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【side other】


「どう?俺のこと憎んでる?」

「………彩を狙ったのはお前か?八重」

「そうだよ、漸く徹に恋人が出来たって聞いて心が弾んだよ!」

八重 葎は場に似合わない表情を浮かべ神庭崎 徹に近づいた。両の手を広げ、筋肉を緩める。完全な無防備を演技でもなく、トラップでもなく、本望とそれを行う。

「………そうか……」

神庭崎 徹の次の行動を今か今かと期待しワクワクした目で見つめる。

「……わかった」

「え?」

八重 葎は頭の中で、神庭崎 徹が動けば次の瞬間に自分は生命は徹によって断たれ痙攣する、なってほしいと考えていた。
しかしそれは妄想となる。


八重 葎の目の前の神庭崎 徹は踵を返し、背を向けたのだ。


「徹……ねぇ?徹っ?」


去ろうとする腕を怒りを交え爪を立てて握った。


「なんで、なにもしないの?ねぇ、俺が憎いでしょ!?」

「……憎い。彩を傷つけたことはキレさすには充分だった。けど、八重、お前は殺さない。【ROLL】を機能させられなくできればそれで彩に危害がいくことなくなる」

爪を肉に食い込ませ血が滲む指が自然と緩んでいく。

「てめぇに触れたくない」

間抜け面の様に口を半開きにして暫くフリーズしたようだった八重 葎は言葉を発した。


「あは、ははは……なにそれ……全然面白くないよ、徹」


八重 葎は頭を右手で擦る。痛みに悩むような仕草。

しかしそれは3秒と見れなかった。


「なんて」

「……」

「あー本当に焦ってるように見えた?演技上手いでしょ」

歳に合わない舌をペロリと唇の隙間から出す仕草をする。

「でも素直に行きすぎて全然面白くない。徹がここで俺を殺さないのも、死以外の罰を与えることも、徹の行動全てが予想できた。……なんていうか徹と彩ちゃんの馬鹿みたいなラブストーリーも、徹の行動も、俺の考えた通りに進むシナリオも。面白くない」

ああ、と過剰な仕草で手を広げ幸福そうな表情を浮かべる。

「ちなみに俺のシナリオのラストは今から36分後に彩ちゃんのために徹が、俺を殺す」

「!?」


「あー楽しいけど、つまんないなぁ」

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あきゅろす。
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