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「なぁ、やっぱり俺も着いていくよ。【46】はまだ治安悪いし」
「いいよ。徹だって仕事あるんだろ?俺なんかのために予定遅らすことないよ」
「彩が最優先なんだけど」
「はいはい」
徹もなかなか引かないが俺の方がもっと頑固だ。適当にあしらって逃げようとしたのがわかったのか、ため息をついて俺を捕まえた。
「じゃあ約束、絶対な。一人で出歩かない。騙されない。着いていかない、な?」
「うん」
「あそこまだLv.惨が多いから。その高級な制服着ていったら身ぐるみ剥がされて身体売られるぞ。相手が子供でもな。約束、絶対守れよ」
「ふーん…わかった」
「はぁ…本当にわかってんのか。なぁ、寂しいよ。3日間も誰がかまってくれんの?」
ため息を混じりにぼそぼそ呟き抱きついてくる徹。
「彩ちゃん、なぁなぁー」
徹の甘えてくるコレに弱い俺。これ以上【46】に行きたくない気持ちを増やさないために徹の口を手で押さえる。多少驚いているが俺の言葉を忠犬の様に待つ。
「俺も……、い、行きたくなくなるから……っ!」
徹の顔を見ようと上を向けば自然と上目遣いになってしまうという悲しい事実。自然とあう視線。徹の目がシている最中のときのようでたじろいでしまうが、がっちり押さえられて逃げれない。
「……襲っていいってこと?」
「っ!?違う!」
なんとか徹を押し退かして扉に手をかける。
「エロばか!」
「愛してるよ、彩」
「うっ、」
いつもより少し低めの声で囁かれ、自分の顔が一気に熱くなっていくのが分かった。恥ずかしさに顔を背ければ、徹に顔の輪郭を撫でられて徹の方を向かされ、触れるだけのキスをする。
「いってらっしゃい。早く帰ってこいよ」
唇が触れるんじゃないかってぐらいの距離。まだ顔が熱いのが引かない。
「……いってきます」
「おはよー」
【ill will】街と【46】街を隔てるゲートの前に着けば金髪が目立つ宵千がこっちに大きく手を振ってくる。
「おはよう。宵千が時間通りなんて珍しい」
「まぁね。だって久しぶりに彩とお仕事だからな」
金色の長めの髪にブロックを入れている。笑ったときフワッと揺れるそれが綺麗で見惚れてしまう。髪だけじゃなく宵千は徹に負けないくらい顔立ちがよくて、宵千が事務課の俺のとこに遊びに来るたび女の黄色い声が凄い。
宵千と徹は同じ執行部だ。彼らは依頼を受ければ何でもする。組織の仕事は可愛く言えば探偵、過剰に言えば殺し屋。
「【46】かぁー初めてだな…」
「そーなの?………事務のやつに【46】はいろいろ辛いと思うぞ。まだちゃんと取り締まれてないからなー【46】さんは…」
「たぶん大丈夫。徹からアドバイスもらったし」
「は?あのクソから?」
名前を口にしただけで機嫌を悪くしてしまうぐらい宵千は徹が嫌いらしい。理由は教えてくれないけど、俺が思うにコンプレックスだろ。組織でいつも2位で徹に負けているから。みんなもそれだって言ってる。正直めんどくさい。
「うん。一人で出歩かない、騙されない、着いていかない、って」
「大丈夫だって!俺が護衛するんだし、そこら辺のやつは俺の足元にも及ばないだろ」
「だろうね」
笑った宵千に手を引かれ【46】へのゲート受付に向かった。
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