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「…何してるの?奈穂…」

そう、物置部屋の一角には、香奈の入れられた牢屋があった。

「香奈…こんな所に閉じ込められていたんだ…。
今、助けてあげる」

奈穂の霊力を纏った短刀が一度振られれば、あっという間に格子は切り刻まれ、崩れ落ちた。

「…何してるの?
正気!?」

「は?
せっかく助けてあげたのに、そんな事言われる筋合い無いんだけど」

ドン!と奈穂が香奈に霊力をぶつける。

香奈も負けじと霊力を発揮するが、力が及ばない。

力と力のせめぎ合いが香奈の方へ寄り、結局香奈は吹き飛ばされた。

「はは…はははっ!
見た?
これが私の…力よ!!」

それから奈穂は我を失って村人を襲い始めた。

それが、村人全員がアクマで本能で殺していたという事は、本人は知らない。

また、完全な発動でなくても、短刀のイノセンスの力で殺していた事も。


家も森も何もかもが目茶苦茶になり、その残骸の上に奈穂は立っていた。

高尚で、何もかもを見下ろすような気分で。


だが、視界の中に血まみれで倒れている両親の姿が写り、呆然としていたところを隼人に刺される。

「隼人お兄様!?
…ア…奈穂!!」

今まで気絶していた香奈が奈穂の元に寄るが、もう息をしていなかった…。

「な…んで…嘘…でしょ…起き…てよ…ねぇ…!
……いやああぁぁぁっっっ…!!!」




そう、あの時は悲しかった…。
とても…。

…あれ、私って香奈の立場に居た奈穂だったんだ…?

『そうだ。
気付いたか』

もう、どっちで名乗ったら良いのか…

『どちらでも良い。

ただ、覚えておけ。
今は亡き片割れに力を与えたのも、刀の中から声を出したのも、全て私だ。

そして、あの日からはお前の力も増やした。

…ノアの力が欲しくなったら、いつでも言うが良い。
与えてやる事が可能だ』

…カミサマ、貴方も覚えておいて。
私はもう絶対にノアにはならない。
いい?分かった?


神は返事をする代わりに、世界が真っ暗になった。


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あきゅろす。
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