11
「う〜〜…」
暫く走って、誰もいない廊下の真ん中で止まる。
上を向いて、それでも零れそうな涙は、手で拭き取る。
ちょっとの差で追い付いて来たのは、ユウだった。
「香奈!!」
「…殴り合ってんじゃなかったの」
「ムカついたから」
「すーぐ、ユウはそうやって手上げるんだから」
「すまん。
…ほら」
そう言って、私の手を取って歩きだしたユウ。
怒ってないの?
いつまで経ってもラビに対して踏ん切りがつかない私を。
優柔不断な私を。
…逆に、私を怒鳴ったら手を切られるとでも思ってるのかな。
「……頭良くなったのか…?」
「何か言ったか」
「!?な、何でもないっ!!
ところで、どこに向かって歩いてるのかなぁ…」
歩いている方向や道順から、大体の予想は立ってはいるが…。
「科学班」
やっぱり、そうなのねー…。
「お前を呼んでくるように言われたんだよ」
「え、なんでだろ…」
「知らね。
多分、対アクマ武器の事じゃねぇのか?」
「あぁ…蒼剣を預けてるんだっけ。
修理するとか何とかで…」
「オレの六幻はまだだってのに…」
「六幻は大破しちゃってるから〜。
時間が掛かるんだよ」
「蒼剣だって、最初から作り直すとか言ってたぞ」
それ、私聞いてない…。
それから2人は黙ったままで、足音だけが廊下に響いている。
そして、科学班に着いた。
レベル4のアクマによる破損の修理や、ユウのように対アクマ武器の修理等が重なり、科学班は嵐のようだった。
「あのー…」
「あぁ、香奈ちゃんは先に奥の部屋に行っていてくれ!」
「は、はい!」
忙しい人達とは離れた所にぽつんとあるロングチェアに座る。
ユウは横に座った。
「もう帰っても良いよ?
対アクマ武器の説明だけだろうし」
「いや、ここにいる」
「?」
それから数十分して、仕事がちょうどよく切れたコムイさんとリーバー班長が来た。
「香奈ちゃぁ〜ん、もう僕へとへとだよ〜!
この人達が働かせるんだ!」
「何言ってんすか、室長!!」
あはははは…日常的な一幕だな〜。
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