10 【side露影 彰】 彩を俺とくーたんで【ROLL】へ連れていって、神庭崎 徹に会わせて、彩が泣いて。 そして誰が仕向けたか分からない集団に囲まれる。 残り少なくなった屑共。 不意をつかれ、抜かれた予防線。 捕まれた彩の腕。 刺される俺。 彩を庇うくーたん。 悲しむ彩の表情。 崩れ落ちる俺に合わせて、彩めがけてナイフが振り降ろされる。 俺が見た未来はこれだった。なんて酷い。 じゃあ彩を【ROLL】に連れていかなければいいじゃないか。 そう思い彩が目が覚めてから引き止めるため惨事を黙っていたが、そのときに見た未来は、結局、彩が神庭崎 徹のことを知り単身【ROLL】へ行ってしまい、挙句殺される、だった。 それならどうすればいい?悩んだ結果が、白木 宵千だ。 白木 宵千の能力と言っていい特殊なアレはそもそも彩のために造られたと言っても過言ではない。 しかもその能力のせいか白木 宵千は瞬間的な危険から本能で彩を守ることができる。 だから、白木 宵千が彩を守り、くーたんを、俺が。 俺がその場に居ても恐らくみんなを守れもせずに殺されるだろう。だから別に行動をすることに決めた。 全力で走り【ROLL】の裏口から入り飛び込んだ中庭。 縮こまる彩と疲労が伺えるくーたん、そして敵残り3人。 そのうちの2人がやけくそにくーたんへ襲いかかり押していた。それに気を取られたくーたんは背後から近づく屑ひとりに気づけていなかった。 まさに、屑が彩の腕を掴んだ瞬間、彩とそいつの間に俺が入り込めた。 本当はここにいるのはくーたんだった。そして屑に左胸を刺されるのもくーたんだった。 俺の胸にナイフが刺さるのとくーたんが相手してたふたりをなぎ倒すのはほぼ同じだった。 「……、っ、ぐっ…、っ」 「あ、きら、?」 俺と目があったくーたん。その声にならない声で呼ばれる。それは動揺と悲しみと驚き。くーたんのことならなんでもわかるからそれで確かなはずだ。 「白木、よいち……あほぉ」 数メートル先の入り口に揺らぐ身体を踏ん張り支える白木 宵千が視界の端に映った。こんなときまでビジョンを見たのか。 「なんで、俺より、遅いのぉ?」 くーたんが早いか、俺に刺さったナイフの持ち主が早いか、差は歴然だった。 くーたんは地をあり得ないほど陥没させ踏み込み、回し蹴りを屑に食らわせた。ドゴッと鈍く重い音が響き、屑は叩きのめされた。 「露か、げ、さん……?」 震える彩の声。 ゴポッと口から大量の真っ赤な血が溢れる。脚の力が入らず地面に沈んでしまった。 「あきら……あきらっ!」 くーたんの珍しく焦った声。久しぶりに聞けた。 「みんな……無事、じゃん………」 騒がしくなる辺り。 しばらくしてもどれだけ時間が過ぎたかわからない。 目が霞む。 薄くなっていく意識の中、中庭にカツカツと鳴り響くヒールの音が聞こえた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |