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「…お母様…お父様…?」

倉の牢屋の結界は香奈が前以て外していたらしく、奈穂が瓦礫の一角から出て来た。
もうこの子には何の疑いも無いのだから、これからは普通に暮らせるんだ…。
10年前に殺されないで、本当に良かった…。

「お兄ちゃん…?
皆…どう、したの…?」

「…僕が殺したんだよ」

両親と香奈を、という意味で言ったのだが、村人全員と取ってしまったらしい。
香奈が握っていた家宝・蒼剣で斬りつけてきたのだ。

「何で…何で…。
お兄ちゃんは平気でこんな風に人を殺せるの!?」

「違う…違うんだ…」

「どう違うっていうの!?」

「落ち着こう…」

奈穂の腕を掴んで、動きを封じる。
涙が零れていた事が分かる。

「ごめん…泣かないで…」

その時、僕たちの後ろから霊力が放たれた。
…父の力か?

霊力の気が当てられたのは奈穂で、気を失って僕の腕の中に崩れた。

「父上…?」

「記憶を…封じた…。
人生最後の術が…これとはな…」

「謝る気はありません…。
僕は、ずっとあなたが憎かった。
僕に、自由の無い窮屈な人生を歩ませた、あなたを…」

僕の言葉を最後まで聞いてから、父は本当に申し訳なさそうな顔をして息絶えた。
一方の奈穂は、気を失ったまま。

僕は父の術がすぐに消えるだろうと思い、忘却術をかけ直す。
時期や状況によって、記憶を徐々に取り戻せるように…。



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