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ゲートを抜けすぐの所に組織【46】の建物が建っている。それは【ill will】とは比べ物にならないくらいみすぼらしいと言うか廃れてると言うか……。申し訳ないが組織として仕事が出来ているのか心配になる。



「こ、こんにちは。【ill will】事務課より派遣された今生 彩です。よろしくお願いしますっ!」

「8階へエレベーターでどうぞー」

【46】内に入り受付で上からの手紙を見せれば俺の自己紹介は完全無視でエレベーターを指さされる。

「露影がお待ちです」

「?」

露影 彰(つゆかげ あきら)――まだ発展が著しい【46】街では珍しいLv.壹(いち)。ここの幹部でもある。
疑問なのがただLv.貮(に)の事務課が派遣で来ただけなのにわざわざ呼び出すのか。

「ぶわっ」

考えながら歩いていると誰かにぶつかった。

「大丈夫?」

「す、すみません!」

見上げなければ顔を伺えないほど身長が高い。俺が少々小さめなのだが。耳にかかるぐらいの黒い髪に濃い黒い瞳は今どき珍しくて目を惹いた。

「あれ?キミは【ill will】の子みたいだね」

「はい。派遣で3日間事務課でお世話になります、今生 彩です」

「ふーん、そうなんだ、よろしくね。俺は八重 葎(やえ むぐら)、葎でいいよ」

握手をすると思いきや、葎さんの手は俺の頬に向かいつまみ始めた。

「いふぁいです」

「あ、ごめんね。つい気持ちよさそうだったから」

「それは俺がぷにぷにのへにょへにょって言いたいんですか!?」

「んーー、たぶん」

「酷いですよ!」

「あははー」

廊下に響く葎さんの笑い声に自然と緊張が和らいだ。

「彩ちゃんは【46】の建物の中だからって気抜きすぎだよ、襲われちゃうぞ!」

「え…」

「あはは!その顔最高」

葎さんのキャラがいまいち掴めないというかちゃん呼びはやめてもらいたい…。

「彩ちゃんいいね!気に入ったよ」

「はぁ…ありがとうございます」

「リアクション薄い。俺に気に入られて嬉しい?」

「普通に嬉しいですよ!はい!嬉しいです!」

「今度はわざとらしす――、っあ!俺行かないと!暇あったら事務課に遊びに行くね。じゃあまたねー」

葎さんはあっというまに消えていった。頬を離し際に最後の一撃といわんばかりにつねられて地味に痛い。








彩と別れた葎は一人笑う。

「彩ちゃーん…大事な大事な俺の駒。ちょっと痛いけど、我慢してね?」

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