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いつの間にか人気の少なくなった事務課。幾つかある受付には彩と徹しか居ない。
「でも弁償はします、させてください」
「しつこいって」
徹が握るペンがID再発行申請用紙の上を走る。受付で椅子に座りながら会話をし書き進めていく。
「だって、せっかく頑張って仕事したのにその見返りが貰えないってなんだか寂しいじゃん」
「そうか?てか今生 彩はLv.いくつ?」
「彩でいいよ。?、貮だけど…」
「あ、俺も徹でいいから。じゃあたぶん弁償は無理だな」
ふっと鼻で笑う軽く蔑んだ仕草も美形の彼には様になっている。
「な、なんでだよ?」
「自慢じゃないが俺は結構いい報酬頂いてるんで。それ5回分は……」
"Lv.貮の彩には到底無理だろうな"とそこまでは口にしなかったが、彩は承知したようだ。
「うっ……」
「ほんといいんだ。別に金に困ってる訳じゃないから。それに人を苦しめるためにこの仕事始めた訳じゃないしさ」
「……」
この世の中、そんな台詞吐く奴がいるのかと驚きに徹を見つめる彩だったが、そんなことお構い無しに書類を書き進める徹。
「じゃあお金じゃなくて、なんか俺にできることするよ!なんかある?」
「んー?ここどっちの番号書けばいい?」
「え?ああ、俺がするから、貸して」
「ん。そーだな……」
トントンと長く細い指が受付の机を鳴らす。あと上に出すだけの書類に間違いが無いか目を通す。
「よし!終わった。明日には出来てるから、いつでも受け取りに来てくれよ。あと俺にして欲しいこと考えといて」
「わかった。考えとく。じゃあな」
「うん、また明日」
ふわりと微笑んだ美形の徹が事務課を後にした。
書類を持ち立ち上がって振り返ったとき、事務課の先輩たちみんなが顔を赤くしてこちらを凝視していることに気がついた。
「え、な、なんですか?」
「あの神庭崎さんが…」
「笑顔……」
「まさか」
「?」
その勢いに?マークを浮かべるしかない彩。
美形でスタイルが良く報酬がいい神庭崎 徹がモテないわけがない。あまり笑顔を出さない無表情の彼が、別れ際に微笑んだのだ。卒倒するしか他ないだろう。
「「羨ましい!」」
「えっ!?何がですか!?」
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