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徹はあの夢が気になりずっと考えていた。

徹は彩が好きだ。前はあやふやだった、ラブかライクかしっかりしていなかったこの感情の答えを、あの夢が導き出した。徹は彩を愛している。今すぐにでも彩の元へ行って、この感情を噛み締めたいと思っていた。だが、幾度となく行こうとしたが、彩に言われたことが徹の行動に制限をかけた。

徹にとって今、彩に会いに行くのは、一人でグループを潰すことより、小さな組織ひとつ潰すことより嫌だった。いや、正直怖かった。
彩に触れられなくなるかもしれないから。





「……おい、神庭崎 徹…っ!」

呼ばれてその方を見れば、そこには宵千がいた。怒りで雰囲気をキツくして徹に近づいていく。

「お前、彩に何した…!」

「?……彩に?」

宵千に聞かれても、徹は逆にそれを聞きたかった。なにがどうなって、彩との関係がこうなってしまったのか。

しかし、いま、残念なことは、宵千と徹の思っていることが違うということだ。宵千は徹が彩にてを出したことを怒っているのに、徹はその事ではなく、なぜ彩との関係に距離ができたのか、ということだ。食い違っているのだから、忍耐のない宵千がキレないわけがない。

「……そのスカした態度が、」

宵千は言いかけてやめた。徹がわざととぼけているのだと思ったのだろう。しかし今話したいのはそういうのじゃない、なんとか耐えて話を続ける。

「彩に、…好きだって、言ったんだろ……」


そう言った瞬間、徹が目を見開いた。何も言わなかったが、その顔には明らかな動揺が浮き出ていた。

徹は確かに彩に“好きだ”と言った。しかしそれは夢の中の話で、現実の宵千が知るよしもない。なんで知っているのか。

徹は、もしかしてと、考える。

もし、あれが夢じゃなかったら。そういえば、あんなに鮮明な夢を見たのは初めてで、いくら徹でも立ったまま寝れるわけない。それになぜ玄関に立っていたのか。
そして、なぜ彩が徹の家にいたのか。その答えは、徹の家の玄関に依頼書がおちていたことから、恐らく彩がイリアに頼まれたかなんかして届けに来てくれたのだろう。徹が彩に弱いことを知ってのイリア行動だろう。

つまり、あれは夢じゃない。
ということはあの場には彩がいて、徹が触れた彩は本物だったのだ。現実だったのだ。夢だと思ってつき走った結果、現実の彩に抱きついて告白をしたわけで。

そして、徹は思い出した。


「……外仕事だった」






――彩は貧民窟にいた。いつもの外仕事、つまりお墓作りをしていたのだった。

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