1
「……ん………」
「…起きたか」
「………ユウ…?」
目を開けば、目の前には心配そうな顔をした、私の愛しい人。
私は病室にいて、真新しいシーツのひかれたベッドの上で寝ていた。
ユウの目の下には、もしかしてクマがある…?
「…あれ、なんでここにいるんだっけ…」
「…まだ起きるんじゃねぇ」
上半身を起こそうとしたが、ユウに止められてクッションにぼすっと倒れ込む。
「ユウ…」
「…何だ」
「気持ち悪い…」
「んなっ…はあ!?」
「いつものユウと違って、何だか優しい〜!!」
「殴るぞ」
そうそう、そんな感じがいつものユウだよねっ、と言いながら、また起きようともがく。
ユウの抵抗を振りほどいて、壁と背中の間にクッションをいれ、背もたれにする。
「お前、モヤシに刺されてから意識無くしたんだぞ?
半月眠ったままだったんだ」
「は、半月!?
…そんなに経ってたんだ〜…」
私が起きたのに気付いた看護婦さんが、点滴の液を入れ替えたり、ガーゼを交換したりしていた。
「…なぁ、もうノアじゃなくなったのか?」
「うん、もう大丈夫。
もう、ノアに"私"を乗っ取られたりしないようにする」
「……そか…」
「なーにー?
急に襲いだすかとでも思ってた?」
「ちげぇよ。
ただ…、会わなくなって、戻って来たかと思えばずっと寝たまんまで。
ひょっとしたら…とか」
「心配御無用!!
…心配しなくても、もうユウから離れたりしないから」
ずっと一緒だよ?と言いながら、俯いてユウの手をとる。
目線を上げれば、少し照れてそっぽを向いているユウ。
「…本当にごめんね」
「何も気にする事なんてねぇよ。
ただ、お前が側に居ればそれで良い」
「出た、ユウの悪い性格」
クスクス笑いながら、拳をぶつけたり、ユウの拳から逃げたり。
ふと、髪が前よりも重くなった気がした。
看護婦さんに頼んで鏡を持ってきてもらうと、やはり前に鏡で見た時よりも伸びていた。
その変化に、どれほど長い間寝ていたのかと痛感させられた。
「……ごめん」
「もう謝るな、聞き飽きたぞ」
「あははっ…。
じゃ最後に…ごめんね」
「マジで気にするなら、キスで帳消しにしても良いぞ」
「ちょっ、何それ!」
だが、ユウの顔は本気そのもので。
思わず目を閉じて、そっと唇をユウの方へと向けた。
.
[次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!