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「徹は、能力とか、信じるかい?」

葎が振るったナイフを、徹はナイフで止める。しかしそれを簡単に退け払い押し進た。矛先が徹の腕をえぐった。軽い傷のせいか顔を歪めるほどでもなかった。

「そんな、魔法とか大それたものじゃないよ。願い事を叶えるための力さ」

「……?」

「……信じてないって?」

ははっとあきれたように笑う。

「徹の回りにも数えきれないぐらいの可笑しな事が起こってただろ?」

葎は徹の腕を指差す。

「ほら、今さっき俺は徹の腕をえぐった。なのにどうして傷がもうないのかな?」


徹はあえて腕を見なかった。自分のからだのことだ、傷をつけられたあとどうなっているかなんてわかりきっている。きっと葎に傷つけられた腕の傷はもうないのだろう。

「……俺の能力は、全部ダメな方に引っ張っていく能力みたいだ。うん…俺の回りの人に不幸をもたらす」

葎は自分に納得させるような言い方をし、徹に説明をした。

「俺はこんな世界で生きてるのが嫌で、どうしても消えたかったんだ。だけど、俺が先に世界を嫌ったのがダメだったのかな…」

葎は新しいナイフを逆手に抜き、自分の手首に刃を向けた。縦に引けば、手首半分は裂けるであろう。葎がぐっと引こうとした。その瞬間、葎のナイフを握った手は電気が流れたように痙攣し、うまく握れなくなった手からナイフが落ちた。


「俺を死なせてくれない」


その一言から、葎の感じた絶望や悲しみ、疲労がどっと伝わってきた。


「嫌だったこんな力。だから殺してほしかった…っ、消えたかった……!」

「………」


「徹と俺が初めてあったときのこと、覚えてるかい?」

「……ああ」

「徹をはじめてみたとき、異常だと思った…っ!だってあの建物の徹がいた一階だけ新しくて、徹の回りだけ草が生えて、地面の血は致死量だったのに徹はピンピンしてた!」

早口になる葎。興奮し、まるで憧れてるものを語るかのようだ。

「なにより、あのとき、徹自身、自分の異常に気づいていた」

「…………」

「そのとき、俺の首をかっ裂いて、殺してくれるのは、あんただって、体が感じた」


ーーだから、俺はこの地位を利用して、徹に嫌がらせしてずっと、ずっと待ってたんだ。徹に大切なものができるまで。やっと作ってくれた。徹がROLLを襲ってくるように、そんで、最後にここで俺を殺すようにシナリオ作って、やっと、俺は消えることができるんだ…っ!

「俺の最後から二番目のおねがい……本気出させて。」

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