8
【side other】
「どう?俺のこと憎んでる?」
「………彩を狙ったのはお前か?八重」
「そうだよ、漸く徹に恋人が出来たって聞いて心が弾んだよ!」
八重 葎は場に似合わない表情を浮かべ神庭崎 徹に近づいた。両の手を広げ、筋肉を緩める。完全な無防備を演技でもなく、トラップでもなく、本望とそれを行う。
「………そうか……」
神庭崎 徹の次の行動を今か今かと期待しワクワクした目で見つめる。
「……わかった」
「え?」
八重 葎は頭の中で、神庭崎 徹が動けば次の瞬間に自分は生命は徹によって断たれ痙攣する、なってほしいと考えていた。
しかしそれは妄想となる。
八重 葎の目の前の神庭崎 徹は踵を返し、背を向けたのだ。
「徹……ねぇ?徹っ?」
去ろうとする腕を怒りを交え爪を立てて握った。
「なんで、なにもしないの?ねぇ、俺が憎いでしょ!?」
「……憎い。彩を傷つけたことはキレさすには充分だった。けど、八重、お前は殺さない。【ROLL】を機能させられなくできればそれで彩に危害がいくことなくなる」
爪を肉に食い込ませ血が滲む指が自然と緩んでいく。
「てめぇに触れたくない」
間抜け面の様に口を半開きにして暫くフリーズしたようだった八重 葎は言葉を発した。
「あは、ははは……なにそれ……全然面白くないよ、徹」
八重 葎は頭を右手で擦る。痛みに悩むような仕草。
しかしそれは3秒と見れなかった。
「なんて」
「……」
「あー本当に焦ってるように見えた?演技上手いでしょ」
歳に合わない舌をペロリと唇の隙間から出す仕草をする。
「でも素直に行きすぎて全然面白くない。徹がここで俺を殺さないのも、死以外の罰を与えることも、徹の行動全てが予想できた。……なんていうか徹と彩ちゃんの馬鹿みたいなラブストーリーも、徹の行動も、俺の考えた通りに進むシナリオも。面白くない」
ああ、と過剰な仕草で手を広げ幸福そうな表情を浮かべる。
「ちなみに俺のシナリオのラストは今から36分後に彩ちゃんのために徹が、俺を殺す」
「!?」
「あー楽しいけど、つまんないなぁ」
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!