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【ROLL】エントランスホール――
開け放たれた入り口を潜った先、広がった光景に目を覆いたくなった。
幾人が倒れ、血を溢れさせている。気絶していたり、ただ呻いていたり……原型を留めていなかったり。
"徹が組織【ROLL】を潰すために暴れてる"
その言葉を思い出す。この惨く目を覆いたくなる光景を徹が作ったのか。
"徹は彩の為に"
俺がとった行動が導いた結果を改めて実感した。
鉄の臭いが立ち込めて頭が痛く、見慣れない光景に目が眩むのを隣にいたくーたんが支えてくれる。くーたんには助けてもらってばっかりだ。
「……だいじょうぶ?」
聞いてくるくーたんの様子は変わらず、慣れているようだ。頷くとくーたんは俺の手を引いて先を進む。
「こっち」
「く、くーたん解るの?」
「騒がしい」
何も聞こえないけどくーたんは指差した方をぐいぐい進み、コンクリートで囲まれた廊下をしばらく歩く。途中いろんなのを見て跨ぐことになった。走って逃げたくなる状況をなんとか耐えて、漸く開けた中庭に出た。
硝子張りの天窓から太陽の光が差し込み、中庭を照らしていた。ここにも徹が通ったであろう痕跡が幾つもあり、草木を血で濡らしていた。
「……」
くーたんが腕を強く掴み、俺の前に出た。紺色の髪が視界を狭めて良く見えなかったが、中庭の中心にある樹を挟んで向かい側にいたあれは、確かに、
「徹……っ」
血まみれの徹だった。
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