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コンコンとなる扉に徹は気がつかなかったみたいで寝室から反応がない。仕方ないので勝手に出て良いか悩んだが玄関から近い彩が出るほうがいいだろうと扉に手をかける。
「はーい」
「………宅急便です……」
扉の先に居たのは宅急便の帽子を深く被った男が小包を抱え立っていた。目線も合わず声も低く暗い雰囲気しか伺えず少し不安感を煽るものだった。
「……どうぞ…」
彩は差し出された小包を受け取る。
配達の男の口角が上がるのが見えたそのとき、彩の背後でダンッと足音が聞こえ彩の身体は後ろへ引っ張られる。
彩の手から荷物が宙へ浮き、男の舌打ちがそこへ嫌に響く。
引っ張られた細い身体は、引っ張った徹自身によってそのまま抱き込まれる。徹は彩の前に壁になるように来て、荷物と男を足蹴にした。徹の脚力が驚異的なのは、荷物と男が玄関を軽々と飛び廊下の壁に鈍い音を立ててぶつかった事からして明らかだった。
玄関扉がゆっくりと閉まりだしていく。それに合わせて徹は彩を何かから守ろうと彩を抱き抱えたまま床へ出来るだけ伏せる。
それは僅か2秒もないことだった。
扉が閉まりきるより早く、彩は今までに感じたことのないドでかい音と、体の芯まで響く衝撃を感じた。咄嗟に目を固く閉じる。
「ッ!!?」
声に鳴らない声が喉で鳴り、突風に乗った熱を肌で感じる。一瞬で過ぎたそれを異様に長く感じてしまう。
さっきの爆音が嘘だったかの様に静寂に包まれる玄関が、目を開いて状況確認をしようだなんて彩の頭には微塵も浮かばなかった。
「彩、彩。大丈夫?」
そんな中の徹の声。それを合図に衝動的に目を開く。
「………」
「彩?」
彩の目に入ったのは所々焼けて黒くなった玄関。混乱する頭で考えたって答えは出るわけがなく、放心状態で周りを見渡す。
「おい、彩」
少し強めの徹の声に彩は漸く徹と視線を合わす。
「大丈夫?」
「……あ、う…うん」
「ごめん、彩。よくあるんだ、爆弾とかこういうの。油断してた」
彩はただ徹と目を合わせるだけでリアクションが何もない。心配になり身体を軽く揺さぶれば、彩が呟く。
「……でっかい音するしびりびりするし真っ黒だし耳痛いし爆弾って……あ、ぁ」
「彩ッ!!?」
ふっと彩の体から力が抜け、支えられていた徹の腕に全体重がかかる。
「気絶…した?」
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