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Wind of Adventure
Turn.1:似て非なるモノ
月光が僅かに入り込む中、ミカエルが部屋を飛び出して廊下に出た。顔のあちこちに汚れが目立つが、かなりの敵を相手にしたとは思えないほど体力は残っていた。
「……ったく、無駄な手間かけさせやがって」

廊下を一直線に駆け巡る。どこに行くか既に分かっているかのように、迷いもなく軋む床を容赦なく踏みつける。今しがた、奇妙な気配が広まったのを感じ取った。しかも、そこにクリスの気配も混じっているのだから、急がねばならないと直感したのだった。

「こんな時に限って、あのガキはどこに行きやがったんだ……」
廊下の角を音もなく素早く曲がった。クリスの気配はこの区間の先にある部屋からしていた。とにかく急ごうとして、足元なんて全く気にしなかった。
ところが、ミカエルは片足を踏み込んだときだった。今までの硬い床の感触とは違う、柔らかいものが足裏を伝って全身に走った。と同時に「うぎゃっ」という声が聞こえた。疑問を抱いたので、思わずミカエルは左足をその場所とは少し逸れた場所に着地させる。その時バランスが崩れて軽く肩が壁に当たったが、痛みはほとんどなく表情に変化はない。そして、壁に寄り掛かりながら目線を床に落とした。
「……そんなとこにいやがったか」
そこには、未だに床にできた穴に足を取られて苦戦しているフェイがいたのである。おそらく、ミカエルが踏んだのはおそらくフェイの左足であると思われる。
「ちょっと―!何平気で踏んづけてんの!!」
「………何やってんだ、貴様」
呆れたようにミカエルがフェイを見下す。足が抜けない状況で、必死になっていたフェイは額が汗が滲んでいる。
「見て分かんない?!足がはまって、抜けないんだってば!」
「……アホか」
フェイは救いの手を求めているが、ミカエルは顔をしかめて腕を組み、静観しているだけだった。それに腹が立ったのかフェイはお構い無しに声を張り上げる。
「ぼーっと見てないで、助けてほしいんですけど!!」
「……自分でどうにか出来るだろうが」
「それが出来てたら、苦戦しませんけど?」

睨みつけるようにミカエルを見るが、全く相手は動じない。反応があるまで睨んでみるが、ミカエルは反対側を向いてしまった。その態度に、ますます苛立ちが募る。それを知らずか、さらなる言葉が出る。
「貴様の相手をしてる余裕はねえ。自力で出ろ」
ミカエルの強い言葉に、フェイは怒り心頭となった。遂には状況すら考えず、大声を張り上げるまでになった。
「だーかーらー。変なことしたらここが炎上しちゃうんだってば!」

強調された炎上という言葉に、ミカエルの肩が僅かに揺れた。しかし振り返ることはなく、ため息の後にわずかな言葉を残すだけであった。

「集中しろ。燃やしたいものに意識を集め、雑念は消せ」

そう言い残した後、すぐさま廊下の向こう側へ駆けだして行く。コンパスがあるだけあり、あっという間に姿が消えた。その場には、再びフェイが残るだけであった。
「……燃やしたいものに、意識を集中する……か」

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あきゅろす。
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