Wind of Adventure 2-3 アスフォード氏は絵よりも若く、より優しい雰囲気の人だった。杖をついていたが、長さが身の丈以上もあってそれを支えにしているように見えた。 「お主たちが、フェイの荷物を取り戻してくれたんじゃと、聞いておるよ」 「フェイ……?」 クリスが首を傾げると、アスフォード氏は笑った。笑い方は、普通の老人と変わらない。 「今、お前さんの前にいるではないか!この子じゃよフェイは」 アスフォード氏はクリスよりちょっと背が低い、ここまで案内してくれた青年を指した。 「何じゃ、フェイ……自己紹介せんかったのか」 「だって師匠、知らない人に素性を明かすなって……言ってませんでした?」 「……とはいえ、世話なったのだろう?その人に名を言っても平気じゃ。……おぉ、忘れとった」 青年もといフェイとの話から何かを思い出したかのように、二人の方へ向き直った。 「お二人のお名前をまだ、聞いてませんでしたな。良ければ、名乗っていただけないかな」 優しさ溢れるその目に、嘘はない。悪い人ではないようだ。 「あ、オレはクリス。クリス・バスターです。で、隣にいるのが……」 クリスが畏まって言うと、ミカエルが横目で訴えてきた。 ――人の名前まで、名乗る必要ないだろ!! そこにはいつになく、怒りの色が見えた。 「……ミカエルだ」 ぶっきらぼうないつもの話し方。言葉自体には怒りの表情が見えなかった。 「クリス君に、ミカエル君か」 クリスは変な気分になりながらも、目線をミカエルからアスフォード氏に渋々戻した。 「……あ、周りの人は気にしないでね。皆、魔導師以外は見たことないから、珍しいだけなんだ……」 「あ、いや……そこを気にしてたワケじゃねーから」 クリスの様子を見てか、フェイがそんなことを言ったので、慌てて付け加えた。 「さて、三人に話さねばならぬことがある。他の者には聞き耳を立てぬよう、修行に専念しろと促してあるから、大丈夫だろう」 アスフォード氏は、ゆっくりと立ち上がり、ドアに向かった後に鍵をしっかり閉め、何者も入れないようにした。直後に緊迫した空気が漂い始めたことに、クリスだけでなくミカエル、そしてフェイも感づいた。 「どうやら運命の歯車が、動き出したようじゃ」 …BackNext… [戻る] |