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次の非番の日、彩は徹の部屋の模様替えを手伝うため徹の家を訪れた。【ill will】街で最も有名な高層マンションに入り最上階へのエレベーターへ乗る。彩の安月給では到底手の届かない高級マンションに思わずため息が出た。
インターホンを押し暫くしたら徹が出てきて、中へ入るよう促される。
「お邪魔しまーす」
「どうぞ」
「って、わっ!段ボール?」
玄関を入った矢先、廊下に山積みにされた段ボールが道を狭めている。
「倒れないとは思うけど気をつけて」
「う、うん…引越ししたばっかりなの?」
「ん。出すの面倒くさくて」
徹に着いていった先はスッキリとしたリビング。テレビやソファなどがあり、生活味の欠ける雰囲気だった。
「わぁー、ひろっ!」
「そうか?」
彩はキョロキョロと部屋を見渡す。リビングとキッチンなどを手当たり次第に部屋を覗いていく。
「いいなぁー、俺もいつかこんな部屋に住みてー!ってベッドでかっ!」
一人でハイテンションな彩はそのデカいベッドへダイブしばふばふと跳ねていた。徹はそれを寝室の入り口で眺めていて、ふと思った。
――なんか、新しいオモチャあげたペットみたい
「って、ごめん…テンション上がっちゃって」
徹の視線に気がついたのか彩は素早くベッドから降りて照れくさそうに謝った。その姿でさえ徹にはペットに見えて思わず笑ってしまう。
「いいよ。なんか癒されたから」
「?」
彩を見たから癒されたなんて、彩自身天然なのだから気づくはずもないだろう。
「そろそろ始めてもいい?」
「うん。で、俺は何をすればいい?」
「とりあえずソファを動かしたい」
「わかった!」
リビングに行きふたりでソファをどう動かすか思案する。それを決めていないのが徹らしい。漸く動かし、運び終わった後、廊下に溜まっていたダンボールを片付けることになり、いそいそと作業を始める。徹はダンボールを2、3個抱えて寝室へ行ってしまった。彩は食器を片付ける。
着々と進みあと2つほどで終わるころ、玄関から呼び鈴のチャイムじゃなくノックの音が聞こえた。
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