欲を満たすのと共に、何だか崇高な感じがしてしまうものね
動揺からだろうか?僕とした事が、説明の言葉選びを、ミスってしまったのかもしれない

ああ…見せてしまえば、絶対にこういう反応をするとは、思っていたけど
僕のソレに、自分の印を上書きするだけじゃなくて、まさか自分にも印が欲しいなんて…

過剰反応が過ぎるんだよ君は…僕はそんな事望んだりしないのに

それに…未来の雷帝にそんなモノを、入れられるワケ無いじゃない?
高官であっても一悪魔に過ぎない、僕やジェイルとは、ワケが違うのだから
それに…そうじゃなくても、君の衣装は露出度が高いんだから

悪魔の印なんて、大問題だよ、下手をすりゃ精霊界との外交問題だよ

「これは…刺青ではあるけれど、呪詛だからね…進んで入れるモノなんかじゃないよ
僕は君に呪詛を掛ける気は無いし、君も僕に掛ける呪いなんて無いだろう?」

出来るだけ優しく、話題と興味を逸らそうとはしたのだけれど
相手は尚も食い下がる、何時もの可愛らしい駄々では無い分、参ったなぁ
でも…頭ごなしに駄目と言ったくらいじゃ、多分諦めてはくれないね、これは

仕方がないね…君に嫌な思いは、させたくは無いのだけど
少々のお灸は必要かもしれないねぇ、この堂々巡りな状況を打開するにはね

※※※※※※※※※※※※※※

「居た居た…何やってるんだ?ゼノン?」

木々の間に目指す相手の姿を見つけた、ゾッドは生い茂る枝葉を掻き分けると
何やら一心不乱に作業に没頭しているらしい、ゼノンの側に近づいた
木漏れ日の下の、テーブルの上に広がっているのは、何かのラフ画?
同じ様で、少しづつ違う図案が、何枚も広げられているのだが

あれ?コレは何処かで見た事があるぞ、何だこりゃ?????

「ああ…お帰りゾッド、頼んだモノは持って来てくれたかい?」

作業用のメガネを掛けたまま、振り返るゼノンに、
頷いたゾッドは、そっと持ってきた荷物を下ろす

ぱりぱりと、その場で開けられた箱の中には、クッション材が幾重にも重なり
その下から、対人間用のアート・タトゥー用の機械彫りの機材一式と、各種針とインクが
図案転写用のシートに薬剤、それに保護フィルム、手術用手袋等が、次々と取り出される、
ココでも用意出来るケア用品を除いて、どうやら必要なモノは、一通り揃っている様だ、
そのまま小規模のスタンドを、開業するくらいのレベルの本格的なモノだ

念のため【手彫り】の方の針やニードルも、手に入る分は、購入してもらったが…
どうにも針が長すぎるコレは、初心者の手には余りそうな代物だね
ソレを手にとって繁々と眺めていると、すかさずゾッドが口を出してくる

「こんなモノを買ってどうするんだよ…人間の真似事なんてらしくないぜ」

今更タトゥーなんざ、入れる気かよ?でもアンタが、その手モノを好むなんて珍しい
爪先にちょいと力を込めりゃ、好きな模様が入れられるだろ???
無駄に痛い思いなんかしなくても、簡単だろ?

怪訝な顔をしている弟子に、ゼノンはニタリと嫌な笑いを返す

「僕が、他の誰かに彫るならね、確かにその方が早いけど…今回は違うからね…
コレの持つ意味を、ちゃんと知ってもらいたいから、だから面倒な手段を踏むんだよ」

機械針の稼働テストをしている様なのだが、その顔は何時になく真剣で
彫り込む対象者よりも、ソレを使うモノの手に伝わる、振動の方が気になる様だ

間抜けな話だが、ココまで来て、ようやく散らばったラフ画が、以前見た事のある、ゼノンの紋章で
どうやら?それに何か他の図案を、付け足そうとしている意図が、ようやく飲み込める

