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しきりに私の名前を呼ぶ声が聞こえる―…。
「…だ…い、じょ…。
私…は、大丈夫…だか…ら…」
だから、そんなに悲しい声で呼ばないで…。
私の声が聞こえたらしく、周りの声が明るくなるのがわかる。
「香奈ちゃん?
大丈夫かい?」
そっと目を開けると、目の前に飛び込んできたのは、室長とリナリーの心配そうな顔。
そして、その奥にはさっきの少年。
「ごめんね、いきなり倒れたりして…。
ビックリした…よね?」
一応、謝っておくべきだろう。
突然目の前で倒れてしまったのだから。
「…別に……」
…無表情だな、と思ったが、迷惑をかけた身として失礼かと思い、注意するのはやめた。
「スイマセン、室長。
何かお手伝いする事とかまだありませんか?」
「うん、後はヘブ君の所に行くだけだから。
香奈ちゃんは、ゆっくり休んでてね」
そして、兄妹は少年と共に行ってしまった。
医療班が辺りを歩く雑踏の中、置いて行かれたような気分が、またあの日を思い出させる…。
その時、医療室の扉をノックして誰かが入って来た。
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