Wind of Adventure 4 「ところで兄ちゃんは、余所から来たのか?」 「……まあ、よそ者って言えばそうかもな」 あらかたの料理が腹の中に消え、すべての皿が眼前で片付けられた頃、マスターが話し掛けてきた。にこやかな、優しい人だと思われる。 「やっぱりな。その、腰に提げてたモノを見ればわかるさ」 今は傍らに置いているが、彼の目はさっきまで提げていた剣に止まった。その見慣れているような口調に思わず、クリスの額から冷や汗が吹き出す。クリスはふと周りの客を見てみる。 よく見れば他の客も、似たり寄ったりである。槍のような長いものが布か何かで包んであったり、長刀らしきものや弓が立て掛けてあったりと様々。酒場とはいえ、何か争いでも起こったら一瞬で戦場と化すのは目に見えるが、そこまでのバカ騒ぎは起こることなんて滅多にないだろう。それでも、ちょっぴり物騒に見える。 ……ただし、今のご時世にしたら武器を持つ厳つい男が酒場でのんきに飯を食っているなんて光景は当然だが。 「大体ここに来る客はみんな余所から来た旅人ばかりなんだ。まあ、後は、長年の勘ってやつ」 「成る程ね」 「仕方ないさ、こんなご時世だし。アンタも気を付けたほうがいいよ」 マスターにとっては当たり前となっている言葉かもしれないがその、ささやかな忠告を真に受けずにはいない。……正直、嫌な感じがするからだ。 「……親切なご忠告に感謝しとくよ、マスターさん」 クリスは、食事代をカウンターに粗く置いた後、急ぐように店を後にした。 ドアを開けた先に見える町の中は普通と変わらない。 しかし体中の神経が一斉に騒ぎ立てるのを、クリスは無視することができなかった。 どうやら、予感が的中しそうだ。 …BackNext… [戻る] |