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そこまでして隠した愛娘への両親の愛も凄かった。
母親は勉強を教え、一通りの学習を身につけさせた。
父親は、毎日のように通い、遊んでやっていた。
ただ、もう一人の子、香奈には内緒にして。
知れたらヤバイとでも思ったのだろうか、厳重に口封じをされていた。
一方の香奈は、両親から表面上の愛情を受けて悠々と育っていた。
一人孤独にいることも無く、両親と同じ空間の中にいられて、多くの人間の肌の温もりを感じられて。
もちろん可愛かったから可愛がってはいたが…僕は内心腹立たしかった。
この世の中で一人孤独に暮らしている奈穂を見ていると、気楽に暮らしている香奈がとても…。
そんな僕の陰気な考えとは裏腹に、奈穂も香奈もすくすくと健康に育ち、その成長を見守っていて楽しかった。
毎回の食事を運ぶのが、僕の日課。
両親よりも霊力の強い僕が結界を作ったから。
結界の中に入って、一緒に戯れている時こそが、至福の時だった。
奈穂が、とても愛おしかった。
そんなある日、学校帰りの香奈が倉の中に忍び込み、奈穂の存在がバレてしまう。
香奈は双子の姉がいると分かって喜んでいたが、両親の顔からは血の気が引いていた。
香奈の口から親戚に知れてしまう事を心配した両親は、ずっと考えていたある決心をした。
二条院神社を親戚に押し付け、日本から離れる、という事だった。
少し事がオーバーだと思ったが、そこはやはり二条院神社が日本で名の知れた神社だったし。
香奈に知れた次の日には、僕ら5人家族は日本にはいなかった。
どこかの国のとある寂れた村で、少しばかりの宣教活動をして生活を繋いでいた。
そして、奈穂と香奈が生まれて10年目の誕生日。
外では雪がはらはらと散る中…事件は起こった。
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