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そんな私を、室長が優しく立たせてくれ、ある空き部屋に連れていってくれた。
リナリーは残り、室長は出て行く。

「…香奈?
落ち着いた?」

「…ごめんね。
取り乱したりして…」

つぃ、とリナリーが何処からか差し出した服を受け取り、着替え始める。

「…あのね、香奈。
私がこのイノセンスの適合者だと分かって、黒の教団に無理矢理連れて来られた時…、…ここは私にとって地獄だったの。」

近くの椅子に座って膝を抱えたリナリーが黒い靴に触れる。

「そんな所から逃げようと何度もあがいたけど、逃げられるわけがなかった…。
そんな時に、兄さんが来てくれたの。
それも、室長になって。
それからは、ここが私の家族…私の世界なのよ」

こんな小さい子でも、そんな事を考えているんだ…。

「みんな優しい人だし、きっと香奈も教団が気に入ると思うわ!」

笑顔で見つめ返される。

あぁ、記憶が無いだけでこんなに暗くなっている私を励まそうとしているんだろうか。

「…そうだね。
ここが、これから私のホームなんだよね」





この時、

私はまだ

10歳だった。



一瞬の光が

見えた気がしたのに…。



私の居場所を

見つけることなんて

不可能だと

思い込んでいたのかも

しれない…。



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あきゅろす。
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