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【side:other】
同じ刻、【ROLL】内の講堂で男が一人。
「あははははっ!」
黒い髪のそいつは腹を抱えて笑い出す。なかなか止まない笑いが部屋中に響くが男は関係無しに笑い続ける。
漸く止まった笑いも少し余韻を残して、黒い目を細めた。
「馬鹿じゃないの?」
その言葉が向けられたのは何なのか誰なのかわかりはしないが、しかしそれは嫌悪を含みそんなものに触れたくないと醸し出していた。
腰に携えていたナイフをケースから抜き、大きく振り上げた。
机に大きく広げた手めがけて何の手加減無しに降り下ろした。貫通こそないがナイフを抜かれたそこは、血が出て赤色の肉や骨が垣間見れた。
――塞がるな。
懇願するように呟く。再びナイフを差し入れた。斜めに進入していく刃に逆らうことなく一枚皮のように剥けていく皮膚。
男の身体はその行為に泣き叫ぶ痛みを感じるのではなく、ゾクゾクと快感に似たものを感じていた。
――ねぇ徹。帰っておいでよ。
赤い塊がビチャリと音をたてて地面に落ちた。
――そして俺を、
自分で抉り作った傷口を男は見つめ、瞬きをする。
降りた瞼を間を置くこと無く持ち上げる、その刹那的時間で何があったのか瞬きをする前に見た傷はあったことが嘘のように皮膚が覆っていた。男はそれを見て慣れた絶望を感じる。
――俺を、
ズンッ――っ、ドォ、ンッ
男は講堂の両開き扉を鎖で縛りこちらから開くか大砲でも使わない限り開かないようにしていたのにも関わらず、それは意図も簡単に吹き飛び音を立てて崩れ外からの空気が入り込む。
「八重……」
扉を開いた男・徹へ八重と呼ばれた男は微笑む。
「待ってたよ、徹」
八重は持っていたナイフを投げ捨てた。
「ねぇ、俺を、殺して?」
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