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「ちょっと徹、なんであそこ潰したの」

怒りに眉をひそめるイリア。

「まだ使いようがあったのよ、数も多くて場数もそれなりに踏んでいたから使いやすかったのに」

「だからごめんって」

「はぁ…あなた脳みそまで筋肉馬鹿だから言ってもわからないわよね」

軽いノリで返す徹にイリアのプレッシャーは効かないと諦めのため息をついた。

「その筋肉馬鹿にタイミング重視の仕事押し付けんなよ。しかもさっき終わったばっかなのに、次の渡すか普通」

ヒラヒラとファイルに入った書類をちらつかせる。

彩と【ill will】前で別れた後、難なく仕事をこなし、その帰りに爆弾を仕掛けたグループを徹はさっき片付けた依頼のように難なく潰してきた。

潰した理由は徹自身よくわからなかった。彩は仕掛けた奴らに見られた。徹といたってだけで狙われるのは目に見えていた、だから潰した。いつもならそういったちょっかいは無視している。

だがなぜそこまでして彩を守りたいと思ったのか。彩と出会ってまだ日も浅い。ここまで徹の中に情を沸かせた人は彩が一番だろう。


「あぁ、単独行動とったから暇なのかと思って、依頼たくさん受けたわよ。休みは暫くないんじゃないかしら?」

ふっといつもの嫌味ったらしい笑顔を浮かべる。

「相変わらずたち悪いな」

「そう?」

徹が持っている書類の束の他に3つデスクに放り出されそれを取った。ぱらぱらと中身を見るがこれまためんどくさい、力押しじゃ解決しなさそうな依頼ばかりだ。

「そんなに彩が大事?」

珍しく目を見開く徹はイリアを見る。その単語に驚いたのだ。

「大事?」

「あなたが女以外に接触を好むの宵千以来じゃない?」

イリアはあえて"大事"というのに補足をつけなかった。わざわざ徹自身気づいていないことに手を出してあげたのは徹に自覚させ自重させるためだ。それから先を手取り足取り教えてあげる優しさは持ち合わせていない。

「別に……」

「出会って間もないのに行動で愛を語るなんてちょっとやり過ぎなんじゃない?それに…」

「愛?何?」

「あたしは別にいいけど……彩は男よ?」

イリアの言葉が徹を整理していく。今日の朝、あのとき、彩を爆弾の奴らから守らないとと必死になった理由が、それを実行した行動力は、彩に消えてほしくないと思ったからだ。

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あきゅろす。
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