5
「オレがこれから言う事の意味、少年は知ってるだろうけど、助けるどころか話す事すら出来ないよな?」
アレンは今…あの球体の中?
「隼人お兄ちゃんに何をしたのっ!!」
「隼人には、ティーズの苗床になってもらってたのさ。
伯爵からは、隼人の監視も任されてる。
戦力にならなくなったら、いつでも殺していいってさ」
「そんな、酷い…!」
「さぁ、ティーズ、来い」
しかし、いくらティキが声をかけても何も出てこない。
お兄ちゃんは苦しむばかり…だったが、突然不気味な声で笑い出した。
「くくく…はははははっ!
よっぽど僕は信じてもらえてなかったようで。
…くくっ」
「お兄ちゃん!?」
「…おい、ティーズをどうした?」
「あぁ、これの事?
抜け目のない奴だなぁ、いつの間に忍ばせてたの?
こんなのに命を吸われて堪るかっての」
お兄ちゃんが出した手の中から、黒い砂が零れた。
ティキの周りを囲む蝶の残骸のようだ…。
「ったく、お前はどんな奴だよ。
覚醒するならするで、もっと早くすれば良かったのに」
「それはティキだって。
ほら、憂さ晴らしにその少年殺すんじゃなかったの?」
「そーだった、そーだった。
行かないと」
お兄ちゃんとティキの会話は終わり、ティキは黒い球体の中へと入って行った。
「…お兄…ちゃん…?」
「奈穂…今ね、頭の中にノアの記憶が戻って来ているんだ…」
「…!?」
「エクソシスト…最も憎むべき存在…」
下を向いていたお兄ちゃんが顔を上げると顔が黒くなっていて、前髪を掻き上げると額にはくっきりと聖痕が現れていた。
「…僕は…『変化』を司るノア…。
奈穂はもう敵としてしか見れない。
容赦しないから、覚悟してね?」
「…お兄ちゃん…!!」
←BookTopへ戻る
[*前へ]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!