「おい…俺は嫌だからな、絶対にやらないからな………」

手近な椅子に腰掛けたゾットは、不機嫌そうに尻尾を揺らしながら、露骨に嫌な顔をする

閻魔大王などと言う、それらしい役職についているにも関わらず
意外にもゾットは、【流血】好まない、生粋の悪魔のくせに、

戦闘や修練で流されるそれ以外は、極端に嫌がる傾向がある
喰うためと、戦うため、ソレに意味が無ければ、どうやら許容出来ないらしい

他の悪魔の様に【遊び】で流すソレなど、もっての他…それが他者であれば特に
大した理由も無く、身体を傷つける行為自体に、どうにも嫌悪感がある様なのだ

かつては…戦場で、一番手柄を欲しいままにする、凶暴な暴れ者でもあり
ほんの少しだけど、僕と同じ殺戮を好む【鬼】の血も引いていると言うのにね

この意外な程、優しすぎる性質を知る者は、ごく親しい間柄の者だけだ

いやだからこそ?だろうか?
確かに僕等に比べれば、やや魔力は劣るものの、戦闘能力はずば抜けている
そのまま軍部に残れば、軍の要職に就いても、おかしくなかったのに
陛下は突然、彼を【対人間用の地獄の裁判官】に、一見?似合わない役職に大抜擢したのだ

転生前の魂だけの【人間】には【悪魔召喚】の権限は無い
取引出来ない彼等がどうなろうと、魔界の住人にとっては、どうでも良い事なのだが
コレも人間と関わるモノの、その魂を糧にする存在の【理】と言うモノだろうか?

死人の魂は選別され、天界に召されなかった、【汚れた人間】とやらは
かつての聖戦における堕天使達のごとく、無条件で地獄に堕とされてくる

その罪を精算して、新たな身体を持ち転生する為とやらに

地獄ではその魂を更に選別、生前の【罪】に応じた罰を与え、浄化する役目を負っているのが…
実際に手を下すのが、判定を下した、天界人ではなく、魔界の住人とは…
冷静に考えれば、滑稽な話ではあるのだが

神と悪魔の【協定】と言うカタチで、太古から決まっている事なので仕方がない

堕ちてきた魂の、堕ちる地獄を、更に細かく決定する【閻魔大王】の役職は
匙加減が難しい上に、自ら進んでやりたがる悪魔も、あまり居ないポストであるため
任命されたモノには、ソレを拒否する権利も、与えられているのだが

ゾッドはソレを、特に拒む事もなく、二つ返事で勅旨を受け取ると
王都から遠く離れた辺境である、泰山の閻魔殿に赴いて行ったと言うからね
中央政権のごちゃごちゃとした喧噪を嫌って…と本魔は言っているけど
色々あるのだろうね、ゾッドなりに色々と、でもソレを踏まえても、随分思い切った決断だったと思うよ

まぁ…最初から?陛下も断らないと考えた上での、異動だとは思うけどね
いかに天界から地獄側、に体裁良く「押し付けられた役割」とは言え、
ゾッドの繊細さと優しさが、人間の罪人を公平に裁く者としては、最適と考えたのだろうね

この子の事をよく知らなかった頃なら、その異動に違和感を持ったはずだが
今考えれば…コレ以上適役な悪魔は居ないかもしない、と僕も考える事もあるからね

「大丈夫だよ、お前にやらせるつもりで、コレを取り寄せたワケじゃない
なるべく単調な図案にするけど…多分?動揺で輪郭とかが、歪んじゃうと思うから、
最終的な仕上げは、手伝って欲しいんだけど………ソレも駄目かい?」

そう言って、コレが【最終案】なんだけれど、どう思う?
と、ひらりと渡された図案を見て、ゾットは目を見開いた
まさか…アンタ、コレを、あんな子供みたいな奴に、やらせるつもりかよ…

何時もなら…アイツのワガママなら、笑って済ませるアンタでも
アレは流石にカチンと来ている、のは解らなくも無いのだが
だからと言って、アイツ自身にやらせるなんて…ちょっと酷すぎや
もとい教育的指導が、お仕置き?が、過激すぎやしないか?

