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徹はひねくれてはいない。だから自分に正直だ。

「彩、おはよう」

昨日イリアに言われた事は徹にとって答えだった。イリアは徹に自覚して自重してほしかった。が、徹は彩と初めて会話した時点で彩は恋愛対象に入っていたのだろう。いや、恐らく一目惚れの部類だっただろが本人は気がついていない。もうすでに自重できるものではない。

イリアは徹が彩と接触することで徹を妬む奴らに彩が狙われ、それを守る為に事前に抑制するだなんて毎回やられては【ill will】は回転が悪くなる。

そのためにわざわざ首を突っ込んであけたのだが。徹は自分に正直なのだ。自重するどころか、とりあえず恋愛感情の好き嫌いを別にして、徹は彩と居たいと思いはじめていた。

「あっ!徹…、この前のことなんだけど…」

「?」

「パニックでよく覚えてないんだけど、助けてくれたんだよな?ありがとう」

「どういたしまして。彩大丈夫?つーか迷惑かけてごめん」

「ううん。徹こそ、大丈夫だった?」

「ん」

自分のために心配をしてくれる彩に徹は優越感を感じる。自然と上がる口角。

「それじゃ」

まだここに来て5分も経っていない。足早に去ろうとする徹に拍子抜けしてしまう。

「え?それだけ?」

「あぁ。怪我してなくてよかった。それに彩と話したかっただけだから。これから仕事なんだよ」

「そ、そう…」


徹が事務課を後にする。嬉しそうな、満たされたような表情をして。

「あーあ…なに徹のあの顔…」

「!?」

途端後ろに現れたのはマリーだ。そして宵千もタイミングよく現れる。思わず驚いてしまう。宵千は明らかに不機嫌そうな顔をして徹が出ていった事務課入り口睨みながら口を開く。

「うざいむかつく。彩に近づくな、笑いかけんな」

「徹のあの笑顔、あんな顔させられるの彩だけよ。徹にってのはムカつくけど、さすがあたしの彩。あたしも笑顔にしてッ!」

「なんですかそれ…徹はいつもあんな感じじゃないですか?」

彩がマリーに言われた一言。その言い方は彩が徹にとって特別、のような感じだ。

「それは彩の前だからそんな感じにしかならないじゃない。いつもは鋭くてギスギスしてんのよ」

「疲れてるのか?」

「彩の頭の変換能力凄い…ッ!」

「ただの関係とは思えない。アイツは彩と同じ考えじゃないぞ」

「同じ考え?なにそれ?」

「食欲の目じゃないから気をつけて」

続けてマリーに言われ、眉をかしげる。

「食欲の目って、どんな目ですか……?」

と少し呆れを含んで返せば押し黙る。

「?」

「…だって、教えたら彩はそっちに行っちゃうかもしんないから。無駄にイケメンな面に流されちゃうじゃない…」

意味のわからないことを次々と並べられ彩の頭でしっかりと理解できたのはわずかだった。

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あきゅろす。
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