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∇∇∇
そこから少し離れた壁の陰。
そんな二人の様子を眺める姿があった。
「……わかります。わかりますとも、アルフレッドさん!!あれですね。好きな子には…ってやつですねっ!」
黒髪で小柄な体格のその人物は、片手で持った黄色と焦げ茶の物体を落とさないようしながらも器用にデジカメを操っている。
「これで新しい米英ネタが増えました。さっそくうちに帰ったら原稿に取り掛からなくてはっ!……それとアーサーさんの真っ赤なお顔……バッチリ撮らせて頂きましたっ!あぁ、相変わらずなんて萌えるお方でしょう…っ!!」
テンション高く小声で喋りながら、使い切ったメモリーを整理していく。
「それにしても流石アルフレッドさん……!あの暗黒物質を口にして平然としているなんて……!!やはり愛ゆえですかね!?……他の方は少し食べただけで、こんなだと言うのに……」
デジカメを操作して先程録画した動画ファイルを起動する。
程なくして、焦ったような男の声が聞こえてきた。
『――お、おいっ、フェリシアーノ!どうした!?いったい何があった!?』
『ヴェ……る、ルート…?』
『あ、あぁ!俺だ!一体何があったんだっ!?』
『…………パ、パスタ…』
『しっかりしろっ!パスタが…パスタがどうしたんだっ!!』
『…最期に……もう、一度だけ…美味しいパスタが、食べ…た……か……』
『―――フェリシアーーーノォーー!!』
デジカメがピッ、という音と共に再生が終わったことを知らせる。
彼はそのまま操作を続行し次のファイルを起動する。
再び画面が先程とは違う映像を映し、弱々しい声を流し始める。
『――ふっ……お兄さんとしたことが…全く、迂闊だったよ』
『なに、あるか……?』
『まさかあいつが涙目+上目遣いで「食って…くれないのか……?」なんて上級技を繰り出してくるとは……ね』
『正真正銘の…馬鹿が居るある……』
『そういうお前だって…食ってるじゃないか』
『我は無理矢理口に詰め込まれたある……』
『『……………、ガクッ』』
映像終了の音声と共に画面から倒れ伏した若干二名の姿が消えた。
真っ暗な画面から、無言で片手に持った物体に視線を移す。
「私、口にしないでホントに良かった……」
暫く見つめた後、彼はそう呟いた。
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