「この間の騒ぎは聞いてはいるが、デーモンがコレを知ったら、怒るんじゃないか?」

仮にも彼は、同盟関係にある、精霊界からの預かり物で、皇位継承者だ
知らなくて良い余計な知識を付ける必要も、過激すぎる経験をする必要は無い
と思うだろうな、あの副大魔王なら…

だが目の前、怒るとおっかない鬼畜師匠なら、そういう面は、情け容赦が無いからな…
相手が大切であればある程に、そう思い詰める分、やり方と手段が手酷くなるのか?

「事が済むまで、お前が黙っていてくれれば、問題は無いよ
閣下には内緒にしておいてくれるよね?悪い様にはしないからさ…」

ねっ?と首をかしげながら、ニヤニヤと笑っている顔は、
今回の事に不満と憤りを感じている?ワリには?妙に楽しそうで
ゾッドはぶるりと身震いをする、嫌なスイッチが入っているな…
角が変形してなくて、本当に良かったよ

踏まなくていい地雷を踏んだな…ライデン…

甘やかされているばかりで、本気で怒ったゼノンを知らないであろう彼に
ほんの少しの嫉妬と、憤りを感じた事が無い…とは言い切れないが
それと同じくらい、ライデンが知らないであろ?ゼノンの別の顔を知ってる…
その事に、仄暗い優越感も…多少ながら有ったりもするのだが

今回の件だけは、ココには居ない相手を想いながら、心底同情してしまう
何事も経験だとは言っても、変なトラウマにならなきゃいいけどな

「まぁ…俺はアンタの決めた事には、口を出すつもりはねぇよ
デーモンに告げ口するだって?今迄そんな事した事あったか?」

更に不機嫌そうに答える弟子に、ゼノンは「そうだね」と苦笑して、近づくと
その顎をツイと持ち上げて、その唇に自身のソレを重ねる

「コレは口止め料…お前は物わかりが良くて、助かるよ」
「ああ、そうですかい、そうですかい…」

物わかりが良い…と言うつもりじゃ無いんだけどな、と思いながらも
ゾッドはその反論を、口には出さずにに飲み込んでしまう
ゼノンのこういう反応は、おっかなくもあるけど、可愛らしい所でもあるから
俺は余計な出歯亀はしないから、アンタの受け売りじゃないけどな

※※※※※※※※※※※※※※

『必要なモノはそろったから、今晩ウチに泊まりに来てよ』

ゼノンからの短いメッセージが、端末に入って来たのを確認すると
ライデンはにんまりと、添付ファイルの画像を見る

元から入っている呪詛の上に、違う図案を重ねる事は、流石に出来ないから
元からあるモノに添える感じなら、君の印を入れてもいいからね…

だけど、コレは【通行手形】みたいな意味もあって、
必要のある時は、他魔にも見せるモノでもあるから
図案は、僕が考えていいかな? 勿論、先にソレでOKか?君に確認は入れるから

ゼノンは文化局の局長であるのと同時に、魔王宮の【宮廷画家】でもあるから
その提案に異論は無かったけれど…どんな図案になるか少し心配だったんだ

もし申し訳程度に、足されたくらいだったら、とりあえず俺のヒスを収める程度だったら
何だか、逆に哀しくなっちゃうじゃないか…

あの時のゼノンは、随分困ったな顔で、俺の馬鹿げた提案を受け入れてくれたけど
出来上がった図案は、俺の気持を、充分に取り入れてくれたモノだった

毒使いのロクスタの系列魔術師である事を示す、魔女の飾り文字に、
同化して巻き付いているルークの青い龍、その図案を全体を包み込む様に
新たに足されているのは…三日月の様に長く伸びた、俺の頬の稲妻の赤

理不尽なのは解っている…本当はソノ上から、書き足してやりたいくらいだったけど
想像していたより大きく、大胆に付け加えてくれた事が…
何だかとても嬉しくて、ちょっぴり泣きそうだったのは、内緒にしておこう

『うん…コレでいいよ、俺に彫る分もゼノンがデザインしてよ』

そうメールを返すけど、それに対しては、なかなか返信が、返ってこなかった

それでも、俺はかなりご機嫌で、デーモン家の執事に連絡を入れる
今夜はゼノンの所に泊まるから、お屋敷には帰れないから、閣下にも伝えておいて
駄目って言われる事は無いのだけれど、居候としては連絡しておかないとね

さてと、今夜が楽しみだけど、結局【彫り師】は誰を呼んだのかな?

