1 俺にコイツぐらい強い力があれば―――なんてバカみたいに何度も考えた。 「行かないで、彩」 軋むほど強く捕まれる華奢な俺の腕。 このまま俺とコイツふたりが一緒にいたら、いずれ傷つくことなんて目に見えてるんだ。 「俺の側から離れないで」 今まで聞いたこともないくらいの弱い声。 俺が言わないといけないことは、言いたくないと喉が狭まってしまう。けど怖がっているだけじゃ全てが悪い方へ進んでしまうんだ。 「徹……もぉ徹とは……付き合えない……」 固まる徹に泣きそうになる。今泣いたらダメだ。徹を、俺から離さないと。 「ごめん……」 [次へ#] [戻る] |