[携帯モード] [URL送信]




「ふあ〜ぁ……んん〜……」

あくびをして、目を覚ますと、あれから何度目かの朝日。

相変わらず美しい。

「よーし、今日は退院だ!」

やっとの退院。
飽き飽きしていた入院生活から離れられると思うと、小躍りしてしまいそうになる。

すっかり心神共に元気になっていたので、るんるんと病棟から出ていく。
数人の看護婦さんと婦長に手を振り、小さな手荷物を持って。

遠慮していたので、それ以外には誰もいない。

朝食を食べに食堂に行けば、皆に会えるだろう。

「久しぶりだな…楽しみ!」

さっさと荷物を置きに行こうと思い、自室の扉を開け。
何の異変にも気付かずに、そのまま扉を閉め、机に手提げ等を置く。

……すると…、

「…香奈」

後ろから、抱きすくめられた。

呟いたような低い声はよく聞き取れなかった。

「あ、ユウ?
やだなぁ、退院っていってもそんな祝い事じゃないんだから、出迎えはいらないって…」

「…香奈」

今度は少し強く呼ばれ、その声にはっとする。

どうして早く気が付かなかったんだろう。

私を抱きしめている腕の違いとか、このような態度をする事から…、

「香奈…会いたかった…」

…ラビ、だって。

意識したくなかったので、この場のムードにそぐわない明るい声を無理矢理出す。

「もうラビったら、女の子の部屋に勝手に入っちゃダメなんだよ?
それに、今までだって病室で何度か会ってたじゃない〜」

「他に人がいたさ…。
2人きりで会いたかったんだ…」

「ラ…ラビ…」

ダメだ…この雰囲気に気圧される…!

そしてラビの声の色っぽさに赤くなりそう…!

「やめて…よ…ラビ…!!」

「嫌さ!!
やっとこうやって2人になれて、抱きしめられたんだから…!!」

「だから…、ラビは彼氏でも何でもないでしょ!?
もうやめて、って…!!」

「嫌さ!!」

「子供みたいに駄々をこねない!!」

自分の体とラビの腕の中に自分の腕を入れ、それを広げる事でラビの束縛から離れようとする。

そうしながらラビの方を向き、両手で肩を押すが、逆にその手を掴まれてしまう。

「ちょちょ…」

若干ヤバイって。
状況が非常にヤバイって!!

「香奈、マジで好きなんさ…」

そう言ったラビの顔が、次第に近付いて来て…!!



.

[*前へ][次へ#]

9/13ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!