魔力じゃなくて、クラシカルな方法でやりたいって、ゼノンは言っていたけど?
俺はあんまり絵心に自身が無いから、プロに任せるしかないけどさ
俺は出来れば…ゼノン本魔に入れて欲しいんだけど、それもワガママすぎるかな?

その後の公務は全くの上の空で、殆ど手がつかなかった
しまいには「何か良いことでもあったのかい?」と、ダミアンに言われてしまったけど
実際に入れてしまうまでは、いくら話が比較的解る、親しい兄貴分でも黙っておこう

絶対に怒られて、反対されてしまうから、こういうのってヤッたモン勝ちでしょ?

後は彫りこむ場所を考えなきゃね、あんまり?変に目立つ場所だと
やっぱり?多少は、公務や正装に、差し障りがあるかもしれなし…
だからと言って、全然見えない所に入れるのも、何だか意味が無い気がする
いっその事?ジェイルみたいに?二の腕に入れた方がいいかな?
長袖しか着られなくなっちゃうのは、少し困るけど…
困る時は…大きめの装飾使用の腕輪なら、隠せなくも無いよね?

※※※※※※※※※※※※※※

夜になって…約束の時間になったら、文化局から魔王宮に迎えが来た
何時もの馬車じゃなくて、ゾッドだったのが意外だったけど…

その上、何時もだったら、「危ないから、絶対に駄目だ」と言って乗せてくれない
通称【ヘル・バイク】愛車の大型のバイクで乗り付けて来た事に、とても驚いた

勿論人間界のソレとは全然違う、基本的なカタチは、ハーレーのグレイス系に似てるけど
髑髏に似た、巨大なフロント部分を持ち、ゴテゴテと厳つく飾り立てられたソレは
一種の生体魔法具の様なモノで、メカでありながら生きていて、自己意識もある
融合しているのは…炎系列の魔物なのだろうか?詳しい事は解らないけど

乗り手のゾットの心理状態のままに、加速すれば、前輪と後輪から派手に炎が上がる為
王都では滅多に乗らない代物で、プライベートのツーリング専用車なのに…

今夜は、どういう風の吹き回しだろう?以前から、一度は乗せては、欲しかったんだけど

「いいから、早く乗れよ…」

そう言われて、ライデンが、慌ててゾットの後ろにまたがると
それを見ていた門番の衛兵は、露骨に嫌な顔をする
俺の立場を考えれば、やっぱり…責任問題とかになってしまうのだろうか?

「そう心配しなくても大丈夫だ、行政区内で飛ばしたりはしねぇよ」

雷帝の御子息を乗せて、派手に飛ばしたりデキねえだろ?

ゾッドは、そう衛兵に告げると、許可証の様なモノを投げ渡す
一応はこの下級官吏の立場を考えた、彼らしい配慮なのだろうか?

そのやりとりを眺めながら、俺はその腰に回した手にギュッと力を込めると
行き場を失ったゴワゴワの尻尾が、スルリと俺の腰に回ってきた

滅多にない、バイクの二人乗りは、凄く嬉しいのだけれど、何だか少し怖い
ゾッドは何時もの様に、気さくに話しかけるでなく、少し怖い顔で此方を見ていたから

あれ?何か怒られる様な事したかな?それとも今夜の件がバレている?

逆巻くゾットの髪と、心地良い夜風を感じながらも、はしゃぐ事が出来ず
その背中にすがりつきながら、黙って首をすくめていると
充分に王宮を離れた事を確認してから、彼は静かにその口が開いた

「ゼノンが決めた事だから、俺はコレ以上とやかく言う気は、無いけどな
お前まで、対になるタトゥーを入れたい!って言うのは、流石に頂けないな
俺やゼノンと違って、お前は一応、雷帝の皇子様だろう?立場ってモノを考えろよ」

背中越しで顔は見えないけど、明かに怒っているその声に、俺はビクリと震える

滅多に怒らないゾッドに、怒られると何だか…妙に凄みがあるし
自分が、もの凄く、悪い事をしている様にも感じるのだけど…
俺も今回は引けないよ、だってゼノンは、良いって言ってくれたんだもの
ちゃんとデザインまで考えてくれたんだもの…喜んではいないかもしれないけど

