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元帥に教えてもらった、新入りくんの部屋へ行ってみた。
本人はいなくて、もぬけの殻だったが。

(なんて簡素な部屋なんだ…)

持ってきた荷物が、とても少ないらしい。
その部屋には、窓・ベッド、それと…

「…花…?」

砂時計のような置物の中に浮いているのは、花だろうか。
見た事が有る気もするが、無い気もする。
その白い花は、神々しく咲き誇り、掌を広げたようだ。
その前に座り込んで見惚れていると、この部屋の持ち主の声が聞こえてきた。

「香奈、そこで何をしているんだ?」

「この花は何だろうなぁって思ってて」

「蓮。
日本人なら知っていて当然だろ」

「そんな事言われたって、………」

記憶が無いんだから仕方が無いじゃない!と言おうとしたが、今の会話で一つ疑問に思った。
何で、私の名前を知っているの?
それは元帥に聞いたのかもしれない。
でも、何で日本人だと分かるの?
私自身も元帥も、誰も分からないのに、どうして知ってるの?

少年のほうを振り返って聞く。

「どうして…私を知ってるの?
私は、自分が東洋人の香奈としか知らないんだけど…」

「!?…記憶喪失なのか?
昔の事は何も覚えてない?」

「知り合いだった?
ん〜…」

思い出そうとした瞬間、頭が割れるように痛くなってうずくまる。

あ、れ―――?

「大丈夫か!?」

駆け寄ってくれたが、すぐに痛みは引いた。

…あれ?

「思い出した、昔の事!!
そう、あなたは神田ユウ!!
…でも、私が外国へ引っ越してからの記憶はまだ思い出せないみたい…何でだろ?
ま、いっか!」

「…大丈夫か?」

私のテンションの上下について来れないらしい。
だって、記憶が元に戻ってきて嬉しいんだもん!

「そう簡単に思い出せるものなんか?」

「まぁ良いじゃん、細かい事は!
ユウのお陰かもよ!」

「…ファーストネームで呼ぶな」

「えー?いーじゃんー
ファーストキスの仲なんだしー」

「ば…っ、お前っ、誰かに聞かれたらどうするんだ!」

「本当の事だもん」

「…お前、キスの意味が未だ分からないのか…?」

ぶぅ、と膨れてみせる。

「今はそれっくらい分かりますよー!」

「(いや、これは分かってない。
絶対に分かってない!)」





ほら、

少し

笑ってくれた。



でも、

今では

彼よりも私の方が

笑顔を

無くしてしまったの

かもしれない…



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