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Wind of Adventure
1-7
人で賑わう大通りを一歩はずれた商店の脇道は、日の光が奥まで侵入できないためかひどく影を落としていた。猫が気ままに腰を据えて生ゴミをあさり、自由な時間を過ごしていく。

そこに、ひとりの人物が駆け抜けていく。一歩ごとに鋼鉄の無機質な音が通りにこだまし、荒い息遣いさえも表の通りに聞こえそうなくらいだった。のんきにしていた猫も彼が通りすぎたせいか、男から奏でられる無機質な音に畏怖したのか逃げるように立ち去っていく。

「そっちの様子はどうだ。見つかったか?」
「いや……何も」
同じ甲冑を着た人物が、正面に見えてきた。ゆっくりと速度を落とし止まった後に中性的な声を発すると、相手からやや太めの声質で返事が返ってくる。

「全く……こんな状況が長引けば、誰だって怪しむに決まっているのに……」
「これでは、隊長に報告できないぞ」

諦めの色がにじむ中性的声質の兵士に対し、太めの声質の兵士が口調を強めて言った。兜で表情が伺いにくいが、お互いに焦燥する様子が声色から聞き取れる。

「とにかく、何か怪しいものでも見つけたら隊長に報告しなきゃな」
「我々には、これ以上の動きは出来ない……下にいる以上は」

太めの声質の兵士が、落ち込んだように言う。中性的声質の兵士も、ため息を交えてこう言う。

「面倒だ。上に行けば、もう少し幅広く動けるのにな………」
「我々では無理だ。あの場に立てるのは、武に秀でたものでないと」

建物の隙間から見える、城壁と先鋭的なシルエットを見つめる。その中にいるであろう、自分たちには入ることもままならない上位の騎士たちの姿を思い浮かべて。
「とにかく、私は向こう側を調べてくる。君は、あっちのほうを」
「了解しました。またあとでお会いしましょう」


二人の兵士は、互いに来た時と逆の方向へと走り出した。

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