ココでゾッドに怒られたからと言って、気弱を起こして、諦めてしまった
その思いも踏みにじってしまう様な、嫌な気持になるから、
俺も思わず反論してしまう、自分でもびっくりする程、派手に噛みついてしまった

「解ってるよ…無茶な事言ってる事くらい…でも嫌なんだもん
ゼノンの胸の上に、他の誰かのマークが入っているなんて…
他の印が入っているのに、俺のソレが入れられないのが、寂しいんだもの…」

俺だけのモノになんか、なってくれない事くらい解ってるよ
悪魔なんだから、他にも好きな奴が居たって、しょうがない事くらい解ってるよ
でも…その中で1名でいいから、一番好きな相手で居てほしいんだもん
一番好きでいてくれるなら、特別な存在になれるなら、自分にもタトゥーくらい入れるよ
それだけで、そんな気持になれるのなら…公務に差し障らない場所ならいいじゃないか
俺だってもう子供じゃないんだから…皇位継承者だから駄目とかもおかしいよ

そう言って噛みついてくる、ガキンチョの目は、大粒の涙を流しているのか?
背中越しに聞こえる声は震えていて、無遠慮に擦りつけられる相手の頬から、生温かい何かを感じて
ゾットは思わず面食らってしまう、おいおい泣いてるのかよ…
俺がお前を虐めているみたいに、なっているじゃないか…調子が狂うな

見た目もやる事もガキっぽくても、コイツだって立派な成体だからな…
コイツと、皇位継承者であるコイツの立場が大事だからと、
決定的な関係をのらりくらりと交わす師匠の態度は、
かえって酷なんじゃないか?と思う事もある

それで変な方向に思い詰めた、コイツの気持も解らなくは無いのだが…

悪い事は言わない、素直にココで諦めた方がいいぜ
お前が考えてるより、ずっと怒っているんだぜ、ゼノンの方が
これから与えられるであろう、かなり度の過ぎた【教育的指導】を考えれば
根は箱入りで無邪気で、気持の優しいお前の事だ、きっとトラウマになりかねない

血を好む俺達【悪魔】とは、根本的な所が違う、別の種族なんだからお前は
それを明確に告げられない、今の立場がもどかしいよ

元を正せば、ガキの可愛らしい癇癪と、独占欲みたいなモノじゃないか何時もの
無茶なワガママを言い出した、コイツが確かに一番悪いのかもしれないが
胸の紋章を隠し通さなかった、ゼノンも充分に問題だよな…
と思えばこそ、此方も言葉に詰まってしまう、俺もゼノン同様にコイツに甘いのだろうか?

コレ以上俺の背中を、フェイスタオルの替わりにされても、叶わないので…
適当な路肩で、一度愛車を止めて振り向けば…
言いたい放題に、不満をぶちまけた皇子様は、真っ赤な目をぐしぐしと目を擦っている
身長差からソレを見下ろすカタチのゾットは、困った様に頭をかく

何故そんなに形式的なモノにこだわる?何を心配してるんだ?
俺から見れば、逆に解らないのだがな…今の状態がそんなに不満なのか?
確かにゼノンの交友関係は、無駄に広すぎる上に、為体が知れない
エースの様に表立った、派手な遊びこそはしないが、何気にモテるからな
関わりの深い魔女を始め、種族・階級を問わない、結構な数の女共に

だが…ソレはソレだろうに、アイツが一等に大切にしてるのはお前だぞ
端から見れば、過保護すぎると思うくらいに、なんで解らないのかねぇ
まぁ…今回の一件も、コイツが大人になる為の?階段みたいなモノかね?

