俺のモノにならないのなら俺はお前と死ぬつもり【スクアーロ視点】
――――ベルの部屋。
俺は2週間前ベルに、こう言われた。
『スクアーロ。…俺、お前のコト好きなんだ。俺と、付き合ってくんね?…………返事…、来週にはくれると嬉しいかも』、と。
だが1週間経っても俺は答えがまとまらず、もう少し待ってくれ、と言った。
それで今日に至る。
でもそれでも俺は自分の気持ちがよく解らない。
その事を…ちゃんとベルに言わないといけない、と俺は思って、今日、此処に来た。
「なぁ…ベル………」
…返事がない。
「おい、ベル…」
体ごとベルに向け、俺は先程より大きな声で呼んだ。
「…聞いてんのかぁ?」
ふ、と我に返ったように、ベルが俺を見て口を開いた。
「…何?王子に言ってる?」
「お前しかいねーだろぉ」
当たり前の事を言う。
…そんな言葉、何時でも言えるだろぉ!!
俺は、俺自身にそう言った。
「…考え事してた」
一瞬だけベルがベルに見えない程、冷たい視線を感じた。これは……気のせい?
「…………どんな?」
嗚呼、
きっと俺の事だなぁ…。
「お前のコト」
ほらなぁ…。
「…返事、………だろぉ?」
「うん」
そう。分かってて此処に来た。
言わなきゃいけねぇ事がある。
…だが、答えがまとまんねぇ、なんて言ったらコイツはどんな顔をする?
怒るのか?落ち込むのか?それとも…………、いや。ソレはない。
ふと思ったことは、恐ろしい事だった。
だがもし、もし…、コイツが、
先程感じた視線が、ベルじゃない誰かだとしたら、有り得る事かもしれない。
………ああ!!もう俺はどうしちまったんだぁ!!さっきから意味のわかんねぇ事ばかり頭に浮かぶ。
返事…しねぇといけねぇんだよぉ……。
堂々としやがれぇ、S・スクアーロよぉ!!
それから沈黙が続いた。
時計の秒針が動く音が、俺の胸を痛める。
「ねぇ」
先に話を切り出したのはベル。
「……、」
どうすればいい?どうすれば……
焦って言葉が出ない俺。
「俺じゃ、ダメ?」
「…っ…………、」
いきなり出てきた言葉は、俺の気持ちを聞き出す言葉で、喉が詰まる様な苦しさを感じた。
「知ってるよ、俺。お前とボスのコト。…そういう関係なんでしょ?」
「……。」
そうだ。俺にはXANXUSがいる。
俺の誇り。俺の全て。誰よりも俺を知ってる人間(ヤツ)。
そして、俺が何処までも着いて行くと決めた人間…。
…つまり、ベルのあの日の返事はNO、になるという事か。
「ベル、俺はなぁ、」
俺の気持ち、やっと伝えられる…。
「聞きたくない」
だがそれはベルの否定の言葉で打ち消された。
もう一度言葉の続きを言おうと試みた。
「…、俺は、」
ガッ!!
突然真横に吹っ飛んだ。
何が起きたのか理解するのに数秒かかった。
口から流れる血と、頬の痛みでようやく、
自分はベルに殴られたのだと気付く。
「…っつぅ、……ってめぇ!!ふざけんのも体外にしろぉ!!」
何故俺が殴られねぇといけねぇんだぁ…。
ベルの考えてる事がさっぱり解らない。
返事を言え、
やっぱり言うな、
豹変したような顔…、
今日のベルは何だかおかしい。
「誰が…………何時、ふざけたって?」
冷たかった部屋が、ベルの一言で張り詰めたような緊張感に変わった。
「ふざけてる?俺が?どうして?」
「俺を殴っただろぉ!!それがふざけてるって言ってんだよぉ!!!」
「…俺の本気な気持ち……これでも伝わらない?」
もう訳が解らない。
俺に…どうしろって言うんだぁ……コイツはよぉ。
「……。」
返す言葉なんて見当たらなかった。というよりも俺は言葉を発する事をしようとしなかった。
「そんなに…ボスが好き?………俺より、ボスがいい?」
ボスは俺の…誇りだぁ……。
「………―――――――、あぁ。」
じゃあ…ベルは?
この胸の痛みは…何だ?
「俺、お前と死ぬよ」
突然発せられた言葉は、理解不能。
「……は?」
死ぬ…?この俺が?
考えた途端、背筋がゾクゾクとしだした。
この俺が『何故死に怯える?』
今まで俺は死に対する恐怖など、少しもなかった。
なのに俺は………どうしちまったんだぁ?
「そんな怯えないでよ。俺…お前無しじゃ生きられないの。わかる?」
嗚呼、解るさ。そんな気持ちなんてよぉ。
「ベル…………っ、」
だって俺は…俺はなぁ、
「大丈夫。なるべく痛くないようにするから…」
何かを伝えようと、思った、その時…
ザシュッ!!
鋭い音が響く。脳裏に焼き付くように。
意識が段々と薄れていく。
「スクアーロ……だぁいすき、」
ベルの言葉は其処までしか聞こえなかった。
俺は…死んだのかぁ?
「今行くからね、スクアーロ――――――」
嗚呼…伝えられなかった。
俺の本当の気持ち。
気付かなかった、
俺の本当の気持ち。
俺ってホント…馬鹿だぁ……――――――。
(俺はベルが好きだった。否、好き“だった”じゃねぇ、好き、なんだぁ…。もし生まれ変われるならば、俺はどんなベルだって愛してみせるぜぇ…)
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