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上機嫌な徹が事務課を離れ、漸く女性たちの緊張が緩んだころ。
「彩!」
「マリーさん?」
マリーと呼ばれた彩と同じ事務課の先輩女性はカツカツとヒールをかき鳴らしワンレンの金髪を揺らしながら彩に詰め寄った。
「昨日から思ってたんだけど!いつの間に徹なんかと仲良くなったの!?」
「へ?」
「もしかして!?徹の無駄にイケメンな面にキュンときちゃった!?駄目よぉっ彩にはあたしがいるでしょ!ああぁーー!!!好きよ愛してる!」
「マリーさん…俺はあなたと付き合ってませんし徹にキュンとなんかしてません」
呆れ半ばに反論していると直ぐ後ろで彩のよく知る声がした。
「徹?なんで彩がくそ徹のこと知ってんだよ?」
振り替えると彩にかなり近い距離で白木 宵千が不機嫌な表情でいた。
「宵千!」
宵千が事務課に来た、それが彩の名前を呼んだ声で一気に広まり黄色い声が上がる。
「おはよぉ!」
「久しぶり、宵千くん!」
「宵千さん、おはようございます!」
キャーキャーと上がる声に慣れた様子で返す宵千。いつもながらに凄いなと彩は影で苦笑いを浮かべる。
「で、まさかくそ徹なんかと仲良くなったのかよ!?」
「くそなんていわない、口悪…」
「仕方ねぇだろ」
あの温厚な宵千がそんなに嫌うなんて、と彩はふと思う。彩が徹と接した時間は僅かだったが宵千がここまで嫌うような印象は受けなかった。その疑問を率直に問う。
「徹って何者?」
「わっ!その質問はここに勤めて二年目の子が言う台詞じゃないよ!でもそんな彩も好きー」
「まぁ…知らない方がいいんじゃねぇの?」
「神庭崎 徹、彼はあたしと同期で、Lv.零」
「おいマリー無視すんな」
「えっ!?零!?」
「そう。化物と恐れられる存在で慕う奴もいるけど唾を吐く奴もいるね。事務課じゃ大人気!だっていい面してるもん」
「だーーー!とにかく!」
宵千はダンッと机を激しく叩き会話を止めると、脅かすように低い声を出す。
「あいつ自体に抹殺依頼とか来てるぐらいだから、彩は近づくな!仲良くなるな!危ないからな!」
「抹殺!?何それ!?報告書書くの手伝う約束しちゃった!」
「しちゃったって、かーわーいーいー!」
「てかなんで彩がアイツの手伝いしなきゃなんねぇんだよ」
「ねぇえ、彩の!手伝いあたしもしたいなぁー」
ここぞというとき可愛い子ぶるマリーへ舌打ちをかます宵千。
―――あっ、でも徹自体悪い奴じゃないっぽかったから大丈夫か。
なんて考えだしふたりを無視して仕事をしはじめた。
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