3
気を失ってから初めて目を開く。
ぼーっとしながらも、最初に目に映ったのは…。
「やっほー」
「ラビか…」
「ユウじゃなくて残念だった?」
「…ちょっと。
でも、いなくて当然だし、誰もいないよりは…嬉しかったかも」
「そ?どーも。
そんな惚れちゃうような事言っちゃうと、襲っちゃうよ?」
「クス…病人相手に?
…ねぇ、アレン達は?」
「アレンは香奈よりも少し先に起きてる。
リナリーはまだ寝たきり。
あのミランダって人は、手の傷以外は無傷だから、もう教団に向けて出発した」
「そう…」
上半身を起こす。
「って、まだ無理するなさ!」
「大丈夫だから…」
「…その顔は、大丈夫って顔なんか?」
はっと気付くと、私は目に涙を溜めていた。
「何かあるんなら、オレに話してみるといいさ?」
緊張の糸が切れたように、急に涙が溢れる。
ラビの肩を掴んで、そっと頭をその上に。
「自分が誰だか分からないって、とても不安なの…。
他人の記憶が入って来るなんて…。
何が何だか…もう何も分からないよ…」
「香奈は、香奈さ?」
両手で強く抱きしめられる…。
「それ以外の何ものでも無いさ。
昔の記憶なんか気にしなくていい、これからまた別の記憶を作ってけばいいじゃん?
それでも不安なら、オレが名前を付けてやるよ!」
「ふふ…何よそれ…」
思わず笑みが零れる。
「…やっと笑った。
香奈にはいつまでも笑っていてほしいさ」
「あ…りがと…。
お願いがあるんだけど、もう少し、このままでいてくれる…?
そうしたら、また元のままでいられる…と思うから…」
「どーぞどーぞ」
暫く泣いていたら、少し落ち着いてきた。
「香奈、大丈夫か?」
「…ん、ありがと」
顔を上げるとラビの顔がすぐ近くにあって、ドキッとする。
次第に顔が近づいて来て、キスを求められているのが分かった。
「ちょっと!
キスしても良いとは言って無いっ!!」
「ちぇ〜っ。
どさくさに紛れて出来るかと思ったんだけどなぁ…」
言い終わると…さっ、と頬に唇をあてがわれて…。
「ま、今回はこれっくらいで我慢しとくさぁ。
肩を貸したお礼、かな?
安いもんっしょ。
って、顔真っ赤にして、どうかした?」
「…ラビのせいでしょっ!!」
「まぁまぁ、落ち着けって。
そうだ、リナリーの見舞いに行ってみるか?」
「う、うん」
リナリーの部屋に行ってみたものの、コムイ室長がブックマンに話があるらしく、そこにいたアレン共々部屋を追い出されてしまった。
その間中考えていたが、何でラビからのキスを無理にでも止めなかったんだろう…?
もう、ユウという人がいながら…この浮気者!!
取り敢えず、ユウへの愛情は変わってないし。
そう思って自分で許した自分を、少し笑ってしまった。
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