「解った…解ったから、もう泣くなよ、俺が虐めてるみたいじゃないか」

ほわほわの金の頭をワシワシと撫でてやりながら、ゾッドは困った様に溜息をつく
その顔は何時も通りの、柔和な表情に戻っていて
ライデンは少しだけ安心した事は、ゾッドには黙っておこうと思った

「だが…これだけは覚えておけ、目に見える証しか信じられない、
脆弱な人間じゃないんだぞ俺達は、解ってるな?
ゼノンは望んではいないからな【入黒子】なんて…縁起でも無ねぇからな
万が一コレが外交問題に発展しそうになったら、お前が死ぬ気でゼノンを護れ、
それだけは約束しろよ、解ったな…」

「………うん」

ああ…もうそんなに泣いてるくせに、嬉しそうな顔するんじゃない
なけなしの俺の良心が、チクチク痛むじゃないか、チクチクと

結果は…多分、今、お前が望んでいるモノとは、違うモノになるだろうけど



続く(汗)


ほのぼのと見せかけて、またダークワールド全開になるかも?

RXネタで何で【刺青】ネタになるんだよ、そんなの多分ウチくらいだよね
そんで…多分この微妙〜なグロ展開も、ウチしか無理なんだろうな…多分
ライちゃんネタなのに、黒すぎる…ありえへん… 何でこうなるんだろう?

みんなのアイドル・愛されキャラに、何やらせんねん!くらっ!
とお叱りを受けそうですが、全国のRXファンの皆様、誠に申し訳ございません

いつの間にやらエロサイト化した為に、ウチでは、あまり出番の無いライちゃんは
出てくると、何時もワガママ大爆発なのも困ったモノだ
たまには…ちゃんと可愛らしく書きたいんですけどねぇ、
そのコマンドと、引き出しが希薄すぎるんですよ〜管理人が、甘えベタの根暗Sなので

相手がド鬼畜ですから、書き手が変質者だから、なかなか上手く書けなくて
愛が無いワケじゃないんです〜愛が〜 信じてくださいクスンクスン

親分+バイク設定は、本物がバイク乗り?だから?(ネタ的な借り物じゃなければ)
以前のJAP工房のBlogに、バイクに跨がり仮世姿で出演した時の、イメージで
ハーレー・ダビッドソンでは、無かったと記憶しておりますが(^_^;)
魔界バーションは、映画版『ゴースト・ライダー』の【ヘルバイク】がぴったりかなと
独断と偏見でチョイスで御座います…興味と関心のある方は、画像検索かけてみてくださいね

刺青を否定も肯定もしませんよ、アレはあくまでも【自己責任】ですから

大昔の様に、戦で首を取られてしまったり、海で死亡した場合
その遺体を自分と確認してもらいたい、亡骸だけでも家族の元に返りたいと言う願いや
宗教的・呪術的な意味合いとは、違いますからね、今のソレは多分

その筋の人達に育てられ、色鮮やかな背中を見ながら育った私ですが
そんな私でも、年頃になって二の腕に「黒蜥蜴」を入れたい!と相談したら
その場で、吹っ飛ばされましたからね(苦笑) そういうモノだと思ってます
一時的な感情や、半端な覚悟で入れるべきモノじゃないんです

今は無類の温泉好き・銭湯サウナ好きなので、
問答無用で、吹っ飛ばしてくれた方には、逆に感謝しておりますが

因みに…○△命みたいな?【入黒子】は基本止めた方が無難です
あくまでも相手に知らせない、片思い的なモノでも…極力やらない方がいいです、

冷静に考えれば…『重い』ですよねそんなの?多分?名前を彫られた人は特に

だから【入黒子】なんかすると、破局するカップルの方が多いんですけどね
どんなに濃厚で、いちゃいちゃ・べったりな二人でも、冷めちゃうんでしょうね
でも若気の至り?でやっちゃう子も多いんですよね、それが【付加価値】と勘違いして

ただねぇ…今回みたいに、予め?相手の肌にソレが入っていたら
しかも?知ってる奴を表すモノだと…やっぱりヤキモチ妬いちゃうかな?
ライちゃんじゃなくても?多分? 理由が頭では、ちゃんと解っていても?

さて次回は…ヤッてる事は大した事がなくても、流血表現が少しエグイかも
本来は出来ない子に、そういう事を好まない相手に、
無理矢理、加虐側をやらせる表現も、心理描写も…

そういうのが大丈夫!って方のみ、【次へ】で続きをお楽しみください

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あきゅろす。
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