7 元帥に教えてもらった、新入りくんの部屋へ行ってみた。 本人はいなくて、もぬけの殻だったが。 (なんて簡素な部屋なんだ…) 持ってきた荷物が、とても少ないらしい。 その部屋には、窓・ベッド、それと… 「…花…?」 砂時計のような置物の中に浮いているのは、花だろうか。 見た事が有る気もするが、無い気もする。 その白い花は、神々しく咲き誇り、掌を広げたようだ。 その前に座り込んで見惚れていると、この部屋の持ち主の声が聞こえてきた。 「香奈、そこで何をしているんだ?」 「この花は何だろうなぁって思ってて」 「蓮。 日本人なら知っていて当然だろ」 「そんな事言われたって、………」 記憶が無いんだから仕方が無いじゃない!と言おうとしたが、今の会話で一つ疑問に思った。 何で、私の名前を知っているの? それは元帥に聞いたのかもしれない。 でも、何で日本人だと分かるの? 私自身も元帥も、誰も分からないのに、どうして知ってるの? 少年のほうを振り返って聞く。 「どうして…私を知ってるの? 私は、自分が東洋人の香奈としか知らないんだけど…」 「!?…記憶喪失なのか? 昔の事は何も覚えてない?」 「知り合いだった? ん〜…」 思い出そうとした瞬間、頭が割れるように痛くなってうずくまる。 あ、れ―――? 「大丈夫か!?」 駆け寄ってくれたが、すぐに痛みは引いた。 …あれ? 「思い出した、昔の事!! そう、あなたは神田ユウ!! …でも、私が外国へ引っ越してからの記憶はまだ思い出せないみたい…何でだろ? ま、いっか!」 「…大丈夫か?」 私のテンションの上下について来れないらしい。 だって、記憶が元に戻ってきて嬉しいんだもん! 「そう簡単に思い出せるものなんか?」 「まぁ良いじゃん、細かい事は! ユウのお陰かもよ!」 「…ファーストネームで呼ぶな」 「えー?いーじゃんー ファーストキスの仲なんだしー」 「ば…っ、お前っ、誰かに聞かれたらどうするんだ!」 「本当の事だもん」 「…お前、キスの意味が未だ分からないのか…?」 ぶぅ、と膨れてみせる。 「今はそれっくらい分かりますよー!」 「(いや、これは分かってない。 絶対に分かってない!)」 ほら、 少し 笑ってくれた。 でも、 今では 彼よりも私の方が 笑顔を 無くしてしまったの かもしれない… ←BookTopへ戻る [*前へ] |