10
「…あぁ、やっぱり似合うさ」
そのまま両手をラビに片手で掴まれたまま、器用にも空いている片手で私の左手首に何かを付けた。
見れば、ビーズを通した三重のチョーカー。
「うん…首にアレが無いせいもあるかな」
「アレ…?」
ハートのネックレスの事…?
ユウが私にくれた、宝物。
それを知ってて…?
「ラビ…」
「オレのカノジョになって?」
「……ラビ…」
「OK、してくれる?」
「………」
そのまま黙っていると、今度は空いてる手で頬をそっと触れられ…、
またしても…。
「…はぁ…香奈…?」
「…ラビ…?
何度こうやっても、私の心はユウに決め…」
「オレにしろよ!
オレに…して、くれよ…」
「ラビ…」
そんな悲しい声を出さないで…。
私の心がいつまで経っても揺れ動いてしまうから…。
私はユウに決めた…んだから…。
「お願い…やめて……」
胸が苦しくて、目尻からは涙が零れ落ちた。
「泣くなよ…香奈…」
すると、その時…。
「……香奈…?」
ノックもせずに、入って来た人。
私達の状況を見て固まった人。
それは、私の心に決めた人。
「オイ…」
「ユ…ウ……」
助けて、心の中ではそう叫んでいるのに、声に出す事が出来ない。
ラビの悲しい声が耳から離れないせいだ。
「てめぇら何やってんだ…」
「ユウには関係ないさ。
香奈はオレが貰うんだ」
「はぁ!?
バカ言ってんじゃねぇぞ」
「マジで言ってんさ。
ユウに香奈を幸せに出来るのか信じられんし」
「それはお前だってどうなんだかな。
香奈はオレのもんなんだよ」
ユウ…微妙に恥ずかしいです…。
「そんなのいつ決めたんだよ。
今の香奈の心はどうなんだか分からねぇじゃん」
「決まってんだろうが。
このバカ兎」
「いつもそうやってすぐ暴言に走る。
ユウはまだまだ子供さね」
「んだと…?
てめ…っ!!」
「何だよ、やるのか?
望むところだ」
そう言ってラビは私から手を離し、ポーズをとる。
「ちょっと!!
何する気!?」
何を言っても聞かない振り。
とうとうユウから手を出し、それを避けたラビが反撃の一撃を決めようとする。
だが、その間に私が入り…、
―――パシッ
「いてぇー…」
「…ラビは勝手過ぎるよ。
私の事もちょっとは考えてよ!!」
「あ…香奈!?」
私を止めようとしたラビだったが、私は構わず部屋を後にした。
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