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それは3日前のこと、徹がある疑問を抱えながら事務課の彩の元へ訪れたときのことだった。


「彩」

「と、徹…」

彩の顔が明らかにひきつる。徹の疑問とはこれだ。なぜ彩に嫌な顔をされるのか、嫌われるようなことをした覚えはない。

「俺仕事しないといけないから。忙しいんだ」

そう言って徹の元からすぐ離れたいとそわそわしていた。人気のない受付へ戻ろうとした彩の腕をつかむ。

「彩」

「っ、と、徹、離し…」

「なんか俺のこと避けてない?」

彩は目を開き徹を見る。徹は久しぶりに彩の瞳を見た気がした。しかしすぐに逸らされて物寂しさを感じる。

「別に、」

「………」

「…………」

彩の言葉を最後に沈黙が続く。何かを言おうと口の中で詰まらせている。

「………」

「……………あのさ、俺、……」

漸く聞こえた声。視線を泳がせて彩は口を動かす。

「?」

「徹に、迷惑かけてる…みたいだから……あまり関わらないように、する。気づかなくて、ごめん」

彩は困ったような笑顔を浮かべた。

彩がなぜそんな事を言うのか、何の迷惑をかけられたのか、必死に考えたが答えは見つからない。

踵を返した彩が離れていく。

徹はただ受け入れるしかなかった。引き止めることもできたがなぜか妙に怖くて動けなかった。






「はぁっ…」

マリーが一つ大きなため息をついた。

「隣でため息つくな、うぜぇ」

「だって……罪悪感が…」

「は?なんで?」

いつもみたく煩くないマリーに少しは心配する。絶望しきったように事務課の受付でうなだれていた。

「だから、あたしが彩に言っちゃったことを彩は、徹に迷惑かけられてるんじゃなくて自分が迷惑かけてる、って思って徹と関わらないようにしてるからよ」

「いいことじゃねぇか」

その言葉にマリーはクワッと表情を怒りに変えデスクを叩いた。

「はぁ゛!?」

「今のうち漬け込んで奪うって考えないのかよ」

「あぁバカ!そんなんだから彩はあんたに見向きもしてくれないのよっ!バカ!」

「なんだお前」

「それはこっちの台詞ですけど」

そしてイリアは再び絶望の表情をして宵千に言い聞かせるように言った。

「彩の気持ちが優先でしょ」

「………」

「よくわからないからって黙んないで」

宵千の本心に的確な突っ込みを入れたマリーは何度目か分からないため息をついた。

「あんただって薄々気づいてるんでしょ?彩だって徹が好きだって」

宵千は眉を寄せて力なく言った。

「さぁな」

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あきゅろす。
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