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∇∇∇
「全く…こんな物を配り歩くなんて君はどういう神経してるんだい?」
「うっ、うるさい……」
真っ赤な顔で俯く彼の手の上の皿からスコーンをとり、かじる。
「下手したら人によっては命に関わることなんだぞっ」
「うっ………………」
茶化したように言うと、彼は何か反論しようと顔を上げた。
が…すぐに何も言わず視線を落とす。
ちらっと見えた目元には多分涙が溜まっていた。
……そういえば(一応自分では)自信作だって言ってたね。
だからという訳ではないけど、最後の一口を口の中で味わいながら、新しいスコーンに手を伸ばす。
「……仕方ないからまた次こんなもん作ったら最初に俺のとこに持ってくるんだぞ」
「え…………?」
そう言ってやると彼は急に顔を跳ね上げ、思わず皿を取り落としそうになった。
なんとかバランスをとるも、案の定山からいくつかのスコーンが崩れ落ちる。
それらは地面に届く前に全て俺がキャッチした。
……食べ物は粗末にしちゃダメだからね。
「…あ、アル……?」
「何たって俺はHEROだからね。仕方がないことに皆の安全と平和を守る義務があるのさっ☆」
半信半疑と言った表情の彼に、HERO的スマイルで言ってやる。
「……………………」
「こんな危険な物食べて平気なのは、俺と…ピーターくらいだろう?」
ま、俺はピーターと違って食えるってだけで、美味しいとは思わないけどね、っと付け足す。
「…………か、……」
肩を震わせながら、彼が何か呟く。
「………お前なんか……」
「ん……?」
何がくるかわかってるけど、あえて首を傾げ見つめる。
「お前なんかっ!大ッ嫌いだ、ばかぁーーー!」
「むぐっ………!?」
予想通りの言葉と共にスコーンの皿も顔面に飛んで来た。
…………これは予想外だったよ。
避けきれずまともに命中したスコーン皿を外すと、彼はちょうど向きを変えて走り去る直前だった。
「美味しくはないけど…なんか癖になる味なんだぞ」
という訳でまた持ってきてくれよ。
口に飛び込んできたスコーンを飲み込みながら言うと、振り返りもせず走り去りながら「食いながらしゃべるなっ!!」って言葉だけが飛んできた。
その顔が赤いのはなんのせいかな?とか、考えつつ気がつけば手に持ってたスコーンを口に運ぶ。
「あぁ…やっぱりまずいね」
まずいけど…誰かさんのせいですっかり中毒だよ。
こんなのでも君が作ったってだけで、ハンバーガーより美味しく感じるんだから。
中毒症状/fin
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