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気を失ってから初めて目を開く。
ぼーっとしながらも、最初に目に映ったのは…。

「やっほー」

「ラビか…」

「ユウじゃなくて残念だった?」

「…ちょっと。
でも、いなくて当然だし、誰もいないよりは…嬉しかったかも」

「そ?どーも。
そんな惚れちゃうような事言っちゃうと、襲っちゃうよ?」

「クス…病人相手に?
…ねぇ、アレン達は?」

「アレンは香奈よりも少し先に起きてる。
リナリーはまだ寝たきり。
あのミランダって人は、手の傷以外は無傷だから、もう教団に向けて出発した」

「そう…」

上半身を起こす。

「って、まだ無理するなさ!」

「大丈夫だから…」

「…その顔は、大丈夫って顔なんか?」

はっと気付くと、私は目に涙を溜めていた。

「何かあるんなら、オレに話してみるといいさ?」

緊張の糸が切れたように、急に涙が溢れる。
ラビの肩を掴んで、そっと頭をその上に。

「自分が誰だか分からないって、とても不安なの…。
他人の記憶が入って来るなんて…。
何が何だか…もう何も分からないよ…」

「香奈は、香奈さ?」

両手で強く抱きしめられる…。

「それ以外の何ものでも無いさ。
昔の記憶なんか気にしなくていい、これからまた別の記憶を作ってけばいいじゃん?
それでも不安なら、オレが名前を付けてやるよ!」

「ふふ…何よそれ…」

思わず笑みが零れる。

「…やっと笑った。
香奈にはいつまでも笑っていてほしいさ」

「あ…りがと…。
お願いがあるんだけど、もう少し、このままでいてくれる…?
そうしたら、また元のままでいられる…と思うから…」

「どーぞどーぞ」

暫く泣いていたら、少し落ち着いてきた。

「香奈、大丈夫か?」

「…ん、ありがと」

顔を上げるとラビの顔がすぐ近くにあって、ドキッとする。
次第に顔が近づいて来て、キスを求められているのが分かった。

「ちょっと!
キスしても良いとは言って無いっ!!」

「ちぇ〜っ。
どさくさに紛れて出来るかと思ったんだけどなぁ…」

言い終わると…さっ、と頬に唇をあてがわれて…。

「ま、今回はこれっくらいで我慢しとくさぁ。
肩を貸したお礼、かな?
安いもんっしょ。
って、顔真っ赤にして、どうかした?」

「…ラビのせいでしょっ!!」

「まぁまぁ、落ち着けって。
そうだ、リナリーの見舞いに行ってみるか?」

「う、うん」



リナリーの部屋に行ってみたものの、コムイ室長がブックマンに話があるらしく、そこにいたアレン共々部屋を追い出されてしまった。

その間中考えていたが、何でラビからのキスを無理にでも止めなかったんだろう…?
もう、ユウという人がいながら…この浮気者!!

取り敢えず、ユウへの愛情は変わってないし。
そう思って自分で許した自分を、少し笑ってしまった。



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あきゅろす。
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