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「ふあ〜ぁ……んん〜……」
あくびをして、目を覚ますと、あれから何度目かの朝日。
相変わらず美しい。
「よーし、今日は退院だ!」
やっとの退院。
飽き飽きしていた入院生活から離れられると思うと、小躍りしてしまいそうになる。
すっかり心神共に元気になっていたので、るんるんと病棟から出ていく。
数人の看護婦さんと婦長に手を振り、小さな手荷物を持って。
遠慮していたので、それ以外には誰もいない。
朝食を食べに食堂に行けば、皆に会えるだろう。
「久しぶりだな…楽しみ!」
さっさと荷物を置きに行こうと思い、自室の扉を開け。
何の異変にも気付かずに、そのまま扉を閉め、机に手提げ等を置く。
……すると…、
「…香奈」
後ろから、抱きすくめられた。
呟いたような低い声はよく聞き取れなかった。
「あ、ユウ?
やだなぁ、退院っていってもそんな祝い事じゃないんだから、出迎えはいらないって…」
「…香奈」
今度は少し強く呼ばれ、その声にはっとする。
どうして早く気が付かなかったんだろう。
私を抱きしめている腕の違いとか、このような態度をする事から…、
「香奈…会いたかった…」
…ラビ、だって。
意識したくなかったので、この場のムードにそぐわない明るい声を無理矢理出す。
「もうラビったら、女の子の部屋に勝手に入っちゃダメなんだよ?
それに、今までだって病室で何度か会ってたじゃない〜」
「他に人がいたさ…。
2人きりで会いたかったんだ…」
「ラ…ラビ…」
ダメだ…この雰囲気に気圧される…!
そしてラビの声の色っぽさに赤くなりそう…!
「やめて…よ…ラビ…!!」
「嫌さ!!
やっとこうやって2人になれて、抱きしめられたんだから…!!」
「だから…、ラビは彼氏でも何でもないでしょ!?
もうやめて、って…!!」
「嫌さ!!」
「子供みたいに駄々をこねない!!」
自分の体とラビの腕の中に自分の腕を入れ、それを広げる事でラビの束縛から離れようとする。
そうしながらラビの方を向き、両手で肩を押すが、逆にその手を掴まれてしまう。
「ちょちょ…」
若干ヤバイって。
状況が非常にヤバイって!!
「香奈、マジで好きなんさ…」
そう言ったラビの顔が、次第に近付いて来て…!!
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