『グリーングリーン』
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「ねぇ、『グリーングリーン』って歌知ってる?」
透き通るような青空の下、海の見える丘の上で彼女はそう言った。
「えっ、何?」
いきなりのことで思わず僕は聞き返した。
薄い色調のワンピースを纏った彼女はいつもの真っ白な病室で見る彼女よりよっぽど元気そうだ。
彼女が「外に出たい!」なんて言い出した時はまたかと思ったが、まさかこんな遠くまで来ることになろうとは……
でも今は満足してる。
だってこんなに楽しそうに笑う彼女を見たのは久しぶりだったから。
「だから、『グリーングリーン』 知ってるって聞いてるんだけど!」
膨れっ面でそう叫ぶ。
彼女はいつもわがままで傲慢だ。
いつでも彼女はお姫様。そして僕は彼女に従う従僕だ。
それは物心付いた頃から変わらない僕と彼女の関係。
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